サノフィ最大のヒット商品はランタスというインスリン製剤
インスリンだけでなく経口の糖尿病治療薬グリメピリドなどDM分野に強みがある。
しかしランタスは特許が切れてバイオシミラーが他社から発売され売り上げは下降気味。
なので糖尿病分野だけでなく多発性硬化症や血友病、デュピクセントのようなアトピーや喘息分野など様々な疾患に投資している。
サノフィという名称自体は1973年にフランスの石油会社エルフアキテーヌの子会社として誕生してから使われているがその歴史は世界的な製薬会社としては比較的浅い。
しかしサノフィがこれまで買収や合併をしてきた企業には100年以上の歴史をもつ企業もある。最古の企業は300年前の1718年創業と江戸時代から続いている。
買収した数ある製薬会社でもドイツのヘキストはサノフィにとって重要な企業でドイツ初のインスリン「インスリンヘキスト」を製造した。
他にも様々な企業を買収・吸収してきた。有名なのは化粧品メーカーのロレアルの子会社
ロレアルの子会社「サンテラボ」を吸収し一時社名をサノフィ・サンテラボとしていた時期もある。
そんな経緯があり現在のサノフィの筆頭株主はロレアル。
サノフィという会社は石油、化学、化粧品、それぞれのTOP企業の集合体
動物医薬品事業はドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイムとの事業交換で整理した。
なので今のサノフィの事業は3つ
製薬、ワクチン、一般用医薬品
ワクチン事業はサノフィパスツールとして世界的にも有名
複雑な成り立ちの会社なので分かりやすい図が↓
現在のサノフィを主に形作っているのは
「サノフィ」「ヘキスト」「ローヌ・プーラン」「サンテラボ」の4つの製薬会社
歴史
1718年:後にサノフィに買収されるLaboratoires Midyが薬剤師により設立
1860年:薬剤師のエティエンヌ・プーランクがWittmann et Poulenc Jeuneを創設
1863年:ヘキストが染料会社としてフランクフルトに設立
アム・マインにあるHochstという小さな町に工場を設立
赤色染料アリザリンや緑色染料であるアルデヒドグリーンを合成
1883年:ヘキストが解熱鎮痛薬アンチピリンを開発
1885年:ルイ・パスツールが狂犬病ワクチンを開発
1904年:アドレナリンを合成することにヘキストのフリードリヒが成功
1910年 :梅毒の特効薬サンバルサンをヘキストが開発
1923年:ドイツで初のインスリン製剤「インスリンヘキスト」を発売
1928年:化学薬品、繊維、医薬品の製造業者としてローヌ・プーランが設立
1937年:オピオイド鎮痛薬メサペイン(一般名:メタドン)の合成にヘキストが成功
1939年:サンテラボがDelagrange Laboratoriesを買収
1939年:鎮痛薬オピスタン(一般名:ペチジン)をヘキストが開発
1950年:抗精神病薬クロルプロマジンをローヌ・プーランが開発
1953年:長時間作用型インスリンをヘキストが初めて開発
1964年 :ループ系利尿剤ラシックス(一般名:フロセミド)をヘキストが開発
1965年:吐き気止めプリンペランが発売
1966年:不整脈治療薬アンカロン(一般名:アミオダロン)をラバス研究所が開発
1968年:抗がん剤ダウノマイシン(一般名:ダウノルビシン)をローヌ・プーランが開発
1970年:サンテラボ誕生
Dausse(1834年設立)とRobert&Carriere(1899年設立)の合併により設立
設立されてロレアルの子会社となる
1970年:抗がん剤ブレオ(一般名:ブレオマイシン)を開発
1973年:サノフィが創設
製薬グループLabazをフランスの石油会社Elf Aquitaineが買収して誕生
1973年:ダウノルビシンの発見に対してガリアン賞をローヌ・プーランが受賞
1975年:香水メーカーのロジェ・ガレを買収(現在はロレアルの子会社)
