商品名 | レグパラ | オルケディア |
一般名 | シナカルセト塩酸塩 | エボカルセト |
承認年 | 2008年 | 2018年 |
製造販売 | 協和キリン | |
作用機序 | カルシウム受容体作動薬 | |
効能効果 |
①維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症 | |
②副甲状腺がん or 副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症高カルシウム血症における高Ca血症 | ||
代謝CYP | 3A4 | 無 |
阻害CYP | 2D6 | 無 |
併用禁忌 | 無 | |
妊婦 | △ | 禁忌 |
授乳中 | △ | ▲ |
△:有益性がリスクを上回ると判断されるときは投与可能
▲:授乳しないことが望ましい
レグパラもオルケディアも効能効果は同じで過剰に放出された副甲状腺ホルモンを低下させる。
しかしオルケディアは2018年に新発売された比較的新しい薬。2008年にレグパラが発売されその10年後にオルケディアが発売された。
なのに同じ効果だったら「お前、いまさら何しに来たんだ?」という感じで意味が無い。
なので10年後に敢えて発売されたオルケディアにはレグパラにはない長所がある。
じゃあこの2つの薬のどこが違うねんて話の前に適応症の二次性副甲状腺機能亢進症てなんやねんて話やが・・・
不運にも腎臓を悪くして腎不全になってしまった人は体内に溜まった老廃物を除去するために透析という機械で血液をろ過する。
しかしリン(P)という物質はどうしても除去しきれず体内に留まりやすい。正常腎臓の6~7割しかリンを除去できないからどんどん溜まっていく。
肉などのたんぱく質にはどうしてもリンが含まれているしインスタントラーメンなどの加工食品にもリンはタップリ入っているから透析を受けている人は普通の食生活しててもリンが溜まりやすい。
それでリンが体内にたくさんあると血中のカルシウムとそのリンが結合する。そしてリン酸カルシウムというものができる。
そのリン酸カルシウムの原料として使われた血中カルシウムの濃度が低下する。
人体には増えたら減らす、減ったら増やすというようにバランスを取っている仕組みがある。この血中カルシウム濃度のバランスを取っているのが副甲状腺ホルモン。
この副甲状腺ホルモンは血中カルシウム濃度が低くなると出現する。そして血中のカルシウム濃度を上昇させる。
どうやって血中カルシウム濃度を上昇させるかと言えば骨のカルシウムを溶かす。そして骨のカルシウムを血中に移行させる。
カルシウムを取られた骨はスカスカになって骨がもろくなる。→骨粗しょう症へようこそ
そして骨以外にもリスクは高くなる。
リンとカルシウムが結合してできたリン酸カルシウムは血管や心臓に沈着して石灰化する。心臓が石灰化したら怖い。これを異所性石灰化という。
ごちゃごちゃ言っているが要するに副甲状腺ホルモンが多いと人体によろしくないから副甲状腺ホルモンを下げようという時に使われるのがレグパラとオルケディア。
作用機序は2つとも共通で副甲状腺に存在するカルシウム受容体に作動して副甲状腺ホルモンをもう放出するなと指示する。
維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症
商品名 | レグパラ | オルケディア |
用法① | 1日1回 | |
開始量① | 25mg | 1mg |
1日最大量① | 100mg | 12mg |
増量間隔 | 3週間以上 | 2週間以上 |
開始時Ca濃度 | 9.0mg/dL以上 | 8.4mg/dL以上 |
利休
透析患者さんの副甲状腺ホルモンを抑える時に使用する場合は2つとも1日1回でいいんじゃな。
用法は共通です。そして2つとも開始量が設定されています。
織部
利休
いきなり治療量というワケにはいかんのじゃな。
レグパラは吐き気など消化器系の副作用が目立つのでいきなり高用量を服用すると副作用のリスクが高まります。
織部
利休
徐々に増やすのは共通じゃがレグパラは増量間隔が3週間なのにオルケディアは2週間でいいんじゃのう。
開始時の血清カルシウム濃度の下限もレグパラの9.0mg/dL以上に対してオルケディアは8.4mg/dL以上と制限が緩く設定されています。
織部
利休
効果が同じと担保されているなら制限は緩い方が処方する方は使いやすいのう。
商品名 | レグパラ | オルケディア |
代謝されるCYP | 3A4 | 無 |
阻害するCYP | 2D6 | 無 |
併用禁忌 | 無 | |
併用注意 |
ビスホスホネート製剤、カルシトニン、副腎皮質ホルモン、ジギトキシン、ジアゼパム | |
アゾール系抗真菌剤 | デノスマブ | |
マクロライド系抗生物質 | テオフィリン | |
アミオダロン | ||
グレープフルーツジュース | ||
三環系抗うつ薬 | ||
ハロペリドール | ||
フレカイニド | ||
ビンブラスチン |
利休
レグパラは併用薬で注意するべき薬が沢山あるのう。
レグパラはCYP3A4で阻害される薬ですが同時にレグパラ自身はCYP2D6の基質でもあります。
織部
利休
するってぇとつまり?
