【企業分析】 バイエル:モンサントという爆弾

バイエルは痛み止めのアスピリンを販売している製薬会社として世界的に知られている。

バイエルの会社としての起源はノバルティスと同じく染料業
染料はそれ自体が薬効を持つ物質が多く製薬業と親和性が高い

しかしバイエルは製薬分野だけではなく農薬部門、動物医薬品部門、OTC部門なども持つ

ノバルティスやアストラゼネカが農薬部門を売却して医療用医薬品に専念しているのとは対照的にバイエルは米モンサントを660億ドルで買収したり農業分野でも存在感を増している。

 

しかしそのモンサントの買収がバイエルへの投資の大きなリスクともなっている。

 

 

バイエルの歴史

 

1863年:フリードリヒ・バイエルとヨハン・フリードリヒ・ウェスコットがヴッパータールに染料フクシンを製造するための工場を設立しバイエルの歴史が始まる。

1881年:社名をファーベンファブリケン株式会社に変更

1888年:それまでは染料や化学品中心だったが医薬品部門が作られる。
1889年:咳止めとしてヘロイン(一般名:3,6-ジアセチルモルヒネ)を開発

ヘロインはモルヒネをアセチル化したもの(アセチル化して脂溶性が高まり脳へ移行しやすい

1897年:フェリックス・ホフマンがサリチル酸をアセチル化してアスピリンの合成に成功
1899年:消炎鎮痛剤アスピリンが発売

アスピリンもサリチル酸をアセチル化して合成したもの(サリチル酸はそのままだと胃が荒れる

1912年:本社をレヴァークーゼンに移転

(レヴァークーゼンにあるバイエルの中華風日本庭園)

1913年:依存症などが問題となりヘロインの製造を停止
1914年:第一次世界大戦が始まり医薬品生産から兵器生産へ。塩素ガスやホスゲンを生産
1916年:抗原虫薬スラミンを開発

1917年:ロシア革命でロシュと同じくロシアにおける資産を失う。
1925年:ドイツの化学トラストであるIGファルベンの一部となる

医薬品にはブランド力のあるバイエルクロスを商標として使用。

1934年:抗菌薬プロントジルを合成
1937年:ポリウレタンをオットー・バイエル博士(バイエル家ではない)が開発

1939年:第二次世界大戦が始まる。最終的に4000人以上の強制労働者がIGファルベンの工場で従事
1944年:レバークーゼンの工場が空襲を受け操業停止
1945年:第二次世界大戦終結時に本社のレバークーゼンを英国が占拠していたので英国の支配下へ
1951年:新会社としてFarbenfabriken Bayer AGが設立
1953年:統合失調症治療薬Megaphen(一般名:クロルプロマジン)がドイツで販売
1957年:石油メジャーBPと石油化学ジョイントベンチャーを設立
1972年:社名をバイエルAGに変更

1973年:日本に進出、武田薬品・吉富製薬との3社合弁会社として
1975年:高血圧治療薬アダラート(一般名:ニフェジピン)を開発

1986年:抗菌薬シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)を開発

1990年:グルコバイ(一般名:アカルボース)を開発

1994年:米国内において「バイエル」の会社名が復活
1995年:関西サイエンスシティに研究拠点を設立
2000年:ライオンデルの一部事業を買収して世界最大のポリウレタン原料生産会社になる
2001年:サノフィの農薬部門を72億5000万ユーロで買収
2005年:ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)が腎細胞癌の治療薬として認可
2006年:独シェーリング社を買収 米シェーリング社は後に米メルクに買収される

2009年:抗凝固薬イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)を開発
2012年:加齢黄斑変性症治療薬アイリーア(一般名:アフリベルセプト)をRegeneron社と開発
2014年:ノルウェーの抗がん剤専門製薬会社Algetaを買収
2015年:素材科学事業を新会社コベストロとして売却

 

 

概要(2017年)

過去5年間の株価

 

モンサントの買収で株価は下落基調

 

 

本社所在地:レヴァークーゼン

上場している取引所:フランクフルト証券取引所
ティッカーシンボル:BAYN

売上:350億€
研究開発費:45億€
営業利益:59億€
純利益:73億€(子会社だったコベストロ関連の帳簿上利益を含む)
配当支払額:25億€

株価:66€
一株配当額:2.8€
配当利回り:4.2%

 

配当利回りは4%以上だがもしモンサント関連の賠償金が膨れ上がったら配当にも影響する。

 