1980年:狭心症治療薬ヘルベッサー(一般名:ジルチアゼム)をサンテラボが開発
1987年:抗血小板薬パナルジン(一般名:チクロピジン)でガリアン賞を受賞
1988年:マクロライド系抗生物質ルリッド(ロキシスロマイシン)をルセル・ユクラフが開発
1992年:ハンガリーの製薬会社Chinoinの支配権を取得し東欧へ進出
1994年:サノフィが製薬会社Sterling Winthropを買収し米国市場に参入
1995年:ヘキスト・マリオン・ルセル誕生
ヘキストとルセル・ユクラフ、マリオン・メレル・ダウとの合併で
ヘキストの化学事業はスイスの特殊化学会社クラリアントへ売却される
1996年:抗がん剤タキソテール(一般名:ドセタキセル)を開発
1997年:降圧剤ARBイルベタン(一般名:イルベサルタン)を開発
1997年:フェキソフェナジン(和名:アレグラ)を開発
日本の市販薬としては久光製薬が販売
1997年:プラビックス(一般名:クロピドグレル)をBMYと共同開発
1999年:ローヌ・プーラン・ローラーとヘキスト・マリオン・ルーセルが合併しアベンティス誕生
2000年:長時間作用型インスリンでサノフィ最大のヒット商品ランタスを開発
2004年:サノフィ・アベンティス誕生
サノフィ・サンテラボ社がアベンティス社を吸収合併した。
数年後社名からアベンティスという名前は消えた
2011年:希少疾患バイオテクノロジー企業ジェンザイム・コーポレーションを買収
2012年:多発性硬化症治療薬オーバジオ(日本未承認)を開発
2017年:アトピー治療薬デュピクセント(一般名:デュピルマブ)をリジェネロンと共同開発
過去5年間の株価
本社所在地:パリ
株式上場している取引所:ユーロネクストおよびニューヨーク証券取引所
ティッカーシンボル:SANおよびSNY
売上:362億€
研究開発費:54億€
営業利益:58億€
純利益:84億€
配当支払額:37億€
株価:79€
一株配当額:3.03€
配当利回り:3.83%
年間売上
抗血小板薬プラビックスや抗がん剤タキソテールの特許切れに伴う落ち込みをランタスの伸びが補う
しかしそのランタスも特許切れに伴いイーライリリー等からバイオシミラーが発売されており苦境に
営業利益
純利益
一株益と一株配当
減配の可能性は少ないが大幅な増配の余地も少ない
ランタスの次を薬を早く準備しないといけない
地域別売上
最大の市場は米国だがランタス特許切れによりシェアは落ちていくと思われる。
事業内容
糖尿病分野はこれまでランタス&アマリールでサノフィの柱だった。しかしその2つは特許切れ
これからは利幅が大きく特許切れの影響が比較的小さいワクチン事業が利益を出していく上で重要
一般用医薬品事業も順調に伸びている。
ワクチン事業の売上
OTC売上
花粉症の時期に売上好調なアレグラFX
日本では久光製薬から発売されている。アレグラは既に特許が切れており医療用医薬品アレグラの年間売上は1.58億€だがOTCアレグラは4.23億€
1位:ランタス【36.1億€】
2位:クレキサン【15.7億€】
一般名:エノキサパリン、ヘパリンの親戚で静脈血栓塞栓症の発症抑制
3位:オーバジオ【15.3億€】
経口の多発性硬化症治療薬、日本では未承認
4位:プラビックス【14.7億€】
BMYとの共同開発の血液サラサラ薬、代謝するときに遺伝多型があり効果に個人差がある
5位:ランタスXR【7.3億€】
海外での商品名はToujeo 普通のランタスより更に一定の血糖値コントロールが可能
売上トップ5の推移
XRを合算してもランタスの売上減少を補えていない。
プラビックスは特許切れでも1000億円を軽く超えている。
このグラフにはないが糖尿病治療薬アマリールも特許切れにもかかわらず500億円弱毎年売れている
オーバジオはピーク時に年間3000億円の売上も狙える。
アウドラザイム(一般名:ラロニダーゼ):ムコ多糖症I型の治療に ジェンザイム製
アピドラ(一般名:インスリングルリジン):超速効型インスリン
