【エーザイ】デエビゴとベルソムラの決定的な違いは2つ 【MSD】

商品名 ベルソムラ デエビゴ
スボレキサントの構造式 レンボレキサントの構造式
一般名 スボレキサント レンボレキサント
承認 2016年 2020年
開発 米メルク エーザイ
製造販売 MSD エーザイ
用法 就寝直前
用量 成人:20mg 成人:5mg
高齢者:15mg
禁忌 CYP3Aを強く阻害する薬剤 重度の肝機能障害
併用禁忌薬 イトラコナゾール
クラリスロマイシン
リトナビル
ネルフィナビル
ボリコナゾール
慎重投与 ナルコレプシー
カタレプシー
脳に器質的障害のある患者
重度の呼吸機能障害 中等度及び重度の呼吸機能障害
重度の肝機能障害 軽度及び中等度の肝機能障害
高齢者 重度の腎機能障害
半減期 約12.5時間 50時間

昔は不眠症にバルビツール酸系睡眠薬が使われていたが過量に服用するとリアルであの世逝きになるのでより安全な睡眠薬であるベンゾジアゼピン系が開発された。

 

そのBDZは確かに安全だが依存性や筋弛緩作用といったリスクが残っている。更に安全で自然な眠りが得られる睡眠薬が欲しい。

 

そういった声に応えて2016年に登場したのがベルソムラ。

BDZ系と比べて依存性や嗜好性が少なく向精神薬ではなく普通薬なので使い勝手が向上。BDZ嫌いな医師から熱い支持を得る事に成功。

 

そんな成功を隅っこで指をくわえて眺めていたエーザイが二匹目のドジョウを狙って開発したのがデエビゴ

 

 

何語かな?

 

ベルソムラも発売された当初は奇妙な名前だと思っていたが更に上が登場した。

調べてみるとデエビゴという名称の由来は

 

Day(日中)+Vigor(活力)+Go(ready to go)

 

何で睡眠薬飲んで日中の活力がGOしちゃうんだろうか

 

デエビゴの作用機序

デエビゴの作用機序

オレキシンは日中の意識覚醒を維持するホルモン。

デエビゴはそのオレキシンを邪魔する事により覚醒レベルを低下させ自然な睡眠を促す

なので無理やり寝付かせるこれまでの薬とは作用機序が違う。

 

オレキシン受容体にはOX1RとOX2Rのサブタイプが発見されているがデエビゴは両方ともに親和性がある。ベルソムラも

 

オレキシン受容体に対する選択性
IC50(nmol/L)
受容体 ベルソムラ デエビゴ
OX1R 8.8±2.5 6.1±1.4
OX2R 12.0±2.8 2.6±0.4

*数値が小さいほど受容体への選択性が高い

オレキシン受容体はOX1RとOX2Rがある。

2の方が睡眠・覚醒リズムの調節や覚醒からnon-REM睡眠への移行により重要な役割を担っているということが示唆されている。

 

オレキシン受容体2への選択性は

ベルソムラ<デエビゴ

 

ただしこれは試験管レベルでの話なのでこの差が臨床効果として差が出るかは不明。

 

臨床試験
客観的睡眠潜時(LPS)
投与1日目 偽薬 マイスリー6.25mg デエビゴ5mg デエビゴ10mg
BL平均値 43.89 44.52 44.86 44.61
平均変化値 -6.45 -12.56 -16.59 -19.48
客観的評価による睡眠効率(SE)
偽薬 マイスリー6.25mg デエビゴ5mg デエビゴ10mg
BL(%) 68.89 68.13 68.36 67.85
平均変化量 5.16 12.12 14.16 16.76

*LPS:消灯から20エポック(30秒1エポック)連続した非覚醒状態の最初のエポックまでの時間(分)

SE:総就床時間に対する総睡眠時間(割合)

BL:ベースライン

 

客観的睡眠潜時は布団に入ってから実際に睡眠に入るまで時間。この時間が短いと寝付きが良いとなる。

デエビゴの標準量5mgを服用するとそれまでより16分早く寝付くという事が示唆されている。マイスリーよりも若干寝付きを良くする

 

