【コンタクト】 ジクアス点眼液:ヒアレインとの違いはムチン分泌と差し心地 【OK】

 

 

ドライアイの治療といえば不足してる水分を補充する人工涙液とヒアルロン酸ナトリウム。

昔はその二つしかなかったので効果が出ないと直ぐに手詰まりとなった。

 

そこに颯爽と2010年に登場したのがジクアス点眼液(一般名:ジクアホソルナトリウム)

 

ジクアスはそれまでの水分を補う目薬ではなく水分の分泌を促す。

さらに水分の保持に重要なムチンという物質も分泌する。

 

自らから分泌するのでそれまでのドライアイ点眼薬とは全く違った作用機序を有している。

 

ドライアイ治療を1世代進化させた点眼薬

 

 

名称の由来

ジクアホソルナトリウム+アクアス
(Diquafosol Sodium+Aquas:ラテン語で“(複数形)”の意味)

 

水の女神であるアクア様は触れた水を浄化する能力がある。

 

効能・効果

ドライアイ

 

ジクアスの添付文書には「涙液異常に伴う角結膜上皮障害が認められ、ドライアイと診断された患者に使用すること。」との注意書きがある。ヒアレイン点眼液の添付文書にはこの記載が無い。

 

使い方

1回1滴、1日6回点眼

 

ヒアレイン点眼液の使い方は1日5~6回と少し幅を持たせているがジクアスの使い方は1日6回とキッチリ指定されている。

 

ジクアスのヒアレインも基本的に一日6回点眼する。さらっと言っているが1日6回も点眼するのは重労働

 

自分はドライアイでないがもしドライアイになっても1日6回使える自信がない。いつか一日一回だけで24時間効果があるドライアイ治療薬が発売されたら大ヒットするだろう。

 

ジクアスの作用機序
結膜上皮細胞
  1. 結膜上皮細胞膜上のP2Y2受容体に結合する。
  2. ホスホリパーゼCが活性化され細胞内のイノシトール3リン酸濃度が上昇する。
  3. カルシウムイオンが小胞体に作用する
  4. 小胞体からCa2+が出て細胞内Ca2+濃度が上昇する。
  5. Ca濃度依存性クロライドチャネルが開き細胞外にクロライドイオンが移動
  6. クロライドイオンはマイナスなのでプラスのナトリウムイオンも細胞外に引っ張られる。
  7. 細胞外にNaCl(塩)ができたので浸透圧の関係で水が出ていく
  8. 水と塩分が分泌される

ジクアスが細胞外に水分を分泌する仕組みは浸透圧による。ヒアレインは分子内に水を溜め込み保水するので仕組みが異なる。

クロライドチャネルを介した水分泌のしくみはアミティーザという便秘の薬でも利用されている。

 

杯細胞
  1. 杯細胞膜上のP2Y2受容体に結合する。
  2. ホスホリパーゼCが活性化され細胞内のイノシトール3リン酸濃度が上昇する。
  3. カルシウムイオンが小胞体に作用する
  4. 小胞体からCa2+が出て細胞内Ca2+濃度が上昇する。
  5. 細胞内Ca2+濃度の上昇に従ってムチンが分泌されていく。

ジクアスがムチンを分泌する仕組みも小胞体にイノシトール3リン酸が作用してカルシウムイオン濃度が上昇するまでは同じ。

 

しかしカルシウムイオン濃度が上昇するとはなぜムチンが分泌されるのかメカニズムを調べてみたがわからなかった。 知っている人がいたら教えてください。

 

作用機序と作用点の違い
ジクアス ヒアレイン
分泌 保水
ムチン分泌 ×
角膜上皮伸展 ×
結合する場所 P2Y2受容体 フィブロネクチン

 

構造式
一般名:ジクアホソルナトリウム

 

ジクアスは「di」、つまり2つ同じものが合体・結合してできている。

 

構造式を真ん中でぶった切ると普段よく見慣れたものに非常に似ている。

 

塩基+5単糖+リン酸=核酸

 

ジクアホソルナトリウムが作用するP2Y2 受容体というのはプリンヌクレオチドやピリミジンヌクレオチドがリガンドとして作用する受容体である。

なので二つのヌクレオチドが結合しているジクアスもP2Y2受容体にリガンドとして作用する。

 

