カテゴリー: 薬

【大塚】 サムスカ:水利尿という作用機序のメリットとデメリット

サムスカ
一般名 トルバプタン
製薬会社 大塚
日本販売年 2010年
効能・効果
錠7.5mg 錠15mg 錠30mg 顆粒1%
①心不全における体液貯留
②肝硬変における体液貯留
③常染色体優性多発性のう胞腎
用法・用量(15歳以上)
①心不全における体液貯留 15mgを 1 日 1 回
②肝硬変における体液貯留 7.5mgを 1 日 1回
③常染色体優性多発性のう胞腎

開始量: 1 日60mgを 2 回(朝45mg、夕方15mg)

忍容性がある場合1 週間以上間隔を空けて増量

忍容性有: 1 日120mgまで増量可能

薬理作用 バソプレシンV2-受容体拮抗
併用禁忌
効果発現時間 2時間
効果持続時間 12時間
代謝酵素 CYP3A4
併用注意 イトラコナゾール、クラリスロマイシン等、グレープフルーツジュース CYP3A4を阻害しサムスカの血漿中濃度が上昇
リファンピシン 等、セントジョーンズワート含有食品 CYP3A4を誘導しサムスカの血漿中濃度が低下
ジゴキシン P糖蛋白を阻害しジゴキシンの血漿中濃度が上昇
シクロスポリン 等 P糖蛋白を阻害することにより、サムスカの排出が抑制され血中濃度が上昇
副作用
副作用 心不全 肝硬変 多発性のう胞腎
  1. 口渇:30.5%
  2. BUN上昇:13.1%
  3. 尿酸上昇:9.4%
  • 口渇:31.2%
  • 頻尿:16.9%
  1. 口渇:70.4%
  2. 頻尿:52.3%
  3. 多尿:38.1%
薬価(2019年5月時点)
サムスカ錠7.5mg 1277.3円
サムスカ錠15mg 1943.1円
サムスカ錠30mg 2953.5円
サムスカ顆粒1% 1898.3円
2018年売上 759億円

 

大塚製薬から発売されている利尿剤サムスカ。

 

それまで使われていた利尿剤では効果がイマイチだった患者さんに対して著効するので利尿剤としては異例の高額な薬価が認められた。ループ利尿薬ラシックス錠10mgの薬価が9.1円に対してサムスカ錠7.5mgは1277.3円で140倍もする。

 

それまでの利尿剤は「溶質利尿」といって尿中の電解質を増やし浸透圧を高めて水分の再吸収を阻害するのだが必要な電解質も排出してしまい電解質のバランスが壊れてしまう。

 

それに対してサムスカは「水利尿」で電解質に影響を与えないで水分を排出できる。煩わしい電解質変化にサムスカは関わらない。腎集合管で水の再吸収を促進するバソプレシンV2受容体をサムスカが邪魔して水を排出するというシンプルな作用機序。

 

ループ系は集合管に来る前のヘンレ上行脚でNa+、K+、2Cl-共輸送体を阻害、サイアザイド系は遠位尿細管でNa+,Cl-再吸収を阻害するので電解質に影響を与えるがサムスカは関係無し。

 

 

しかし水だけを排泄すると体内は相対的にNa+濃度が上昇する。副作用出現率1位の口渇は体内から自由水が減ったことによりNa+濃度が上昇したことを視床下部が察知して喉の渇きが発生する。

喉の渇きだけだったらそんなに心配ないのだが他に深刻な副作用がサムスカにはある。

 

Na+濃度が上昇したまま放置すると「橋中心髄鞘崩壊症」という副作用が起こるリスクが高まる。痙攣や意識障害といった症状が起きる重篤な脳疾患でナトリウム濃度が急激に上昇する事がリスクファクターらしく輸液療法でも起こることがある。

なのでこの橋中心髄鞘崩壊症が起きないように血中Na濃度をモニタリングする事が必須であり投与初日から血液検査が義務付けられている。サムスカを初回服用する時は入院中が原則。服用したことないのに院外処方出して調剤薬局でいきなりサムスカという状況は基本的に無い。

 

 

 


サムスカの効果


心性浮腫
サムスカ15mg プラセボ
体重変化量 ‒1.54±1.61kg ‒0.45±0.93kg
頚静脈怒張変化量 (cm) -2.03±2.81 -0.51±1.18
肝腫大変化量 (cm) -1.07±0.89 -0.35±1.00
下肢浮腫改善率 (%) 63.9% 42.1%

 

サムスカの利尿効果は服用24時間以内に現れる。効果が表れるなら副作用も現れるので服用してから4時間~8時間後に血液検査をする。

 

肝性浮腫
サムスカ7.5mg プラセボ
体重変化量 ‒1.95±1.77kg ‒0.44±1.93kg
腹水変化量 (mL) -492.4±760.3 -191.8±690.8
腹囲変化量 (cm) -3.38±3.56 -1.11±3.67
下肢浮腫改善率 (%) 54.8% 28.3%

 

1日で余計な水が1kg減るのがサムスカの即効性

 

