【企業分析】 アストラゼネカ:肺がん治療のパイオニア

 

本社はロンドンにあり、研究開発本部はスウェーデンのストックホルム県セーデルテリエ市にある。
スウェーデンの製薬会社アストラと英国のインペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)の製薬部門が合併して誕生した。

なのでアストラゼネカはストックホルム証券取引所にも上場しており米国、英国、スウェーデンの3か国に株式を上場している。

 

胃酸分泌阻害薬の開発も得意で一番最初に上市されたPPIのオメプラール
オメプラールの光学分割異性体であるネキシウムは年間数十億ドルの売上を記録した。

 

そしてアストラゼネカは呼吸器疾患、喘息と肺がん領域に良い薬を持っている。

 

毎年数千億円売れている喘息発作予防薬のシムビコートとパルミコート

 

肺がん治療では分子標的薬のイレッサとその進化版タグリッソ、今流行りの免疫チェックポイント阻害薬で肺がん治療にブレークスルーを起こしそうなイミフィンジと肺においては隙が無い布陣

今となっては当たり前の分子標的薬だがそのパイオニアとなったイレッサ、そしてイレッサに対して耐性ができてしまった患者さんに使える薬を開発したのもアストラゼネカ。

 

 

 

 

アストラゼネカの歴史

 

アストラ社の歴史

1913年:スウェーデンで400人以上の医師と薬剤師によってAstra ABが設立
このころは栄養補助食品も販売していた。第一次世界大戦による需要で業績を伸ばす。

しかし戦後はその需要が減少して倒産の危機に陥る。
スウェーデンで成立した社会主義政府による一時的な国有化とかもあったりしたが民間コンソーシアムによって民営企業として復活

 

1930年代
狭心症治療剤であるニトロペン(一般名:ニトログリセリン錠)などの革新的な製品を開発

第二次世界大戦中による需要の増加でまた業績が上向く。

1943年
歯科治療の救世主である麻酔薬キシロカインを開発。

麻酔薬が無い時代の虫歯治療は地獄
キシロカインの世界的な生産は、1950年代に始まり局所麻酔薬の歴史を変えた。
70年以上経った今でも使い続けられている。

 

1970年代
薬品の生産に専念するとし他のすべての保有物を売却
化学製品部門の農産物製品、栄養製品、クレンザーとかを売却

1980年代
アストラ社が世界的な製薬会社に飛躍するキッカケとなった重要な3つの医薬品が開発される
セロケン(心臓病治療薬)、パルミコート(吸入ステロイド)、ブリカニール(気管支拡張薬)

 

 

1990年代
PPIのオメプラールが世界で最も売れている処方薬になる。

 

アメリカでオメプラールの販路を拡大するために米メルクとアストラメルクという合弁会社を創設
しかしゼネカ社との合併の足かせとなったので1998年に解散。米メルクには違約金を支払っている。

 

 

 

ゼネカ社

 

1926年に設立されたICI(Imperial Chemical Industries)は、英国で最も古く有名な化学企業の1つ

1993年1月1日:Zeneca Ltd.がICIの100%子会社として設立。
スピンアウトされる際にゼネカにはICIの旧医薬品、農薬、その付加製品が譲渡される。
乳がん治療薬アリミデックスや除草剤のパラコートと言った資産も

1997年:抗精神病薬セロクエルを発売

 

1999年:アストラ社とゼネカ社の合併が成立しアストラゼネカ誕生

 

この時にゼネカ社が保有していた農薬部門はスイス製薬大手のノバルティスの農薬部門と合併しシンジェンタとなる。

スピンアウトした本体のICIは結局2007年にオランダの化学会社アクゾノーベルに買収された。
ちなみに2017年時点でアクゾノーベルの時価総額は約2兆6千億円に対してアストラゼネカは9兆円

 

2001年:PPIのネキシウムを発売

 

2002年:非小細胞肺癌治療薬イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)発売

2014年:ファイザーから買収提案を受けるも拒否

日本の本社機能を梅田スカイビルからグランフロント大阪へ移転

2016年:非小細胞肺癌治療薬タグリッソ発売

 

2018年:抗PD-L1ヒトモノクローナル抗体イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)が承認

 

 

 

概要(2017年)

本社所在地:ケンブリッジ

 

売上:224億ドル
研究開発費:54億ドル
営業利益:36億ドル
純利益:30億ドル
配当支払額:35億ドル

株価:40ドル
一株配当額:1.4ドル
配当利回り:3.5%

 

 

年間売上

クレストールとネキシウムというこれまでアストラゼネカの業績を引っ張ってきた薬が
特許切れとなり売上は下降気味。開発中の免疫チェックポイント阻害薬の売上はまだ0

 

 

