*レムデシビルは静注です
米国の製薬会社ギリアド・サイエンシズが開発しているレムデシビルはコロナウイルスに対する効果が期待されており世界中で臨床試験が実施されています。既に米国では5月1日に緊急承認されました。
織部
利休
コロナウイルスが登場してまだ半年も経ってないのに開発が早いのう
元々はあの恐ろしいエボラ出血熱やマールブルグウイルスなどに対して開発されていましたがコロナにも効く可能性があるということで臨床試験中です。
織部
利休
エボラとコロナウイルスて似てるんかのう?似てたらむしろ怖いけど
エボラもコロナも両方RNAウイルスという種類なので大きな分類では共通しています。ただそれは人間とチンパンジーの遺伝子が似ているようなものでかなり違った部分もあります。
織部
利休
レムデシビルはどうやってウイルスをやっつけるんじゃ?
ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害します。
織部
利休
日本語でお願いします。
スーパーに陳列されている商品をレジに持っていくと店員さんがコードをスキャンしますよね?
織部
利休
どんな商品にもコードが付いておるのう
そのコードには商品名や価格など様々な情報が積み込まれています。
織部
もしマジックで一本線を付けたすとエラーが出て読み取れません。似たようなバーコードでも情報が無茶苦茶になって読み取れないのでレジ作業が停止します。
織部
利休
似ているけど違う情報をレジで読み込ませるという事かのう?
レムデシビルの活性体が取り込まれると数サイクルはそのまま合成されますが途中でこのレジおかしいとなって機能停止します。
織部
利休
神戸牛サーロインステーキ100gのコードを読み込んでうまい棒和風ステーキ味になったらレジの店員さんもビックリして固まるのう。
利休
ちなみに活性体てなんぞ?
レムデシビルはプロドラッグです。体内で構造の一部が切断されGS-441524という抗ウイルス作用を持つ物質になります。
織部
レムデシビル |
利休
なんとなくDNAやRNAのアデノシンに似ておるのう
ウイルスタンパクの合成は↑の物質が連鎖結合して増えていくわけですがそこに似ているレムデシビル(GS-441524)が入り込みウイルスに誤認識させて連鎖を停止させます。
織部
利休
つまりレムデシビルは今いるコロナウイルスを攻撃するんじゃなくこれ以上増えないようにする薬なんじゃな
この類似体戦略は目新しいものではありません。DNAウイルスですがヘルペスウイルス治療薬のバルトレックスも同じように構造が似ているので増殖する際に取り込まれてタンパク合成を停止させます。
織部
利休
要するにパクり?
いえ、レムデシビルには他のヌクレオチド類似体薬には無い特徴もあります。
織部
レムデシビルの構造式を見てほしいのですが塩基とリボースを繋いでいる炭素にシアノ基(-C三N)がありこの部分が抗ウイルス活性に重要な部分だとわかっています。
織部
利休
そのシアノ基が他の置換基じゃ効果無いんかのう?
シアノ基をメチル基やビニル基に換えたら抗ウイルス作用がほぼ無くなったのでシアノ基は重要だと思います。このシアノ基は他のヌクレオチド類似薬が持たない特徴的な構造です。
織部
利休
赤い丸の部分はタンパク合成に必須じゃからそれが付いていたら増殖が止まらんのでは?
その-OH基を除去した化合物だとそもそも完全な異物だと認識されてしまい除去されてしまうんです。なのでこのレムデシビルに付いている-OH基は大事です。
織部
利休
ヌクレオチドを認識する精度が高いんじゃな
レムデシビルが結合しても数サイクルはタンパク合成が進みますがそのうち停止します。
織部
緑部分の炭素ー炭素結合も結合力が強くてレムデシビルの安定性に寄与しています。
織部
利休
RNAのアデノシンは言われてみれば炭素ー窒素の結合じゃのう、炭素ー窒素よりは確かに結合力が強いのう
紫のリン酸基も重要な部分です。レムデシビルを含むヌクレオチド類似薬はそのままでは抗ウイルス作用が無いので変身(リン酸化)しなければなりません。
織部
利休
サイヤ人からスーパーサイヤ人みたいに?
サイヤ人は元々強いですがヌクレオチド類似薬は元の姿だと闘うことができません。なので変身するんですがその時にリン酸とくっついた形になります。
織部
しかもリン酸化を3回受けないといけないんです。この時にレムデシビルの活性体は既に1つリン酸基を持っているので速やかに3リン酸化できるので効果発現が早いです。
織部
利休
左様か
利休
どうやって効くかはもうどうでも良いから早ようレムデシビルの効果を知りたいんじゃが
まだ臨床試験の完全なデータは出揃っていません。これまでのところ米国では有効とのデータが出ていますが中国では効果が無かったという結果になりました。
織部
利休
でもアメリカはもう薬として承認したんじゃろ?
米国の国立アレルギー・感染症研究所が行っている試験の予備解析結果で有望だったので一応承認されました。
織部
利休
結果はどんな感じ?
NIAID Trial | ||
被験者総数 | 1,063人 | |
偽薬 | レムデシビル | |
回復までの日数 | 15日 | 11日 |
死亡率 | 11.6% | 8.0% |
主要評価項目は回復するまでの日数でこの項目は偽物の薬と比べて短くなったと統計的に認められました。
織部
利休
さっそくレムデシビルを発注じゃ
しかし死亡率に注目するとレムデシビル群の方が優れているように見えますが統計学的には誤差の範囲です。
織部
利休
つまり意味無い?
効きそうだという感じを受ける試験結果ですが奇跡の特効薬レベルではないでしょうね。
織部
利休
微妙じゃ
まだ臨床試験の完全なデータが公開されていないのでその結果発表を待つしかない所です。
織部