【炭酸脱水酵素阻害剤】 トルソプトとエイゾプトの違い

トルソプト エイゾプト
一般名 ドルゾラミド ブリンゾラミド
開発 米メルク アルコン
構造式
日本発売年 1999年 2002年
薬価 166.3円(0.5%) 349.4円
効能・効果 緑内障、高眼圧症
用法 1回1滴、1日3回 1回1滴、1日2回(1日3回まで可)
薬理作用 Ⅱ型炭酸脱水酵素阻害
主な副作用 目に沁みる 霧視、口の中が苦くなる
禁忌 重篤な腎障害
慎重投与 肝機能障害患者

眼内手術の既往等のある患者

肝機能障害患者

角膜障害のある患者

pH 5.5~5.9 約7.5
他剤との点眼間隔 5分以上 10分以上
チモロール合剤 コソプト配合点眼液 アゾルガ配合懸濁性点眼液
薬価 569.2円 405.6円
用法 1回1滴、1日2回 1回1滴、1日2回

 

 

高山病の予防に使われる内服薬ダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)

緑内障にも使われ緊急に眼圧を下げたい時に服用する。

しかし副作用として手足のシビレが現れる。その他にも電解質の異常などがあり長期で常用するのは難しい。

そこで同じ作用機序の目薬があれば良いよねという発想で分子設計されたのがトルソプト点眼薬、そして少し分子構造を変化させたのがエイゾプト。

 

トルソプトとエイゾプトは炭酸脱水素酵素阻害薬というクラスに分類される。

 

眼圧を下げる力そのものは他の緑内障点眼薬と比較すると弱め、なので緑内障の第一選択薬ではなく他の緑内障の目薬で効果が不十分な時にそこにプラスする感じで使う。

 

共通点
  • 毛様体に存在する炭酸脱水素酵素のⅡ型を阻害して房水の産生を阻害して眼圧の上昇を防ぐ
  • 炭酸脱水素酵素阻害薬というクラスはプロスタグランジン関連薬やβ遮断薬よりも弱く補助薬として併用するのが基本
  • 腎排泄されるので腎機能が極度に低下している人には使えない
  • β遮断点眼薬チモロールとの合剤がある

 

 

比較試験
対象 標準薬点眼液で治療中の原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者241例
試験法 無作為化二重盲検法
方法 各点眼液は、両眼に1回1滴、1日2回(9時、21時)、3カ月間点眼した。

 

試験の結果、両者の眼圧下降効果は同等(非劣性)が証明された。

*この試験ではトルソプトの2%が使われているが日本で承認されているのは0.5%と1%だけ。海外では2%製剤が存在するが1%と2%でそんなに眼圧降下作用に差が無く後述する目の沁みという副作用が強いので日本では2%製剤は存在しない。

 

構造式

ダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)の構造式

 

このダイアモックスの構造を元にして炭酸脱水素酵素阻害の点眼薬の開発が始まった。

先に開発されたのはトルソプト。

そのトルソプトの構造の一部に-CH2-CH2-CH3-O-を挿入したのがエイゾプト。

側鎖を長くしたことで脂溶性が増して炭酸脱水素酵素に対する結合能が向上。

この違いのおかげで1日3回点眼のトルソプトに対してエイゾプトは基本的に1日2回で良くなった。

 

用法・用量

トルソプトは1日3回点眼するがエイゾプトは作用時間が長く1日2回点眼と利便性が向上している。

緑内障は自覚症状に乏しくまじめに長年点眼すること自体難しい。より点眼回数の少ない方がコンプライアンスの向上に繋がる。

 

β遮断薬チモロールとの合剤であるコソプトとアゾルカ、点眼回数は両方とも1日2回でありトルソプトは単剤使用時の3回から2回に減っている。βブロッカーを多用すると喘息や徐脈の副作用が懸念されるので点眼回数は1日2回となっている。

 

副作用

トルソプトは副作用として点眼する時に目がしみることがある。

これはトルソプト点眼液pH が5.5と酸性に偏っているから。

人間の体は基本中性、どちらかと言ったらに微妙なアルカリ性。pH差は痛みになる。

 

緑内障は基本的に毎日点眼する。結膜炎のように一時的に使う目薬であれば我慢できても何年も目がしみるのは厳しい。そこでこの目がしみるという欠点を改善したのがエイゾプト。

エイゾプトのpHは約7.5で人体とほぼ等しいのでpH差による異物感が解消されている。

 

しかしそのエイゾプトにも副作用がある。

 

点眼液を中性にするために懸濁液となっている。

その結果、点眼すると一時的に目の前が真っ白になる 霧視と呼ばれる。

そして点眼薬を2種類以上使うとき、エイゾプトは10分以上間隔を空けなければならない。

緑内障治療においてエイゾプト単剤だけでいける場合は少なく併用することが普通なので煩わしい。

 

沁みるトルソプト

視界が曇るエイゾプト

 

許容できる方を選ぼう。

 

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