睡眠効率は布団に入っている時間で実際の睡眠時間を割った割合。

100%ということは布団に入った瞬間寝るということ、そんな人間はのび太しかいないが

睡眠効率が高いとシッカリ寝た感が起床時に得られるので満足感に繋がる。

この項目でもデエビゴ5mgは偽薬と比べて有意な差がある。

 

腎機能障害
対象 重度腎機能障害患者(CLcr:30mL/min/1. 73m2以下)
健常人比 ベルソムラ デエビゴ
Cmax +15% +5%
AUC +22% +50%

デエビゴには重度の腎機能障害患者に対して慎重投与の指定がある。

ベルソムラには無い。

 

根拠となった臨床試験ではデエビゴは健常人に対して1.5倍の血中濃度に上昇した。

なので気を付けて使用しましょうという事になった。

 

透析患者さんの不眠に対してはベルソムラを選んだ方が無難

 

高齢者
ベルソムラの高齢者データ
スボレキサント40mg
健康成人 高齢者
投与量 40mg
Cmax 1として 23%増
AUC(0-24h) 1として 68%
半減期 49.6時間 60.1時間
デエビゴの高齢者データ
投与量 レンボレキサント25mg
  健康成人 高齢者
Cmax 1として 18%増
AUC(0-24h) 1として 18%増
半減期 49.6時間 60.1時間

ベルソムラは高齢者に慎重投与だがデエビゴにはその記載が無い。

 

その根拠となった試験結果を比較するとベルソムラは成人に対してAUCが68%も増えている。デエビゴは18%

血中濃度がそのまま素直に副作用として現れるわけではないが慎重投与に値する。

 

老齢者に対してより注意な薬はベルソムラ

 

副作用の違い
国際共同第Ⅲ相試験
ベルソムラ デエビゴ
総症例数 254例 884例
種類・頻度
1位 傾眠(4.7%) 傾眠(10.7%
2位 頭痛(3.9%) 頭痛(4.2%)
3位 疲労(2.4%) 倦怠感(3.1%)

デエビゴはベルソムラに対して傾眠の副作用が2倍強となっている。

 

これはデエビゴの半減期が50時間でベルソムラの4倍という事がそのまま反映されている。

この傾眠という副作用は主作用の延長線上にあるので一概に悪いとは言えない。

仕事や学校がある人は日中の眠気で困るが働いていない高齢者で睡眠時間をタップリ取りたい時にはデエビゴも選択肢としてあり得る。

 

ベルソムラは中時間タイプの睡眠薬だがデエビゴはより長いタイプの睡眠薬かもしれない。

 

併用禁忌薬の違い

ベルソムラもデエビゴも代謝酵素CYP3Aで代謝される。

しかし代表的なCYP3A4阻害薬である抗生物質クラリスロマイシンを併用する時の対応が異なる。

 

[これまでの例]

普段精神科で不眠のためにベルソムラ錠20mgを服用している人がピロリ菌検査をした所、陽性反応が出て除菌治療することになった。

ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシンを消化器内科クリニックで処方された。

しかし

クラリスロマイシンはベルソムラと併用禁忌で一緒には服用できない。

ベルソムラの代替薬となるオレキシン拮抗薬は無いができるだけBDZ作動薬は使いたくないし・・・

 

これまでオレキシン拮抗薬はベルソムラしか存在しなかったので代替薬が無かった。

しかし類薬のデエビゴが登場したのでピロリ菌治療中は

ベルソムラ錠20mg→デエビゴ錠2.5mgに変更することが可能。

 

併用禁忌薬が無いデエビゴは治療の選択肢を増やすというだけでも存在価値がある。

 

まとめ
  • デエビゴにはベルソムラと違い併用禁忌薬が無い(2020年1月時点
  • デエビゴの半減期はベルソムラの4倍あり傾眠の副作用が2倍
  • ベルソムラは高齢者に注意
  • デエビゴは腎機能障害に注意

 

 

演習問題

 

【エーザイ】デエビゴとベルソムラの決定的な違いは2つ 【MSD】” への2件のフィードバック

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)