【企業分析】 アラガン:ボトックスを製造販売する美容リーディングカンパニー

 

ボトックス注射。それはしわ取り薬の最高ブランド。FDAと厚生労働省のお墨付き

 

美容業界に全く無縁の丿貫ですら「ボトックス」というブランドを知っているということはその業界において確固としたブランド力があるということ。

 

高級車と言えばベンツ。痛み止めと言えばロキソニン。美容外科業界でその位置しているのがボトックス。そのボトックスを製造販売しているのがアラガン

 

現在のアラガンという社名は米後発薬大手だったワトソン・ファーマシューティカルズが買収を繰り返し社名も変更してたどり着いたもの。

 

スイスの後発品大手アクタビス・グループを買収した時に買収先のアクタビスに社名を変更。ワトソンは元が米国内で後発医薬品を製造販売していた会社なので世界的なネームバリューが高いアクタビスにあっさり社名を変更。

 

更にアクタビスという社名に変更してすぐ旧アラガンを買収して社名をまた買収先のアラガンに変更して誕生したのが現アラガン

 

名より実を取る会社

 

 


アラガンの歴史


 

旧アラガン

 

1948年:薬剤師ギャビンS.ハーバートによって旧アラガン設立される。抗ヒスタミン点眼薬「ALLERGAN」の販売を開始。アラガンという名前はこの時の目薬に由来

1960年:ハードコンタクトレンズが市場に出回りそのケア商品で成功

1965年:抗ウイルス薬HERPLEXクリーム(アシクロビル)がFDAに承認される。

 

1970年:ソフトコンタクトレンズが市場に出回りそのケア商品で成功

1978年:ギャビンS.ハーバートが亡くなる

1980年:SmithKline Beckman Corporationに2億3,600万ドルで買収される

1989年:親会社がBeecham Corporationと合併してしたときにアラガンは再び別会社として独立

1991年:Oculinum,Inc.を買収しボトックスブランドを手に入れる。

1995年:軽度から中等度のニキビ局所治療薬Azelexクリームを発売

 

1996年:緑内障治療点眼薬アイファガンがFDAに承認される。

 

1997年:白内障患者用の多焦点眼内レンズArrayがFDA承認。

2000年:頚部ジストニアによる首の痛みの治療薬としてFDA承認

2002年:ボトックスが美容分野の薬としてFDAから承認される。

2015年:アクタビスに660億ドルで買収される。

 

 

 

 

ワトソン・ファーマシューティカルズ

 

 

1985年:台湾出身のアレン・チャオ(パデュー大学薬学博士号)が設立

 

チャオは新薬メーカーを作りたかったが新薬会社はハードルが高かったのでまずは特許が切れた医薬品の製造から始めることにした。製薬会社設立のために台湾人コミュニティを頼り400万ドルを集めワトソン・ファーマシューティカルズ設立

 

1985年:利尿剤フロセミドの後発品を発売

1993年: 株式公開

1995年: Circa Pharmaceuticalsを買収。

2003年:過活動膀胱治療薬Oxytrolが承認される。

 

2012年:スイスに本拠を置く世界のジェネリック医薬品会社アクタビスを42億5000 万ユーロで買収し社名を買収先の「アクタビス」へ変更

 

 

2013年:アイルランドの製薬会社ワーナーチルコットを約85億ドル相当で買収

 

2014年:フォレスト・ラボラトリーズを250億ドルで買収

 

この買収で過敏性腸症候群治療薬リンゼスや抗うつ薬レクサプロという資産を手に入れる。

 

2015年3月:旧アラガンを660億ドルで買収し社名をアクタビスから「アラガン」に変更する。

2015年7月:イスラエルの後発品大手TEVAに405億ドルで後発品事業を売却

2017年:ゼルティックを24億8000万ドルで買収し脂肪冷却装置クールスカルプティングを手に入れる。

 

 

 

 


アラガン概要(2017年)


 

 

過去5年間の株価

2015年にファイザーからの買収話があった頃が株価の天辺で以降はダラダラ下げている。1600億ドル規模のディールだったが現時点でのアラガンの時価総額は500億ドルに満たない。

 

 

 

本社所在地:ダブリン

 

株式取引所:ニューヨーク証券取引所
ティッカーシンボル:AGN

 

売上:159億ドル
研究開発費:21億ドル
営業利益:-59億ドル
純利益:-41億ドル
配当支払額:12億ドル

株価:142ドル
一株配当額:2.88ドル
配当利回り:2%

 

年間売上

 

