【企業分析】 ガラパゴス:アッヴィが降りギリアドが賭けたFilgotinib

 

ガラパゴスはベルギーに本拠地を置くバイオベンチャー。

 

CrucellとTibotec(両社ともに現在はジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社。)という2つの製薬会社のジョイントベンチャーとして1999年に設立。2005年にeuronextで新規株式公開。その10年後の2015年にはナスダックで上場。しかし2019年の現在でも承認された薬は1つも無い。

 

 

ガラパゴスが注力している開発領域はリウマチやクローン病、アトピー性皮膚炎といった免疫が関わる病気。特に一番重要なFilgotinibが治験中のリウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎は当たれば巨大な売り上げが見込める。

 

2027年には全世界でリウマチだけで3兆円、潰瘍性大腸炎やクローン病を含めると6兆円以上の市場規模となりそこで主要プレイヤーとなれたら一気に大企業の仲間入りが可能。

既に1年間で約2兆円売れているヒュミラもリウマチの治療薬。

 

その今一番熱い市場に挑もうとしているのがガラパゴスが開発中のFilgotinib。

 

 

ガラパゴスの筆頭株主はFilgotinibを共同開発しているギリアドで約13%の株式を保有している。

 

 

 


企業データ


企業名:Galapagos NV

上場取引所:Nasdaq Euronext

ティッカー:GLPG

創業:1999年

CEO: Onno van de Stolpe

従業員数:702人

本社拠点:ベルギー国メヘレン

 

20年間ひとつも商品となる薬は無い。つまりこの20年間のガラパゴス株は全て投資家の夢と希望を原動力に動いている。

 

 

 


開発パイプライン


開発パイプライン
コードネーム 対象疾患 試験名 開発段階
Filgotinib リウマチ FINCH P3
クローン病 DIVERSITY P3
潰瘍性大腸炎 SELECTION P3
強直性脊椎炎 TORTUGA P2
乾癬性関節炎 EQUATOR P2
非感染性ぶどう膜炎 N/A P2
GLPG1972 変形性関節症 ROCCELLA P2
MOR106 アトピー性皮膚炎 IGUANA P2
GLPG1690 特発性肺線維症 ISABELA P3
全身性強皮症 NOVESA P2
GLPG1205 特発性肺線維症 PINTA P2

 

 

 


ガラパゴスの命運を握るFilgotinib


 

選択的JAK1阻害薬Filgotinib。

 

この薬がガラパゴスの命運を握っている。phaseⅢ段階に入っているのがリウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病。他にも強直性脊椎炎などJAK1阻害という作用機序で改善が見込まれる疾患の治験を行っている。

 

 

実はこの薬はライバル薬を開発中のアッヴィが途中までパートナー企業として一緒に共同開発していた。

 

しかしアッヴィが独自に開発していたABT-494(upadacitinib) の方が将来有望だということで2015年でガラパゴスとの共同開発を打ち切った経緯がある。

 

共同開発だと売上に対するロイヤリティなどをガラパゴスに払わないといけないし権利関係でも複雑となるので権利をガラパゴスに返却した。

 

その時にガラパゴスの先行きが不安になり株価が下落した。

 

しかしすぐナイトが登場。

 

その名はギリアドサイエンシズ

 

C 型肝炎治療薬で大成功を収めたギリアドだったがその次に続く薬が社内で開発できず株主からパイプラインを太くしろとの圧力を経営陣は受けていた。そんな時にギリアドが見つけたのがガラパゴスのFilgotinib。

 

この時のFilgotinibに対するギリアドの投資額は3億ドルの前払い現金+ガラパゴスの15%株と引き換えに4億2500万ドルの現金。更に13.5億ドルの潜在的なマイルストーン支払いと、北米における売上の20%ロイヤルティと欧州での共同販売(利益折半)という好条件。

 

ギリアドはファーマセットを買収したときも大金を支払ったが結果として大成功を収めている。そのギリアドが成功を見込んだのがFilgotinib

 

 

 


JAK1とはそもそも何なのか?


