活性型ビタミンD製剤の違い |
骨は常に破壊と創造が行われている。
破骨細胞で破壊され骨芽細胞で創造される。
破壊と創造が同じ頻度なら骨は一定の強度に保たれるが破壊が過ぎると骨がボロボロになり骨粗しょう症になる。
骨粗しょう症の原因は一つでは無く複合的なものだが骨の原材料であるカルシウムが不足すると骨粗しょう症のリスクは確実に上昇してしまう。
活性型ビタミンD製剤の主な作用機序は小腸でのカルシウム吸収を促進して骨粗しょう症を予防する。
経口薬だと主にアルファロール、ロカルトロール、エディロールの3品が2020年の臨床で使われている。
2020年にエディロールの後発品が発売されてから3つとも経済的な負担が少なく使えるようになった。
骨粗しょう症治療のガイドライン |
3剤に劇的な違いは無いが骨密度の上昇と錐体骨折の予防という点でエディロールは他の二剤よりも優れた効果を持つ。
ただエディロールは効果が高い反面、高カルシウム血症になるリスクもある。高齢者になればなるほどそのリスクは上昇する。
骨粗しょう症という病態はほぼ高齢者だから使うなというのは無理だが90歳以上だとメリットよりデメリットが大きい。
尿路結石の既往歴があるとカルシウム濃度が上昇すると再発しやすくなるので活性型ビタミンD製剤は避けた方が良い。
重篤な副作用だと高カルシウム血症に付随する腎不全のリスクがある。服用中に吐き気が起きたら高カルシウム血症の可能性を疑い検査するべきである。
ビタミンDの活性化経路 |
一番良く処方されているアルファカルシドールは体内で変換されてから効果を発揮する。具体的には肝臓で代謝酵素CYP27A1とCYP2R1により25位が水酸化されてカルシトリオールとなる。
ロカルトロールの主成分であるカルシトリオールは活性型ビタミンDそのものである。なので代謝酵素の必要は無い。そのまま薬理作用を発揮できる。
エディロールは活性型ビタミンDを更に化学修飾して骨代謝調節機能を向上させた。エディロールはRANKL細胞という破骨細胞に必須なものを邪魔するという作用も持つ。
アルファロール[一般名:アルファカルシドール]
- 体内で構造が変換されるプロドラッグ
- 肝臓で25位が水酸化を受けてから活性型となる
- 代謝を受けてロカルトロール(カルシトリオール)になる
- 骨折予防効果と転倒予防効果に定評
- カプセル以外に散剤や内用液もあり剤形が豊富で便利
- 3剤で唯一内用液があり小児に使える
- 日本で頻用
ロカルトロール[一般名:カルシトリオール]
- 活性型ビタミンDそのもの
- なので肝臓での水酸化を必要とせず直接作用する
- ビタミンDの最終活性体でありアルファロールの代謝物
- 注射剤がある
- 骨粗しょう症だと1日2回服用なのは不便
- 欧米で頻用
エディロール[一般名:エルデカルシトール]
- 活性型ビタミンDの誘導体
- 大腿骨近位部の骨密度上昇を証明した初めての活性型VD製剤
- 圧迫骨折予防のエビデンスあり
- 他の二剤よりも骨粗しょう症において優位な効果
- その反面、高Ca血症も起こりやすい
- 破骨細胞に必要なRANKL発現細胞数を減少させる
- ミニモデリングと呼ばれる骨形成作用がある
- カルシトリオールの2β位にヒドロキシプロピルオキシ基を導入して骨代謝調節作用を強化
- 保険適応は骨粗しょう症のみ