ワーナーチルコットとフォレストラボラトリーズの2社を買収して一気に100億ドル企業の仲間入り。1から作った会社が30年後に売上1兆円企業になった。

 

 


アラガンの売上トップ5(2017年)


 

1位:ボトックス【31.6億ドル】

菌から金。3000億円以上の売り上げを誇るアラガンの宝

 

2位:レスタシス【14.7億ドル】

免疫抑制剤シクロスポリンが主成分のドライアイ治療薬。

 

3位:ジュビダーム【10.4億ドル】

中身はヒアルロン酸、食べても胃酸で分解されるのでお肌プルプルにはならない

 

 

4位:リンゼス【7.2億ドル】

慢性的な便秘を改善する。吸湿性が高く分子構造が壊れやすいので扱いにくい薬。

 

5位:ルミガン【6.9億ドル】

緑内障治療薬だが睫毛が伸びるという副作用を利用したグラッシュビスタという商品もある。

 

 

 


開発中の薬


 

開発コード名 対象疾患 作用機序
ATOGEPANT 偏頭痛の予防 カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗
UBROGEPANT 偏頭痛の発作 カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗
ABICIPAR 加齢黄斑変性症 長期間作用型VGEF-A拮抗
Cenicriviroc 非アルコール性脂肪性肝炎 CCR2 &CCR5 拮抗
RAPASTINEL 大うつ病性障害 NMDA受容体グリシン部位のアロステリックモジュレーター
RELAMORELIN 糖尿病性胃不全麻痺 グレリン様選択的、運動促進性アゴニスト

 

アラガンは新規作用機序の偏頭痛薬、予防薬と発作 時に使用する薬、それぞれ新薬を開発している。アムジェンの「Aimovig」、TEVAの「Ajovy」、イーライリリーの「Emgality」。効果に大きな差がない場合は市場に先に出したものが大きなシェアを取る。ゆっくりしているとせっかく薬が完成しても売れないということになる。

 

AbiciparはスイスのバイオベンチャーMolecular Partnersの技術を導入して開発されている。4週間に一回注射するルセンティスに対して3か月に一回と大幅な作用期間の延長が期待されている。もし承認されたら加齢黄斑変性症の患者さんにとってかなり助かる。

 

Cenicrivirocは今開発が熱いNASHの治療薬候補、C型肝炎治療で大きなブレークスルーが起きたからこっちも期待されるが成功するかは分からない。ジョギングして体重を適度に落とす方が効果ありそう。

 

RAPASTINELは既存の抗うつ薬で効果が乏しいうつ病患者対象。経口薬でなく静脈投与。売り上げ的にはそんなに大きくならなそう。

 

RELAMORELINは六君子湯の有効成分グレリンに似た作用機序で胃運動を改善する。プラセボと比較するんではなく六君子湯と比較したら面白い。

 

 

 

 

 


クールスカルプティング


 

 

世の中の消費は女性が握っている。

結婚している友人の話を聞いても奥さんが家計を握っている。旦那さんのお小遣いは月2万円なのに奥さんの化粧品は 一つ数万円。

 

女性の「綺麗になりたい、美しくなりたい」と思うのは本能のようなものだと思う。ダイエットのしすぎでガリガリに痩せている女性は本能である食欲よりも痩せたいという欲求が勝っている。

 

そんな女性の痩せたいという欲望に対しての答えがアラガンのクールスカルプティング。

 

アラガンが2017年に2800億円という大金をかけて買収したゼルティック。そのゼルティックが販売している脂肪吸引器がクールスカルプティング

 

アプリケーターと呼ばれるカップに皮膚を摘み入れてスイッチを入れるとハイパー掃除機な感じで吸引。吸引された部分を冷やして凍らせる。水分は0度で凍るのに対して脂肪細胞は4℃で凍る、この差を利用して脂肪細胞だけにダメージを与えアポトーシスさせ数ヶ月かけて体外に排出させる。厚生労働省認可も受けている。

 

色々な美容外科クリニックのホームページで料金を確認すると一回 5万円あたり。

 

普通のダイエットだと脂肪細胞が生きているのでリバウンドするがクールスカルプティングだと脂肪細胞がアポトーシスでいなくなるのでリバウンドはしにくい。

 

いつの時代も不変の痩せたいという欲求があれば売れるのがクールスカルプティング。

 

医療用医薬品であれば特許が切れたら後発品が販売されるがこの機器は商標権とブランド力で守られているので特許切れリスクが無い。

 

リスクがあるとすれば平安時代のように

 

太っている女性=裕福な女性=モテモテ

 

