【アステラス】 イクスタンジ:馴染みがある分野に投資することの大切さ

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アステラス製薬が製造販売しているイクスタンジ

 

製薬会社が新薬を得るためには自社で研究開発する以外に他の製薬会社が研究している薬に投資したり有望な薬を研究している会社そのものを買収して傘下に収める方法がある。

 

この前立腺がん治療薬イクスタンジはアステラスが米国バイオ会社メディベーションに臨床試験段階から投資をして商品化までたどり着いた薬。

 

 

買収で有名な薬だとC型肝炎治療薬ハーボニー。販売しているのはギリアド・サイエンシズだが開発したのはファーマセットというバイオベンチャー。そのファーマセットを110億ドルで会社ごと買収してギリアドサイエンシズの薬となった。

 

年間一兆円以上売れてた高脂血症用剤リピトールもファイザーが販売しているがファイザーが開発したものではなくワーナーランパードが開発してファイザーがリピトールを得るために会社ごと買収して手に入れた。

 

イクスタンジの場合はアステラスが2009年に

 

契約一時金1.1億ドル 

マイルストン達成で最大3.35億ドル  

売上マイルストン達成で最大3.2億ドル

 

という契約でメディベーションと共同開発契約を結んだ。

 

そしてその結果イクスタンジは2017年に2943億円の売上という大ヒット商品に成長した。

 

アステラス製薬の元の一つである山之内は泌尿器分野に強く排尿障害改善剤「ハルナール」や過活動膀胱治療剤「ベシケア」を開発。その泌尿器分野に造詣が深いアステラスが前立腺がん治療に見込みがあると判断した薬がイクスタンジ。

 

ハルナールとベシケアが年2000億円でイクスタンジが年3000億円

 

泌尿器分野で年5000億円の売上がありアステラスの年間売上13000億円の4割弱を占めている。自分に馴染みがある分野に投資することの大切さがわかる。

 

結局メディベーション本体はファイザーがお得意のファイザーモデルで会社ごと買収したが他社との買収合戦の結果1兆円を超える金額となった。自らの知見に基づき初期段階で投資していたら日本の製薬会社の様に小さな規模でも戦えるのが製薬業界。

 

この様に製薬会社は自社開発能力だけではなく他の会社が開発している薬の目利きも重要になる。製薬会社は投資銀行のヘルスケア分野担当者より深い知見を持っているので買収が上手い製薬会社に投資するのも一つの手。

 

 

 


イクスタンジの保険適応


 

去勢抵抗性前立腺癌

 

 

去勢というと物理的にタマを取るイメージだけど去勢抵抗性は抗ホルモン剤によって男性ホルモンレベルを下げている状態を指す。しかしリュープリンやカソデックスを使用して男性ホルモンレベルを落としてもいつかは薬の効果が無くなり再び男性ホルモンレベルが上昇してしまう。

 

この状態が去勢抵抗性前立腺がんで2014年以前はその段階だともう他の選択性が低い抗がん剤を使用するしか無かったがイクスタンジとザイティガが登場して治療の選択肢が増えた。

 

 

 


そもそも前立腺がんとは?


 

男性にしか持っていない臓器である前立腺に発生する癌なので男性ホルモンが主なリスク要因となる。初期症状は尿閉や残尿感が現れる。

 

似たような疾患に前立腺肥大があるが違う疾患である。男性ホルモンがリスクという点では共通しているが前立腺肥大を放置してしていたら前立腺がんに変化することはない。

 

前立腺がんは骨に転移しやすく物理的に近い腰の骨に転移する場合が多い。腰痛と尿閉がある場合は泌尿器科に行こう。

 

腫瘍マーカーにはPSAというものがある。

 

prostate specific antigen=前立腺特異抗原の略

 

基準値は4ng/mL。確率的に10ng/mL以上だと前立腺がんの疑いがでてくる。PSAは目安なので確定診断は細胞を生検しないとわからないが前立腺がんの5年生存率は比較的高いので早期発見できれば助かる見込みがある。定期的に検診を受けよう。

 

 

 


イクスタンジの効果


海外第Ⅲ相試験において、ドセタキセル治療歴を有する去勢抵抗性前立腺癌患者を対象にプラセボ投与を対照群として、本剤 160mg/ 日を 800 例に連日投与した結果

 

全生存期間(OS)が

 

 

イクスタンジ群18.4カ月vs 偽薬13.6カ月

 