純利益

これまでの低分子化合物医薬品から生物医薬品への過渡期だとしても
他の製薬大手と比較すると稼ぐ力は見劣りする。

 

 

株主還元

配当は安定して35億ドルを支払っているが自社株買いはここ5年していない。
純利益に対するペイアウトレイオが100を超えている年が多いので自社株買いする余裕が無いか

 

 

 

アストラゼネカの売上トップ5(2017年)

 

1位:シムビコート 【28億ドル】
ぜんそく薬でパルミコートとβ2刺激薬オーキシスの合剤 発作時にも使える

 

 

 

2位:クレストール 【23億ドル】
高脂血症治療薬、創製したのは日本の塩野義製薬 アストラゼネカが世界で販売している。

 

 

 

3位:ネキシウム 【19億ドル】
胃酸止める薬、オメプラールのS体

 

 

 

4位:パルミコート 【11億ドル】
吸入ステロイド 子供にも使える

 

 

 

5位:タグリッソ 【9億ドル】
抗がん剤イレッサの次世代バージョン

売上トップ6の売上推移

 

 

クレストール、ネキシウム、シムビコートとパルミコートは売上が下降中
特許が切れて過去の薬になりつつある。
他の製薬会社と同じように生物学的製剤のヒット商品が欲しい所

 

 

 

開発した主な薬

アリミデックス(一般名:アナストロゾール):乳癌治療に使う抗ガン剤、骨密度に気を付けよう
インデラル(一般名:プロプラノロール):あがり症や片頭痛の予防にも
オメプラール(一般名:オメプラゾール):H2ブロッカーのガスターやザンタックより強い
カソデックス(一般名:ビカルタミド):イクスタンジが登場する前の前立腺癌治療の主役
キシロカイン(一般名:リドカイン):幅広く使用される局所麻酔。歯医者さんで大活躍
ゼストリル(一般名:リシノプリル):米メルクと共同開発したACE阻害作用を有する降圧剤
セロクエル(一般名:クエチアピン):抗精神病薬 色んな意味でジプレキサより穏やかだがDMは×
セロケン(一般名:メトプロロール酒石酸塩):高血圧・狭心症治療薬 2009年の売上は48億ドル
ビデュリオン(一般名:エキセナチド):週1回投与のGLP-1受容体作動薬 バイエッタと成分同じ
ノルバデックス(一般名:タモキシフェン):乳癌治療の抗ホルモン剤であって降圧剤ではない
リムパーザ(一般名:オラパリブ):再発卵巣がん治療薬 世界初のPARP阻害剤

 

 

独り言

 

 

アストラゼネカのこれからは2つの免疫チェックポイント阻害薬に掛かっている。
その2つとはデュルバルマブ (商品名IMFINZI)とトレメリムマブ

 

 

デュルバルマブとは?

PD-L1を直接標的とする抗体でPD-L1とT細胞上のPD-1且つCD80の相互作用を阻害し腫瘍細胞が免疫細胞に対する免疫抑制反応を阻害する。既にFDAから切除不能ステージIII非小細胞肺がんの適応で承認取得済

 

トレメリムマブとは?

ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のヤーボイと同じ抗CTLA-4抗体

ヤーボイは単剤で根治切除不能な悪性黒色腫に対する適応を取得しているが
トレメリムマブは最初からデュルバルマブや他の抗がん剤との併用をAZNは想定している。

これは免疫チェックポイント阻害という分野でAZNが出遅れているから付加価値をもって
競合他社に追いつこうという方針。ライバルのBMSもオプジーボとヤーボイの組み合わせを持っていて激しい競争になる。

 

デュルバルマブは単剤とプラセボを比較したPACIFIC試験において無増悪生存期間(PFS) が
IMFINZI単剤群16.8ヶ月(95%信頼区間:13.0-18.1ヶ月) 、プラセボ群5.6ヶ月と1年近く延長したが

一次治療においてデュルバルマブ単剤療法またはデュルバルマブとトレメリムマブの併用療法をプラチナ製剤を用いた標準化学療法と比較する第III相MYSTIC試験でPFSの改善を達成できなかった
全生存期間の結果はまだ出ていないが期待外れの結果で株価は大きく下落した。

しかし薬物治療抵抗性の前立腺癌においてはリムパーザ+デュルバルマブ併用療法で良好な結果をだしているので色んな組み合わせを試していくことになる。

免疫チェックポイント阻害薬が軌道に乗るまで増配や自社株買いは期待できないが減配リスクもそんなに高くないと思う。

そしてアストラゼネカは同じ英国製薬会社グラクソスミスクラインと違って決算や配当も米ドル基準
だからADRの配当もここ数年安定して1ADRあたり1.4ドル

配当重視の投資家なら保有しても悪くない会社。

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