JAK阻害薬は細胞膜の内側で作用する。ヒュミラやアクテムラは細胞膜外側に付いている受容体にサイトカインが結合しないように邪魔をする。

 

  1. インターロイキン6などの炎症性サイトカインが受容体に結合する。
  2. 受容体の細胞膜側についているJAKがそれぞれにリン酸をくっ付け合う。
  3. リン酸化された部分を目印にSTATがやってきて2量体を形成する。
  4. その2量体がDNAに作用して炎症性サイトカインが放出され①にループ

 

 

 

ヤヌスキナーゼは炎症シグナルを伝えるキナーゼでJAK阻害薬はそこを邪魔して炎症反応が起きないようにする。

 

ヤヌスキナーゼは4種類(JAK1 JAK2 JAK3 TyK2)存在しその2つの組み合わせで生理的シグナルが異なる。リウマチの炎症などはJAK1が主に担っている。

 

 

 

ヤヌスキナーゼの受容体ペアリング

受容体名 サイトカイン JAKペアリング 生理機能
共通γ鎖を有する受容体 IL-2,IL4,IL-7,IL-9,IL-15,IL-21 JAK1,JAK3 炎症,T細胞、CD8+、NK細胞の分化、B細胞クラススイッチ
I型IFN受容体 IFN-α IFN-α JAK1,TyK2 炎症、抗ウイルス、抗腫瘍
IL-10受容体ファミリー IL-10,IL-20,IL-22 JAK1,TyK2 炎症、抗ウイルス、抗腫瘍
gp130を共有する受容体 IL-6,IL-11,IL27,G-CSF JAk1,JAK2,Tyk2 炎症、ナイーブT細胞分化、T細胞ホメオスタシス
Ⅱ型IFN受容体 IFN-γ JAk1,JAK2 炎症、抗ウイルス
p40共有IL-12ファミリー IL-12,IL23 JAK2,Tyk2 炎症、Th17の分化
ホルモン受容体 EPO,TPO,GH,PRH JAk2,JAK2 赤血球、血小板、骨髄造血
IL-3受容体ファミリー IL-3,IL-5 JAk2,JAK2 赤血球、血小板、骨髄造血

 

↑の表を見るとJAK2を邪魔すると血液系のトラブルが起こるとわかる。他にもNK細胞の分化や抗ウイルス作用にも影響する。なのでウイルスが原因で起こる帯状疱疹はJAK阻害薬の特徴的な副作用の一つ。

 

FilgotinibのFINCH 2試験

 

無作為化二重盲検プラセボ対照第 III 相試験

対象:生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARDs)で十分な効果が得られなかった中等度から重度の活動性関節リウマチを有する成人患者

 

24週間
投与群 プラセボ フィルゴチニブ
100 mg
フィルゴチニブ
200 mg
ACR20(%) 34.5(%) 54.9(%) 69.4(%)
ACR50(%) 18.9(%) 35.3(%) 45.6(%)
ACR70(%) 8.1(%) 20.3(%) 32.0(%)
DAS28(CRP)≦3.2(%) 20.9(%) 37.9(%) 48.3(%)
DAS28(CRP)<2.6(%) 12.2(%) 26.1(%) 30.6(%)

 

 

これまで2剤、3剤と抗リウマチ薬を使っても症状を抑えられなかった患者さんを対象としたシビアな試験で7割に有効性が認められている。

 

 

前世代JAK阻害薬であるオルミエント(イーライリリー)やゼルヤンツ(ファイザー)と比べ統計学的に有意にリウマチ症状を減少させている。しかしアッヴィのupadacitinibは効果面でほぼ互角と強敵。

 

 

Filgotinibの副作用

ヒュミラなどの生物学的製剤はfilgotinibよりも感染症リスクや帯状疱疹リスクが高い。

 

最も深刻な血栓リスクが少なく感染症の副作用も少ない。

 

Filgotinibの副作用の少なさはJAK1選択性の高さによるもの。

 

 


独り言


 

丿貫よりもはるかに薬に詳しいギリアドサイエンシズが見込んだFilgotinib。ガラパゴスの時価総額は日本円で7000億円程度とまだ中型株。Filgotinibが承認されたら時価総額1兆円を超えると思う。リスクリターンを考えたら悪い賭けではない。

 

Filgotinibの最終試験がもうすぐ発表される。

 

臨床試験のリスクは2つ。

 

①そもそも治療効果が目標に届かなかった場合

②効果はあったが深刻な副作用が出た場合。

 

発表される臨床試験は計二本で合計参加人数が約3000人とこれまでの試験より数倍に増えている。

 

なのでこれまで出ないなかった副作用が出てくる可能性はある。0.1%以下の致命的な副作用は数百例の治験では検出されにくい。

 

しかしそれはどんな新薬開発でも同じこと。そこを恐れていては一生betできない。

 

 


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