と統計学的優位に生存期間を延長している。。

新薬イクスタンジを使っても余命が半年も変わらないか・・・と思うところではあるけど4.8か月生存期間の延長は抗がん剤開発の世界では圧倒的に優位な成績。それまで最先端で最善の治療をしている状態から更にOSを伸ばすことはとても難易度が高い。

 

 

 


イクスタンジの薬理作用


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イクスタンジは男性ホルモンをブロックすることにより薬効を発揮するがそれまでのカソデックス(ビカルタミド)と違うところがある。

 

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カソデックスもイクスタンジもアンドロゲン受容体(AR)に結合して男性ホルモンを邪魔するがカソデックスは自身がシグナルを伝えてしまう部分作動薬、パーシャルアゴニストで癌の増殖シグナルを少し送ってしまう。

 

しかし場合によってはそのパーシャルアゴニストが良い面に働くこともある。

 

統合失調症治療薬のエビリファイ
エビリファイはドーパミンのパーシャルアゴニストでドーパミン結合比率を程よく調節する。ドパミンは多すぎだと統合失調症になるが少なすぎてもパーキンソン様になったりするから中庸が大切。中庸な状態が必要な疾患にはパーシャルアゴニスト作用を持つ薬は有用。

 

 

 

しかし前立腺がん増殖シグナルは増えても何も良い事ないのでカソデックスのARパーシャルアゴニスト作用は余計なもの。イクスタンジにはARのパーシャルアゴニスト作用が無いのでその点だけでもカソデックスより優れている。

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そのうえ移行してしまった複合体がDNAに作用する事も阻害する。

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以上3つの作用点を阻害することにより前立腺がんのシグナルを阻害するのがイクスタンジ

 

 

 


構造式


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イクスタンジの成分であるエンザルタミドの構造式

緑で囲った部分は前世代のアンドロゲン受容体遮断薬カソデックスとも共通している

 

 

参考までにカソデックスの構造は↓

ビカルタミド

構造を眺めてみるとトリフルオロメチルベンゼンにニトリル基がオルト位に
くっついているこの構造がアンドロゲン受容体との結合に重要らしい

左側の構造の違いで完全アンタゴニストになるかパーシャルアゴニストになるか決まるのか?

 

 

 


代謝


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エンザルタミドの代謝は主に CYP2C8 が、また一部 CYP3A4/5 が関与し、ともに N-脱メチル体を生成することが示された。

 

In vitro 試験の結果では、N-脱メチル体はアンドロゲン受容体(AR)に対してエンザルタミドと同等の親和性を示し、AR 核内移行に対しても同等の阻害作用を示したが、カルボン酸体は薬理活性をほとんど示さなかった。

代謝物の薬理活性の有無を見てみるとカソデックスとの共通構造以外の部分もアンドロゲン受容体との結合に重要な気がしてきた。

 

 


イクスタンジの副作用

イクスタンジの特徴的な副作用に痙攣がある。

 

 

痙攣発作(0.2%):痙攣、てんかん重積状態等の痙攣発作があらわれることがあるので観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 

 

なぜ痙攣が起こるのかは調べたけど分からない。
しかしけいれん発作が優位に起こるのは事実なので併用禁忌では無いがクラビット等のニューキノロン系抗菌薬や小児てんかん患者に禁忌の抗ヒスタミン剤ザジテンは併用しない方がよさそう。

 

 

 


イクスタンジの値段


イクスタンジの1カプセルの薬価は2354円
一日4カプセル服用するので1日当たり9416円 一カ月で28万円
3割自己負担で84000円 1割でも28000円って高杉ワロタ

ちなみに旧世代のカソデックスの薬価は813円
1日1錠服用するから1日当たり813円 一か月で2.8万円

3割自己負担で8400円 1割で2800円

ざっくり10倍の価格差があるわけだが薬の価値が10倍違うということかな、厚生労働省的には

 

 


ザイティガとの違い

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ザイティガは作用機序がイクスタンジと違いCYP17を阻害しホルモン合成を阻害することによりホルモンレベルを下げる。よって必要なホルモンも一緒に抑えてしまうので補うためにプレドニゾロンを併用する必要がある。

ザイティガは低カリウム血症になりやすいので注意。
高血圧はイクスタンジもザイディスも共通の副作用で現れやすいので血圧にも注意しよう。


イクスタンジの売上と株価


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アステラス株価の推移
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2009年にメディベーションに投資して開発が軌道に乗った2012年に
イクスタンジの進捗具合に引っ張られるように株価が上昇している

 

そして発売して僅か2年でアステラスの稼ぎ頭に成長した。
アステラスのこれから10年を支える薬がアステラス

 

 

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