エビリファイ | レキサルティ | |
一般名 | アリピプラゾール | ブレクスピプラゾール |
構造式 | ||
愛称 | DSS(Dopamin System Stabilizer) | SDAM(Serotonin-Dopamine Activity Modulator) |
薬価 | 499.2円(OD錠24mg) | 509.2円(2mg錠) |
剤形 | 錠剤 OD錠 散剤 内用液 筋注用 | 錠剤 |
後発品 | 有 | 無 |
開発 | 大塚製薬 | 大塚製薬 |
発売年 | 2006年 | 2018年 |
効能効果 |
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用法用量 | 1日1~2回 | 1日1回 |
開始量 | 6~12mg/day | 1mg/day |
維持量 | 6~24mg/day | 2mg/day |
結合親和性 | エビリファイ | レキサルティ |
ドパミンD2 | 0.34 | 0.30 |
5-HT1A | 1.7 | 0.12 |
5-HT2A | 3.4 | 0.47 |
5-HT2C | 15 | 34 |
H1 | 61 | 19 |
D2固有活性 | 60% | 45% |
体内動態 | ||
Tmax | 3.6時間 | 6.0時間 |
T1/2 | 61.03±19.59時間 | 52.88±16.19時間 |
代謝酵素 | CYP3A4とCYP2D6 | CYP3A4とCYP2D6 |
副作用率 | 60.8% | 40.3% |
アカシジア | 11.7% | 5.7% |
豪州妊娠基準 | C | C |
10年以上臨床使用されているエビリファイと違いレキサルティは2018年に発売されたばかりの薬なので臨床的なデータやノウハウが不足している。臨床試験では分からなかった特性や副作用もこれから出てくるだろうし適応症も広がると思う。なので現時点で判明しているレキサルティの特徴を調べてエビリファイと比較してみた。
- 二つとも日本の大塚製薬が開発した統合失調症治療薬。2019年2月時点でレキサルティは統合失調症しか適応が無いがこれからエビリファイの様に適応を取っていくはず。
- ドパミンD2部分作動、5-HT1A部分作動、5-HT2Aアンタゴニストという作用点は同じ。違うのはその作用する力と生理活性
- 2つとも主に肝臓で処理され代謝酵素もCYP3A4とCYP2D6と共通
- 妊娠中に使用した時のリスクはオーストラリア基準で2つともCランク。催奇形性はないが、薬作用によってヒト胎児または新生児に有害な作用を及ぼすか、及ぼす可能性がある薬
ドパミンD2部分作動薬としての力は
エビリファイ>レキサルティ
解離定数を見るとエビリファイの0.34nモルに対して0.30nモルとむしろレキサルティの方がより低濃度で作用する。しかし結合しても受容体がシグナルを伝えないと生理活性的に意味は無い。
フルアゴニストのドパミンが受容体に結合すると100作用するところエビリファイは結合しても60%しか固有活性を持たない。同じ数の受容体に作用してもドパミンD2受容体がキチンと作動するのはその6割である。脳内ドパミン量が少ないときは増やし、逆に多いときは鎮静的に減らす。
この6割の固有活性がエビリファイの特徴。
レキサルティはドパミンD2に対する固有活性がエビリファイよりさらに低い45%である。
この固有活性の差がエビリファイとレキサルティの大きな違い
レキサルティはドパミン不足により起こる錐体外路症状(けいれん、振戦、運動失調や筋肉のこわばりなど)の副作用が少ないことが臨床試験からも読み取れる。
全体の副作用発現率(国内試験)をみてもエビリファイの6割から4割と減っている。しかも統合失調症治療薬の特徴的な副作用であるアカシジア(ジッとしていられない)が半分になっている。アカシジアが少ないのはドパミンに対する作用だけでなくもう一つの作用機序であるセロトニンが関係している。
セロトニン部分作動薬としての力は
レキサルティ>エビリファイ
レキサルティはエビリファイよりも濃度一桁低いレベルで5-HT1Aと5-HT2Aに作用する。
5-HT1Aを刺激すると抗不安作用が発動する。5-HT-2Aを遮断すると抗精神病作用および錐体外路症状が軽減される、。
エビリファイのジクロロベンゼンの部分がチオフェン(硫黄原子が一個の五角形)に置換されている。エビリファイの構造を一部チオフェンに変更して結果としてセロトニンへの親和性が高まったがその理由は調べても分からなかった。
セロトニンを増やし構造式にチオフェンが含まれる精神薬といえばサインバルタが有名であるが因果関係があるのかは不明。
サインバルタの構造式
そもそも添付文書にレキサルティは何で効果があるのか正確な薬理機序は不明と書いている。製薬会社で毎日研究している天才達が分からないことをただぼーっと生きている丿貫が分かるはずもない。
自分の家にX線結晶構造解析装置があれば受容体とレキサルティが結合している様式を観察したいところだが。
エビリファイには糖尿病性ケトアシドーシスや昏睡という警告記載がある。
レキサルティには2019年1月時点で「警告」の記載は無い。
しかし現時点でないというだけでこれから症例が増えてくるとレキサルティにも警告や重大な副作用が出現する可能性は充分にある。
エビリファイと違いレキサルティは維持量が1日2mgと一択。シンプルで良い。
しかしエビリファイを1日24mg飲んでる人がレキサルティに変更するときにもシンプルに2mg換算で良いのか?エビリファイは24mgと大量に使用すると鎮静的に作用するがレキサルティの2mgにはそこまでの鎮静作用は無い。
エビリファイ24mgはコントミン換算だと600mgだがレキサルティは今のところ何mgに該当するのか不明。米国では1日4mg使えるが日本では2mgまでと控えめな設定。
これから臨床で使用していくうちに判明していくのだろう
総合的にレキサルティをエビリファイと比較すると
薬理作用の重心をドパミンからセロトニンにずらして副作用を少なくしたのがレキサルティ
のように見える。
しかし
実際にエビリファイやレキサルティを服用している人は知りたいことがあれば病院や薬局で質問しよう。プロの意見を参考に。
エビリファイ個別の記事は↓
【大塚】 エビリファイ:センサー入りデジタル錠剤をFDAが承認