ムコソルバン | ムコダイン | |
分類 | 粘液潤滑薬 | 粘液修復薬 |
一般名 | アンブロキソール | カルボシステイン |
構造式 | ||
発売年 | 1983年 | 1981年 |
開発会社 | ベーリンガーインゲルハイム | サノフィ |
販売会社 | 帝人ファーマ | 杏林 |
効能効果 |
下記疾患の去痰 慢性副鼻腔炎の排膿 |
下記疾患の去痰 慢性副鼻腔炎の排膿 |
主な薬理作用 |
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用法 | 1日3回 | |
剤形 | 錠剤 徐放性錠 ドライシロップ シロップ 内用液 | 錠剤 ドライシロップ シロップ |
Tmax | 2~4時間 | 2.3時間 |
T1/2 | 5時間 | 1.6時間 |
服用可能年齢 | 幼児 | 幼児 |
副作用発現率 | 0.5% | 0.91% |
1日成人量薬価 | 47.4円 | 40.8円 |
痰や咳はほこりや病原菌から身を守る生体防御機構。適度な粘性の気道粘液はウイルスや細菌の排除において重要。
しかしその生体防御機構が風邪の時などにはバランスが壊れて痰の粘性が高まり排出できなくなる。そういった時に使う薬が去痰薬のムコソルバンやムコダイン。この2つはよく併用されるが薬理作用は異なる。
肺サーファクタントは肺表面に存在し痰が外へ移動するのを助ける界面活性剤(潤滑油)でII型肺胞上皮細胞から作られる。
この説明だけだと単に滑りを良くするだけの物質に聞こえるがサーファクタントは正常な呼吸において欠かせない物質。もし肺サーファクタントが無いと息を吐きだして小さくしぼんだ肺がうまく膨らまない。風船がうまく膨らまない状態。呼吸できないと窒息する。
肺組織が未発達で産まれてくる未熟児ではこの肺サーファクタントの不足から呼吸困難となる。人工呼吸器を装着しても肺が硬くうまく呼吸ができずに命を落とすこともある そんな状況を救ったのが人工サーファクタントで肺に流し込むと硬かった肺が膨らみ酸素が行き渡る。
未熟児が出産する時にはあらかじめ母体にステロイドを投与する場合がある。ステロイドも肺サーファクタント分泌量を増やすので生まれてきた時に正常に呼吸できるようになる。
そんな大切な肺サーファクタントの分泌を増やすのがムコソルバン。サーファクタントは気管支喘息発作時の好酸球に対してアポトーシスを促進するので間接的にムコソルバンは抗炎症効果も発揮する。
風邪などの炎症時には炎症性物質が細胞に刺激を与え細胞内のホスホリパーゼCというシグナル伝達物質を活性化する。
このホスホリパーゼCはシアル酸転移酵素やフコース転移酵素遺伝子の発現レベルを上昇させる。
そうするとゴルジ体においてシアル酸やフコースが結合したネバネバの痰ができあがる。
ムコダインはホスホリパーゼ Cの活性化を抑制して粘性を低下させる。ムコダインの構造はタンパク質を構成しているアミノ酸誘導体なのでタンパク質であるホスホリパーゼCの酵素活性部位と親和性が高い。
ネバネバ成分の原因物質であり人間や動物の粘膜などにたくさん存在している。杯細胞で作られる。
目の表面粘膜にもムチンが存在しており不足するとドライアイになる。 ドライアイ治療薬のジクアスやムコスタ点眼液はムチンを増やす。痰のネバネバ成分もこのムチン。
ムチンの分子構造は糖鎖で構成されておりフコース( 昆布のネバネバ成分)やシアル酸。増えすぎるとネバネバしすぎて痰が切れなくなる。ムコダインはこの増えすぎたシアル酸とフコースを減らす作用がある。
- 粘液潤滑薬
- 名前の由来はMucous(粘液)+Solve(溶解)
- II型肺胞上皮細胞からの肺サーファクタント(肺表面活性物質)分泌を促進する。
- 気道上せん毛の運動を促進する
- ブロムヘキシンの代謝物がアンブロキソール
- ムコソルバンL錠は1日1回で24時間効果を発揮する長時間作用型なので便利
- 痰が喉にしつこく引っかかる、切れが悪い場合はムコソルバンがおススメ
- 粘液修復薬
- 名前の由来はMucous(粘液)+Dynamic(流動化)
- ムチンの糖鎖末端における過剰発現シアル酸/フコース比を正常化させる。
- 抗炎症作用があり活性酵素産生抑制
- 滲出性中耳炎(乳児・小児)に保険適応がある(シロップおよびドライシロップのみ)
- 慢性閉塞性肺疾患の増悪を抑制する(PEACE STUDY)
- アミノ酸であるシステインのチオール基にカルボン酸が結合したのがムコダイン
- 痰の量が多い場合はムコダインがおススメ