製薬会社:ユリアック
一般名:ルパタジン
薬価:69.4円
新登場の薬なのに薬価が安い。アレジオンの10mgよりも安い。
2017年に新作用機序の抗アレルギー剤として発売された。しかし物質としては1994年に合成された薬なので世界的には新薬ではない。
開発したのはスペインの製薬会社ユリアックで日本では田辺三菱製薬が販売を行っている。田辺三菱としては特許が切れたタリオンの次として期待している。抗ヒスタミン薬は差別化が難しいが新しい作用機序というのは医師にアピールしやすいかも。
Rupatadine と PAF(platelet activating factor:血小板活性化因子)、IN(Inhibition:抑制)に由来
アレルギー性鼻炎
蕁麻疹
皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒
アレルギー性鼻炎に対しては1日一回継続服用で1年間効果が続く。
肥満細胞から放出されたアレルギー反応を引き起こす原因物質の一つであるヒスタミンを受容体レベルでブロック。
そして血小板活性化因子(PAF)という炎症反応に関わっていると考えられている物質もブロックと2つの経路に作用している。
血小板活性化因子とは?
炎症や痛みが発生したときに存在する生理活性物質脂質メディエーターで白血球や血管内皮細胞、血小板から放出される。ルパタジン以外の抗アレルギー薬にも少なからず抗PAF作用があるようだが・・・このPAFに対しての効果を売りにした薬というのはこれまで無かった。
ヒト好中球走化性反応に対する作用
好中球は炎症部位に最初に発現する細胞。PAF 及び LTB4により誘発される好中球の走化性反応に対するルパタジンの作用が↓
PAF 誘発好中球走化性に対する抑制作用
好中球遊走に対してルパタジンは8割近くをブロックする。アレグラの主成分であるフェキソフェナジンよりも圧倒的に抑制するがロイコトリエンB4遊走抑制作用はアレグラやジルテックと差が無い。
12歳以上の小児及び成人にはルパタジンとして1回10mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じて、ルパタジンとして1回20mgに増量可能
臨床試験において重症の蕁麻疹では10mgより20mgの方がより症状を改善できたので20mgまでの増量が認められた。
通常量の倍にまで増やせるというのは類似薬と比べて大きなメリットである。ただし眠気も通常量の段階で強めなのでその点は注意。
海外の忍容性試験だと1日100mgまでは心電図で異常所見は無し。
鼻炎症状だと10mg群と20mg群は両方ともプラセボに対して統計学的に優位なアレルギー症状抑制効果を発揮している。抗ヒスタミン薬は鼻づまり症状には効果が弱いという弱点があったが抗PAF作用によってそこが強化されている。
蕁麻疹などの痒みに対してもプラセボより明らかに優位な効果、そして10mgより20mgの方が効果を実感する人が増える。
蕁麻疹の発赤にも高い効果。ここでも20ミリの方が統計学的に優位。4日後だと10mgはプラセボと差が無いが20mgだとまだ効果が持続している。
1059例の国内臨床試験において
副作用 | 割合 | 人数 |
眠気 | 9.3% | 98 |
口渇 | 0.7% | 7 |
倦怠感 | 0.6% | 6 |
AST上昇 | 0.5% | 5 |
ALT上昇 | 0.5% | 5 |
類似薬と比較して明らかに眠気が強い。アレロックの眠気率7%よりも高い。個人的にはアレロックより眠くなると飲みたくないかも。そしてこれだけ眠気が出るなら車の運転は極力控える必要がある。運転したいならロラタジンやフェキソフェナジンでなんとかしよう。
ルパタジンは肝臓のCYP3A4で代謝される。
そして代謝された一部がデスロラタジンという物質になる。このデスロラタジンはデザレックスという抗アレルギー剤の有効成分。デスロラタジンには抗PAF作用は無くヒスタミンをブロックするだけ。
ルパタジンは抗ヒスタミン+抗PAF、デスロラタジンは抗ヒスタミン作用オンリー。そしてデスロラタジンは眠気が少ない。眠気が少ない薬がいいなら最初からデスロラタジンとなっているデザレックスを服用したらいい。
抗ヒスタミン薬はこのように活性代謝物を薬として改良した薬が昔から存在する。
もう市販薬にもなっているアレグラの成分フェキソフェナジン、これはテルフェナジンという副作用が強かった薬(現在は販売されていない)の活性代謝物。
ザイザルというよく効く抗ヒスタミン薬も大元はアタラックスの成分ヒドロキシジンの構造を一か所変えたジルテックのRエナンチオマー。二段階変身してより効果と安全性に磨きを掛けた薬。
服用して1時間後に最高血中濃度に達する。代謝物のデスロラタジンの半減期が20時間以上あるおかげで臨床効果が24時間継続する。
試験管レベルではCYP2B6、CYP4A、CYP2C9 及び CYP2A6 活性に影響を与えなかったが、CYP3A4 及び CYP2D6 は、ルパタジンにより有意に阻害された。承認量の1日20mg以下ならCYP3A4以外のことは気にしないでいいレベル。
ビラノアのように食事の影響は受けないので食後でも服用可能。
無
ただしCYP3A4で代謝されるのでエリスロマイシンやクラリスロマイシン、アゾール系経口薬、そしてグレープフルーツジュースとの併用は注意。ルパフィンの代謝が捗らずに血中濃度が上昇して眠気などの副作用が強くなる可能性がある。
青く囲った部分(ルチジニル構造)が抗PAF作用
赤く囲った部分(ピペリジニル構造)が抗ヒスタミン作用
これまで発売されている抗ヒスタミン薬にも抗PAF作用を示唆するものはあったが堂々と抗PAF作用を唄う薬はルパフィンが初めて。
この2つの作用により製薬会社はDUAL作用でアレルギー症状をブロックすると宣伝している。セレスタミンの様な合剤でなく一つの化合物の中に2つの作用を有しているのが面白い。