ジクアスの主成分ジクアホソルナトリウムは目の表面で加水分解されてUTPとUMPになる。

その後にピリミジンヌクレオチドの代謝経路に従って最終的にβアラニンが尿へ排出される。

 

ジクアスの臨床効果
第Ⅲ相試験
試験デザイン 無作為化二重盲検群間比較
比較対象薬 0.1%精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液
対象患者 ドライアイ患者(シェーグレン症候群含む)
全症例数 n=286
期間 4週後または中止時
振り分け ジクアス:ヒアレイン=144:142
評価項目
  • 角膜フルオレセイン染色スコア
  • 角膜および結膜ローズベンガル染色スコア

*フルオレセイン染色::障害の程度をスコア化し合計9点満点

*ローズベンガル染色:障害の程度をスコア化し合計15点満点

 

フルオレセイン染色スコア
ジクアス ヒアレイン
変化量 -2.12±0.14 -2.08±0.13
群間差[95%信頼区間] -0.03[-0.405~0.338]
結果 ジクアスはヒアレインに対して劣っていない

角膜に起きるフルオレセイン染色スコアだとジクアスとヒアレインは互角。

 

ローズベンガル染色スコア
ジクアス ヒアレイン
変化量 -3.06±0.19 -2.38±0.18
群間差[95%信頼区間] -0.67[-1.18~-0.16]
結果 ジクアスはヒアレインに対して優れている

角膜及び結膜におけるローズベンガル染色スコアは優位に低下。

 

副作用
ジクアス ヒアレイン
使用成績調査 承認時迄の調査及び使用成績調査
総症例 3,196例 4,208例
副作用発現数 202例 74例
副作用発現率 6.3 1.76%
1位 眼刺激感 0.9% 眼瞼そう痒感 0.45%
2位 眼脂 0.9% 眼刺激感 0.36%
3位 眼痛 0.7% 結膜充血 0.24%

ジクアスの特徴的な副作用に目ヤニがある。

 

ムチンという物質は水分の保持に重要な役割を果たすのだが水分以外にも様々なものを絡め取るとてもネバネバした物質

と言う訳で目ヤニの正体はムチンとその他の物質がくっついた不要物。

ジクアスの一番大切な作用機序であるムチンの分泌がしっかりと行われている証左が目やに。

 

目やに以外の副作用では眼球刺激感がある。

 

添加物
ジクアス点眼液 3% ヒアレイン点眼液0.1%
塩化ナトリウム
クロルヘキシジングルコン酸塩液
エデト酸ナトリウム水和物
pH調節剤
塩化カリウム イプシロン-アミノカプロン酸
リン酸水素ナトリウム プロピレングリコール

ジクアスとヒアレインの添加物を見比べてみたがクロルヘキシジンとエデト酸ナトリウム水和物、NaCl、pH調節剤は共通している。

pHを見てもヒアレインは若干酸性に傾いているが ジクアスは若干アルカリ性

 

炎症の要因となるイプシロンアミノカプロン酸はヒアレインにしか無いしむしろヒアレイン点眼液の方が刺激感がありそうだがジクアスの方が沁みる。差し心地の良さという面ではジクアスよりもヒアレインが良い。

 

昔は2つとも防腐剤のベンザルコニウムが入っていたのでコンタクトレンズをしたままでは角膜にダメージがあるので使えなかったが今は防腐剤成分が変更になったので大丈夫。

 

ジクアスの薬価
ジクアス点眼液3% ヒアレイン点眼液0.1% ヒアレイン点眼液0.3%
一本の薬価 648.70 354.80円 508.50円
後発医薬品(最安) 142.90円 183.70円

ジクアスは2010年に発売されたのでまだジェネリック薬品は存在しない。

なのでヒアレイン0.1%のジェネリック医薬品であれば ジクアスの1/4がお値段で買えるのでお高く感じる。

 

しかし同じ参天製薬から発売されている一本約1800円するアレジオン点眼液に比べると安く感じる。

 

 

ジクアスの売上高
ジクアスとヒアレインの年間売上
参天製薬 単位:100万円

ドライアイ治療薬の王者であるヒアレインを猛追しているジクアス。

 

2015年に保存料を塩化ベンザルコニウムからクロルヘキシジンへ変更してコンタクトレンズの上からでも使用可能となり更にその売上が上昇。

 

近いうちにジクアスがヒアレインに代わりトップに立つ。

 

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