常染色体優性多発性のう胞腎
サムスカ(可能最大量) プラセボ
両側腎容積の変化率 2.8% /年の増加 5.5% /年の増加

 

この常染色体優性多発性嚢胞腎に対するサムスカの作用機序はバソプレシンが細胞内で上昇させるcAMPを邪魔して嚢胞の成長を抑制する。

だが心臓や肝臓に使う場合とは異なり高用量のサムスカを服用しなければならない。1日最低60mg、最大で120mg服用する。120mg/dayを薬価計算すると1日総額11,814円となり一か月で354,420円となる。3割負担の患者さんだと月10万円となる。

 

高額医療制度があっても厳しい値段。治験では3年間サムスカ服用したとあるが実費だと360万円以上かかる。高すぎて血尿が出そう。

 

 


サムスカとフィズリン


商品名 サムスカ フィズリン
一般名 トルバプタン モザバプタン
常染色体優性多発性のう胞腎 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
薬価 2953.5円 8972.9円

 

強力な利尿剤サムスカより更に強力な利尿剤が存在する。

それがフィズリン(一般名:モザバプタン)

 

フィズリンも大塚が作った薬でフィズリンの活性代謝物がサムスカ。フィズリンは希少疾患医薬品なので簡単に処方される薬ではない。承認は2006年でサムスカよりも7年早い。

トラマールとタペンタの違い

トラマール タペンタ
一般名 トラマドール タペンタドール
立体構造 ラセミ体 鏡像異性体無し
販売年 2010年 2014年
開発 グリューネンタール グリューネンタール
販売 日本新薬 ヤンセン
効能効果 疼痛を伴う各種癌、慢性疼痛(非オピオイド鎮痛剤で治療困難な場合) 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
服用方法 1日4回 1日2回
1日上限 400mg/day 400mg/day(適宜増減可能)
薬理作用 μアゴニスト、NA ,5-HT取り込み阻害 μアゴニスト、NA 取り込み阻害
強さ 弱オピオイド 強オピオイド
経口モルヒネ 5倍 3.3倍
日本の規制 劇薬 麻薬
米国CSA スケジュールⅣ スケジュールⅡ
WHO除痛ラダー 2段階 3段階
代謝経路 CYP2D6、CYP3A4 グルクロン酸抱合
代謝物の活性 あり なし
重大な副作用
トラマール タペンタ
依存性
ショック
痙攣
呼吸抑制
意識消失
錯乱状態、譫妄

 

この2つの痛み止めはオピオイド受容体に作用する。オピオイド受容体とはモルヒネが作用する所でロキソニン等の痛み止めとは全く違った薬理作用を持つ。

 

トラマドールもタペンタドールも合成したのはドイツの製薬会社グリューネンタール。トラマドールは1977年にドイツで販売されて以来世界中で使われている実績がある。日本では注射剤が興和から「クリスピンコーワ注」として筋注用で販売されていたが筋注は痛い。そんなわけで2010年に経口薬として日本新薬から発売された。

 

タペンタドールは2009年に米国を皮切りに承認され日本でも2014年に承認。

 

共通する禁忌はモノアミン酸化酵素阻害剤、エフピーとか。タペンタを使いたい場合は14日間以上間を空けないといけない。

 

構造式をパッと見た感じだとかなり違った物質だがトラマドールのシクロヘキサン環を開裂させて-O-CH3を脱メチルしたらかなり似た構造をしている。

 

オピオイド受容体との作用に必要なジメチルアミノメチル基は2つともキッチリ保有。

 

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【肺炎】 クラビットとジェニナックとグレースビットの違い 【副鼻腔炎】

商品名 クラビット ジェニナック グレースビット
一般名 レボフロキサシン ガレノキサシン シタフロキサシン
構造式
発売年 1993年 2007年 2008年
開発会社 第一三共 富山化学 第一三共
用法 1回500mgを1日1回 1回400mgを1日1回
  • 1回100mgを1日1回
  • 1回50mgを1日2回
剤形 錠剤、細粒、点眼、点滴 錠剤 錠剤、細粒
1錠薬価 381.6円 214.8円 169.3円
最安ジェネリック医薬品
1錠薬価 97.0円 85.9円
併用注意
Al,Mg,Fe
ワルファリン
硝酸剤
テオフィリン
血糖降下薬

 

3つ全て日本の製薬会社が開発した抗菌薬。

抗菌薬や抗生物質は日本の製薬会社が得意な分野でマクロライド系抗生物質のクラリス、お菓子会社明治が作ったセフェム系抗生物質メイアクトとベストセラー薬がたくさん。

 

しかし抗生物質は長くても一週間、慢性副鼻腔炎での少量長期投与など例外を除いてすぐに飲み切り治る。一錠当たりの薬価も安いので製薬会社は儲からない、新規の抗生物質をガンガン開発しようという雰囲気では無い。

 

なので耐性菌ができないように最小量で慎重に使わなければならないのだが不適切な処方で耐性菌が発生している。新規薬が無く耐性菌が蔓延すると人類の危機。どんな抗生物質も効かない変異したペストが流行したら人類滅亡の危機。なので抗菌薬は適切に処方しよう。

 

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