年間売上

化学会社コベストロ、を連結から外した影響で売上は減少

 

 

営業利益

売上は下がっても営業利益は上昇

 

 

純利益

純利益は子会社の株式売却益等を含んでいる。

 

 

 

一株配当と配当総額

10年間で配当は二倍に、ペイアウトレシオも高くて7割とまだ余裕がある。何か大きなアクシデントが無ければ

 

 

地域別売上

共同開発した薬が米国では相手企業が販売している事もあり米国内での売上は少ない。

 

製薬部門はイグザレルトとアイリーアの2つが業績を大きくけん引している
しかしイグザレルトにはライバル薬が多い
アイリーアのライバルは今のところルセンティスしかないが長時間作用型タイプの新薬が出てきそうで安泰ではない。もう一つ柱となる薬が欲しい。

 

バイエルの売上トップ5(2017年)

 

1位:イグザレルト【32.9億€】
ワーファリンと違い納豆を食べられる抗凝固薬

2位:アイリーア【18.8億€】
滲出型の加齢黄斑変性症治療薬 白目に刺して注入 米リジェネロンとの共同開発

 

3位:コージネイト【9.6億€】

血友病治療薬 血液凝固第VIII因子の欠乏患者に

4位:ネクサバール【8.3億€】
腎細胞癌や肝細胞癌の治療に用いられる分子標的薬 MAPキナーゼカスケードを阻害し細胞増殖抑制

 

5位:アダラート【6.5億€】
高血圧治療薬でカルシウム拮抗薬。作用時間のアムロジピン 降圧力のニフェジピン

 

 

売上トップ5の推移

大昔に特許が切れているのに毎年5億€コンスタントに売れているアダラートの凄さ

 

 

過去に開発した薬

アベロックス(一般名:モキシフロキサシン塩酸塩):抗菌薬、目薬としてはベガモックス
エバミール(一般名:ロルメタゼパム)ワイスと共同開発した睡眠薬、穏やかな作用
エンペシド(一般名:クロトリマゾール)カンジダに起因する腟炎及び外陰腟炎に
シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン):ニューキノロン系抗菌薬
グルコバイ(一般名:アカルボース):食後血糖の吸収を阻害するがたまに屁が出る
コバールトリイ(一般名:オクトコグ ベータ):血友病治療薬でコージネイトの後継品
スチバーガ(一般名:レゴラフェニブ):大腸がんや肝がん治療に 一次治療では使えない
ゾーフィゴ(一般名:塩化ラジウム)世界初のα線放出による骨転移のある去勢抵抗性前立腺治療剤
バイアスピリン(一般名:アスピリン)痛み止めだけではなく血液サラサラ薬としても大活躍
バイミカード(一般名:ニソルジピン):カルシウム拮抗薬で血圧を下げる
ベタフェロン(一般名:インターフェロン-β-1b):多発性硬化症の再発予防及び進行抑制
ホスレノール(一般名:炭酸ランタン)慢性腎臓病:透析患者の血中リン濃度を下げる。
ヤーズ(一般名:ドロスピレノン):月経困難症(保険適用) 薬理的には避妊効果やニキビにも
レビトラ(一般名:バルデナフィル):バイアグラの次世代版 1時間前に

 

 

そもそもモンサントって何?

 

7兆円という巨額を費やしてバイエルが手に入れたのがモンサントという農薬会社。

 

どんな会社かというと1901年に創業。最初の商品は甘味料のサッカリン。そして偶然かもしれないがモンサントも過去にバイエルと同じくアセチルサリチル酸(アスピリン)を製造販売していた。ここまではいいんだが地球環境にとってよろしくないポリ塩化ビフェニル(PCB)も生産。

 

ベトナム戦争時には米軍に枯葉剤を供給した会社の一つとなりベトナムで膨大な被害者を創り出すことに貢献。数十万の新生児が肢体や目、その他に障害を持って生まれてた。

 

そして農薬ラウンドアップ。ラウンドアップの主要成分であるグリホサートに発がん性があっとの訴えがあり学校の校庭を整備していた作業員がカリフォルニア州の裁判所で勝訴した。この人だけなら良いのだが他にも訴えが出てくるだろうし賠償金の総額が不透明。

 

モンサントという企業は地球環境に百害あって一利なしなイメージ。なのでそんなイメージ最悪の「モンサント」という看板をこれからバイエルは使わないらしい。

 

しかしこれまでモンサントに向けられていた負のエネルギーは買収してしまったバイエルがすべて背負っていくことになる。

 

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