というように世の中の美的感覚が変化してしまったらこの機会は存在価値を失う。

 

 

 

 


ボトックス


 

 

歴史

1820年:ドイツ人のジャスティニウス・カーナー博士が汚染されたソーセージを食べて亡くなった複数被験者の体を調べボツリヌス中毒の概念を発表

1869年:ドイツの医師ジョンミュラーがソーセージのラテン語「botulus」から「ボツリヌス」という用語を造る。

1896年:ボツリヌス菌がベルギー人細菌学者エミール・ヴァン・エルメンゲムにより発見される

 

1910年:ボツリヌストキシンがA型とB型に区別される

1946年:エドワードJ. Schantz博士がA型ボツリヌス菌を単離して結晶化

1953年:バーノン・ブルック博士が筋肉に微量のボツリヌス毒素Aを注射すると、一時的な筋肉の弛緩が生じることを発見

1977年:米国人研究者スコットがA型ボツリヌス毒素を初めて斜視に対して臨床応用

1989年:斜視と眼瞼痙攣に対してFDA承認

1996年:「ボトックス注100」が眼瞼痙攣に対して厚生労働省承認

2000年:頸部ジストニアに対してFDA承認

2004年:腋窩多汗症(過度の発汗)に対してFDA承認

2010年:慢性片頭痛と上唇痙縮に対してFDA承認

 

 

 

ボトックスはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)により産生されるA型ボツリヌス毒素を有効成分とする筋弛緩剤。A型が最も安定で毒性が強い。その毒性ゆえに第二次世界大戦中は細菌兵器としても研究されている。当たり前だがボトックスビスタは無毒化されたもの。

 

筋肉は神経末端からアセチルコリンという物質を受け取り動く。ピクピクと。瞼が無意識に痙攣している時、そこにはアセチルコリンが存在する。

ボツリヌス毒素はそのアセチルコリンの神経からの放出を阻害する。すると痙攣している筋肉がアセチルコリンを受け取れなくなり動きが止まる。表情筋の緊張を麻痺させ皺を取るのがボトックスビスタの主な作用機序。

 

ボトックスには医療用と美容用がある。ボトックスビスタが美容用。医療用のボトックス注は一時的に親会社であったGSKが日本で販売している。

 

 

日本で承認されているだけでも

 

眼瞼痙攣

片側顔面痙攣

痙性斜頸

上肢痙縮

下肢痙縮

2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足

重度の原発性腋窩多汗症

斜視

痙攣性発声障害

 

シワだけでなくワキガにも効果があったり多彩な薬効

 

こんな有用なA型ボツリヌス毒素だが物質特許は既に切れておりアラガン以外からも販売されている。ドイツの製薬会社メルツが販売しているゼオミンや整形大国の韓国製ニューロノックスなどが存在する。しかし世界市場でのアラガン製ボトックスブランドの市場シェアは断トツ一位。

 

 

繰り返し使うから売れるボトックス

 

ボトックスのしわ取り効果は注射して3か月程度

 

よって美を維持しようとしたら定期的にボトックスを注射しなければならない。ボトックス注射をやめるとそれまで隠していたシワが増える。ルックスを気にする人からしたら一度始めたらやめにくい。知り合いにリアップユーザーがいるが効果イマイチでも絶対に欠かさずX5を定期的に購入して使用している。髪の毛が増えているようには見えないのだが本人曰く

 

リアップを使っているから現状維持かもしれない。リアップをやめるなんてトンデモナイ

 

と言っていた

 

デパスとは違う意味での精神的依存性がリアップにはある。そして同種の依存性がボトックス注射にもあると思う。

 

 

 

ボトックスビスタの利点

 

ボトックスビスタは製造会社アラガンの責任において厳密な品質管理を行い日本に輸入された商品。鮮度・品質が保証されている。ボトックスは非常に繊細な薬で輸送中の保管温度や衝撃に影響を受ける。この品質と安心感というブランド力がアラガンの収益となる。

 

アラガン社は薬自体の品質だけでなく定期的に美容外科医師対象のトレーニングを行い知識と技能を保証する認定制度を作っている。ボトックスは医師が施術するもの。医師との連携を緊密にしてボトックスを販売するのがアラガン社の戦略。

 

美容目的のボトックス注射は保険が効かずに10割負担。公的な保険を介していれば建前上は平等な医療が担保されるが自由診療だと受けられるサービスと価格が大きく異なる。ボトックス注射を受けようと思う人はアラガン社が認定したボトックスビスタ認定医がいる病院へ。

 

 

 

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