1960年にHoffmann− La Rocheの研究所でスターンバック博士により合成された精神安定剤
日本では武田がセルシン、アステラスがホリゾンという商品名で販売している。
アメリカでの商品名はヴァリウム
アメリカで最も売れた向精神薬でローリングストーンズの歌にも登場
Mother’s little helperというタイトルの歌
最近の母親達は疲れている、でもそれは必ずしも病気ってわけじゃないんだ
この小さな黄色い錠剤(ジアゼパム)がある、これさえあれば忙しい主婦業もやっていけるんだ~
旦那の料理を作るのが面倒くさい時は2錠あれば大丈夫♪
でも精神科を受診した後ですぐにまた4錠きめる~(^^♪
というCoolな歌が発表される位に大ヒット
画像の錠剤は青いが純粋なジアゼパムは白色~淡黄色の結晶性
ジアゼパムはWHOが指定する必須医薬品
ベンゾジアゼピン(ベンゼンとジアゼピン)+PAM(positive allosteric modulator)=ジアゼパム
対象年齢 | 1回量 | 1日量 | 服用時点 | |
|
成人 | 2~5mg | 15mg(外来) | 1日2~4回 |
小児(4歳以上) | 分割投与 | 2~10mg | 1日1~3回 | |
小児(3歳以下) | 分割投与 | 1~5mg | 1日1~3回 | |
脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛の筋緊張の軽減 | 成人 | 2~10mg | N/A | 1日3~4回 |
麻酔前投薬 | 成人 | 5~10mg | N/A | 就寝前または手術前 |
精神安定剤として長い歴史を持つので適応は広い。
基本的に精神安定剤として使われるが多目的に使われる。胃カメラをする前に使用されることがあるし子供の熱性けいれん時には座薬がよく使用される。肩凝り、あがり症、こむら返り等でも使用される。
ジアゼパム注射液はアルコール依存症にも保険適応がある。
もしジアゼパムを飲み忘れてしまったらが気ついた時に1回分を服用。次の服用時間が近い場合は一回飛ばして次から1回分を服用すること。まとめて2回分服用してはいけない。
ジアゼパムは構造的に脂溶性がとても高い。ベンゼン環が2つあり。なので血液脳関門を簡単に通過でき脳に到達できる。
脂溶性が高い事は中枢神経系の薬の大きなメリットではあるがデメリットもある。
筋肉注射をする場合だと脂肪組織にジアゼパムが吸着してしまい血中濃度が上昇しなかったり、点滴しようとすると点滴バックの疎水部分に吸着してしまったり。
そしてアルコールも脂溶性が高く血液脳関門を通過できるので酔っぱらう。
ジアゼパムとアルコールを併用すると中枢抑制作用が増すので控えよう。
ジアゼパムは脳内のベンゾジアゼピン受容体が存在する大脳辺縁系や視床下部で薬理作用を発揮する。ジアゼパムがベンゾジアゼピン受容体に結合するとGABA受容体との相互作用により、GABA の GABAA受容体への親和性が増加し間接的にGABAの作用が増強する。
そうしてGABAの作用が強まるとクロライドチャネルが開き細胞内にCl-がどんどん入ってくる。
クロライドイオンはマイナスイオン。 脳内の興奮(癲癇とか)などはプラスイオンで引き起こされる。マイナスイオンが細胞内に入ると抑制系が亢進され、不安や不眠、 興奮、てんかんといった症状が改善される。
[ジアゼパムが結合するGABAA受容体の一部、αとγの間の受容体。GABAAは5つのサブユニットから成るαが2個、βが2個、γが1個の5量体の一部]
ジアゼパムは間接的にGABAの効果を増強してクロライドチャネルを開く。BDZ受容体に結合してその結果GABAの結合を促進するので結合する受容体自体が既にジアゼパムで飽和しているとそれ以上は結合できない。過量服用しても一定以上の効果はでにくい。
- ジアゼパムがGABAA受容体-Clチャネル複合体のαとγ位の間に結合する。
- GABAの受容体に対する親和性を増加させαとβの間にGABAが結合しやすくなる。
- GABAが結合してCl イオンチャネルの開口回数が増加してマイナスに帯電しているCl イオンの流入が増加する。
- マイナス電荷が細胞の興奮を抑制する。
これに対して昔のバルビツール酸系は直接クロライドチャネルを開く作用がある。しかも用量を増やせば増やすほどその作用が増強されるので危険性が高い。
初めて製品化されたBDZ系薬クロルジアゼポキシドの約5倍、抗痙攣作用は約5〜10倍強い
このジアゼパムがBDZ系の薬のスタンダード
なので精神薬の強さを比較するときにはジアゼパムの○○mgに相当するという表現が見られる。
例)デパス1.5mgがセルシン5mgに相当する。
デパスは短時間作用型でセルシンは長時間作用型なので単純に比較はできないが目安として↓
ベンゾジアゼピン系薬の等価換算表 | ||
一般名 | 商品名 | 等価換算量 |
ジアゼパム | セルシン | 5mg |
アルプラゾラム | ソラナックス | 0.8 |
エチゾラム | デパス | 1.5 |
クロキサゾラム | セパゾン | 1.5 |
クロチアゼパム | リーゼ | 10 |
クロナゼパム | リボトリール | 0.25 |
クロバザム | マイスタン | 10 |
クロラゼプ酸二カリウム | メンドン | 7.5 |
フルタゾラム | コレミナール | 15 |
フルトプラゼパム | レスタス | 1.67 |
ブロマゼパム | レキソタン | 2.5 |
ロフラゼプ酸エチル | メイラックス | 1.67 |
ロラゼパム | ワイパックス | 1.2 |
こうしてみるとリボトリールの強さにビビる。
リボトリール錠2mg=デパス12mg とか
リボトリールは半減期が長く体内にとどまっている時間を考慮したらそうなるんだろうか?