グレープフルーツジュースなどCYP3A4を邪魔するものはレグパラの代謝が邪魔されてレグパラの血中濃度が高まります。しかしレグパラは同時にCYP2D6を邪魔するので咳止めのメジコンとかCYP2D6で代謝される薬の代謝を邪魔してしまってメジコンの血中濃度を上昇させてしまいます。
織部
利休
2D6で代謝される薬なんて星の数ほどあるのう。
添付文書の併用注意欄には記載されていませんがCYP2D6で代謝される抗うつ薬パキシルとの併用は注意がいるかもです。
織部
利休
パキシルは自己代謝を阻害する気難しい薬じゃからそこにCYP2D6を邪魔する薬が入ってくると吐き気が強まりそうじゃのう。
色々併用薬で気を使うレグパラに対してオルケディアはCYPの影響をほぼ受けないので併用注意薬が少ないです。レグパラに無くてオルケディアにある併用注意薬はデノスマブとテオフィリンの2剤です。
織部
利休
なんでテオフィリンとオルケディアは併用注意なんじゃ?
テオフィリンの血中濃度が上昇するようですがその作用機序は不明との事です。
織部
利休
とりあえず2つとも併用禁忌薬は無いのは助かるのう。
商品名 | レグパラ | オルケディア |
低カルシウム血症 | 13.7% | 16.2% |
悪心 | 11.4% | 5.0% |
嘔吐 | 6.0% | 4.4% |
腹部不快感 | 9.1% | 3.2% |
QT延長 | 5.3% | 0.6% |
オルケディアはレグパラの消化器系副作用を減らそうと開発された薬です。なので吐き気や嘔吐などの副作用はレグパラよりオルケディアの方が少ないです。
織部
利休
オルケディアが出る前は気持ち悪くなっても根性でレグパラを飲むしか無かったからのう。そこは大きなメリットじゃ。
ただそれよりも大きな違いがQT延長という副作用頻度です。
織部
利休
QP人形?
不整脈の一種です。QT延長は命に係わる深刻な副作用で怖いです。それがレグパラよりも頻度が少ないというのは助かります。
織部
利休
吐き気止めのドンペリドンにもQT延長の副作用があるからレグパラの吐き気にドンペリドンとか処方されたら嫌な予感がするのう。
ただQT延長は直接レグパラが起こすのではなく血清カルシウム濃度の低下と負の相関という報告があるので血清カルシウム濃度をコマメにモニタリングして使っていけばそこまで恐れる必要は無いです。
織部
利休
血液検査は大事じゃのう。
- 治療効果はほぼ同じ(非劣勢)
- オルケディアはCYPの関与が無いので併用薬の制限が少ない
- 2つとも併用禁忌が無い
- テオフィリン服用中だとオルケディアは注意
- オルケディアはレグパラよりも消化器系の副作用が少ない
- 不整脈のリスクもオルケディアの方が少ない
- オルケディアは妊娠中だと禁忌