アプルウェイ(一般名:トホグリフロジン):リンゴの皮から開発された糖尿病治療薬
アモバン(一般名:ゾピクロン):ローヌ・プーラン社が開発した非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
アンカロン(一般名:アミオダロン):抗不整脈薬クラスⅢ 日本では毒薬
インタール(一般名:クロモグリク酸Na):喘息の医師が自ら発見した喘息治療薬
エラプレース(一般名:イデュルスルファーゼ):ムコ多糖症II型治療剤
ケブザラ(一般名:サリルマブ):リウマチ治療薬 Regeneron社と共同で開発
ザルトラップ(一般名:アフリベルセプトβ):癌の血管新生を阻害する抗VEGF阻害薬
ジェブタナ(一般名:カバジタキセル):タキサン系抗がん剤
セレザイム(一般名:イミグルセラーゼ):ゴーシェ病治療 ジェンザイム製
セロクラール(一般名:イフェンプロジル)脳循環代謝改善剤 サンテラボが開発
タキソテール(一般名:ドセタキセル):抗がん剤、タキソールではない
ダオニール(一般名:グリベンクラミド)糖尿病治療薬。SU剤でヘキストが開発
デュピクセント(一般名:デュピルマブ):アトピー治療初の抗体医薬品
ディレグラ(一般名:フェキソフェナジン/プソイドエフェドリン):鼻づまりスッキリ、劇薬
パナルジン(一般名:チクロピジン)血液サラサラ薬、使い始めは肝機能検査を受けよう。
ファブラザイム(一般名:アガルシダーゼβ):ファブリー病治療薬 ジェンザイム製
プラルエント(一般名:アリロクマブ):高脂血症治療薬でPCSK9モノクローナル抗体
ポラキス(一般名:オキシブチニン):頻尿や尿漏れに
マイオザイム(一般名:アルグルコシダーゼα):糖原病II型治療薬 マリオではない
マブキャンパス(一般名:アレムツズマブ):白血病治療薬 欧米ではMSにも
ラシックス(一般名:フロセミド):強力な利尿剤、ドーピングを誤魔化すためのマスキング剤としても使われる。競走馬にも国によっては使用されることがある。なぜ使用するかというと競争中の鼻出血を予防する作用があるから、競走馬は口呼吸できず鼻呼吸のみなので致命傷になる場合がある。米国と欧州でラシックスに対するスタンスが違い米国は使用に寛容。
リスモダン(一般名:ジソピラミド)抗不整脈 ルセル・ユクラフ社が開発
サノフィは高い研究開発力と幅広い商品ポートフォリオも持っている。
ここ数年メガファーマは一般用医薬品事業を強化するか売却して医療用医薬品事業に専念するかの選択をしてきたがサノフィは一般用医薬品事業を強化する道を選んだ。ワクチン事業は元から同社の強みで更に強化していく。
医療用医薬品事業はランタスの特許切れに伴う売上減少幅を如何に小さくするかが重要。ランタスXRへの切り替えは行われているがイーライリリーのバイオシミラーも伸びていてパイの取り合い。
しかし逆にサノフィはヒューマログのバイオシミラーがFDAに承認されたので互角の勝負、それにサノフィは経口の糖尿病治療薬ソタグリフロジンもある。SGLT2とSGLT1の両方を阻害する最初のクラスとなる予定。そしてノボノルディスクの次世代大型薬オゼンピックのライバルとなるはずの長時間作用型GLP-1作動薬efpeglenatideも控えている。
抗体医薬品開発も順調に進んでおり日本でもアトピー性皮膚炎治療薬デュピクセントやリウマチ治療薬のケブザラが発売された。多発性硬化症治療薬も既に発売されているオーバジオや治験中の薬も含めて売上的に期待ができる。
自社開発だけでなく1兆2000億円で買収したバイオベラティブ等買収も巧みな企業。
サノフィはこれからも総合バイオテクノロジー企業として新薬を開発していく
2003年に1万ドルをサノフィADRに投資していたら2018年には26060ドルになっている。
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