ジアゼパムは使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない。
実施していない (`・ω・´)キリッ
じゃなく実施しろ
半世紀前の薬だから今更か
文献的には頻度が5%以上で出現する副作用はない
ジアゼパムの分解はほとんど肝臓のCYP2C19と呼ばれる酵素によって処理される。
この酵素は喫煙によって増えるので、喫煙者はセルシンが効きにくい。
ジアゼパムは経口でも急速に消化管より吸収される。
そして1時間ちょっとで最高血中濃度に到達するので即効性がある。
しかし半減期が50時間以上もある。
更にジアゼパムは肝臓で代謝されるとデメチルジアゼパムという活性代謝物が生成される。
この物質も半減期が2–5日と更に長い。ジアゼパムの作用時間は長い。
よってジアゼパムは体内動態的には二相性を示す。
オーストラリア分類:C
医薬品としての作用によって、胎児や新生児に可逆的な傷害を与えるか、与える可能性がある薬物。奇形を発生させることは無い。
ベンゾジアゼピン系が催奇形性を有するとの報告はこれまでのところ無いし先天リスク3%を上昇させるというデータも無い。しかし安心して積極的に使いたいという薬でもない。
妊娠前からジアゼパムを服用していて休薬自体がリスクとなると主治医が判断したなら継続服用もありえる。
併用禁忌
ノービア(一般名:リトナビル)
CYPにおける競合阻害によりジアゼパムの血中濃度が著しく上昇する
併用注意
区分 | 代表的な薬 | リスク | 機序 |
中枢神経抑制剤 | フェノバール | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | 相互に中枢神経抑制作用を増強 |
アルコール | ストロングゼロ | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | 中枢抑制と肝での負担増 |
シメチジン | タガメット | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | クリアランス低下で血中濃度↑ |
オメプラゾール | オメプラール | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | クリアランス低下で血中濃度↑ |
シプロフロキサシン | シプロキサン | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | クリアランス低下で血中濃度↑ |
フルボキサミンマレイン酸 | ルボックス | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下 | 相互に中枢神経抑制作用を増強 |
ダントロレン | ダントリウム | 筋弛緩作用が増強 | 相互に筋弛緩作用を増強する |
ジアゼパムはベンゾジアゼピン系薬の基本薬。
BDZ初発であるクロルジアゼポキシドの改良版だが完成度が高く世界中で愛用されている。剤形を見ても錠剤だけでなく散剤、液剤、座薬、筋注、静注、点滴注とオールマイティ
ジアゼパムを基本として新たな精神安定剤や睡眠薬も開発された。武田薬品はジアゼパムの構造を改良して長時間作用タイプの睡眠薬ユーロジンを開発。
そんな皆に愛されているジアゼパムだが日本では愛され過ぎて過剰処方になっている事で厚生労働省は抑制する方針を打ち出している。3剤以上の同種薬を処方すると病院の点数を減らすとか
たしかに使い過ぎると依存性があるしよろしくない。困った時にここぞっていう場面で使おう。
サラリーマンは疲れたらアップ系の栄養ドリンクを飲み残業に耐え緊張する重要な会議前にはジアゼパムを服用し精神を落ち着かせて臨む。
スナイパーもサラリーマンも命懸け
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