【旭硝子】 タプロス:日本生まれのプロスタグランジン関連薬 【フッ素マシマシ】

一般名 タフルプロスト
日本発売年 2008年
開発会社 参天製薬及び旭硝子
販売会社 参天製薬
分類 緑内障治療薬
機序 プロスタグランジンF2α

 

 

緑内障治療薬タプロス点眼液(一般名:タフルプロスト)

 

プロスタグランジン関連薬のデファクトスタンダードであるキサラタン点眼液と同等の眼圧降下力があり更に血流を改善すると言うプラスアルファな力も持つ。

 

その力の源はフッ素

 

フライパンをフッ素コーティングすると訓練されたフライパンができるが医薬品でもフッ素を導入すると性能がアップすることがある。

 

医薬品では薬理作用に直接関係ない部分にフッ素原子を導入して安定度などを向上させるがタプロスに関しては薬理作用ど真ん中の部位にフッ素をぶち込んだ。しかも2つも

 

二郎もびっくりのフッ素マシマシ

 

目薬業界の雄である参天製薬と素材メーカーの旭硝子という異色のコラボで誕生したmade in japanな点眼薬。

 

 

 


名称の由来


フルプロスト+プロスタグランジン/プロスペクト
(Tafluprost+Prostaglandin/Prospect,“展望、期待”)

 

プロスタグランジンという名称はprostate(前立腺)からきている。

 

 

 


効能・効果


  • 緑内障
  • 高眼圧症

 

 

四十歳以上の緑内障有病率は約5%。

 

緑内障の患者数は約300万人と推定されておりそのほとんどは緑内障だという自覚がなく受診していない。気がついたときには視野が欠損。

 

緑内障は日本人の失明原因第1位。

 

眼圧が21以下の正常眼圧緑内障が大部分を占める。

 

だが眼圧を1mmHg下げることでリスクを1%下げることができる。

早期発見して毎日キチンと点眼していれば治失明まで至ることは少ない。

 

 

 


使い方


  • 1回1滴、1 日1回点眼

 

「頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと。」

 

タプロスに限らずPG薬は1日に何回も点眼すると効果が落ちる

緑内障の点眼薬は高価なので無駄遣いをしてはいけない。

 

 

 


作用機序


緑内障点眼薬の分類
メカニズム 場所 薬の種類 代表的な製剤
産生抑制 毛様体
  • β受容体遮断薬
  • α2受容体刺激薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • チモプトール
  • アイファガン
  • エイゾプト
流出促進 主経路
  • 副交感神経刺激薬
  • Rhoキナーゼ阻害薬
  • サンピロ
  • グラナテック
副経路
  • PG関連薬
  • α2受容体刺激薬
  • α1受容体遮断薬
  • タプロス
  • アイファガン
  • デタントール

 

 

タプロスは余計な眼房水の流出を副経路をルートを介して促進する。

 

それだけだったらキサラタンと同じだがもう一つタプロスには作用点がある。

 

視神経周辺の血流量増加作用

 

眼圧をいくら下げても緑内障が進行してしまう正常眼圧緑内障。

眼圧が高いこと以外にもリスクファクターがある。

その一つが視神経周辺の血流量低下。

 

カメラで言うところのイメージセンサーにある視神経部分に血流が悪くなると障害が起こる。

タプロスは視神経乳頭や網膜周辺の血流量を改善するという作用がある。

なので正常眼圧緑内障の患者さんにも効果的な点眼液である。

 

 

 


構造式


一般名:タフルプロスト

 

 

タプロスの構造で最も特徴的で重要な部分は15位のフッ素原子。

 

この15位にの元々あった水酸基は薬理活性に必須と考えられていた。

そこの水酸基が空気などで酸化されケトン体となると失活して薬理効果がなくなる。

 

15位の水酸基はラーメンで行ったら麺。

ラーメンから麺を抜いたら別の食べ物となる

 

なので他の製薬会社はその15位水酸基には手を加えず他の部分を改造して新しい緑内障治療薬を開発していた。

だがその部分の酸化が臨床効果の減弱に直結するので先に登場していたキサラタンを超える薬を開発することに難渋していた。

 

そこに登場したのが旭硝子。

 

 

 

旭硝子「水酸基の代わりにフッ素入れたらいいんじゃね?

参天製薬「!」

 

 

フッ素の導入は医薬品開発において様々なメリットがある。

 

フッ素原子は水素原子の次に小さい原子半径で生体内での振る舞いが水素と似ている。

炭素原子とフッ素原子の強い結合は薬物代謝の阻害効果があり生体内で薬理効果が長持ちする。

そして脂溶性が増加して膜透過性が高まり吸収率も高まる。

 

 

FP 受容体-タフルプロストカルボン酸複合体構造の構造

 

2つのフッ素原子のうち1つ、立体配置的に元の水酸基と同じ位置のフッ素が主作用として働きもう一つのフッ素原子が補助的に作用している。

 

 

この15位水酸基を変更してフッ素原子を導入するという発想は旭硝子の有機合成研究力が無ければ得られなかった。

 

タフルプロストの活性本体であるカルボン酸は、ラタノプロストのカルボン酸の約12倍であり0.0015%という超低濃度な点眼薬となった。

 

 

 


臨床効果


デザイン 無作為化盲検比較試験
対象患者 原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者
比較薬 ラタノプロスト点眼液
症例数 109例
タプロス点眼液 ラタノプロスト点眼液
n 46例 51例
ベースライン 23.8±2.3 23.7±2.3
治療期終了時 17.2±2.8 17.5±2.7
眼圧変化値 -6.6±2.5 -6.2±2.5
平均値の群間差 0.41
95%信頼区間 -1.42~0.60

(平均値±標準偏差)
非劣性限界値:2mmHg

 

眼圧を下げる力はキサラタン点眼液に匹敵、非劣性が証明されている。

 

しかし眼圧を下げる力が同じだけだったら先に登場したキサラタンでいいという話になってしまう。

 

キサラタンはとても良い点眼薬だが約3割ほどの患者さんはずっとキサラタンを点眼しても眼圧が下がらない人=ノンレスポンダーが存在する。

 

そんなノンレスポンダーに対しても効果があるのがタプロス。

 

 

 


副作用


国内臨床試験
総症例 483例
副作用発現数 326例
副作用発現率 67.5%
副作用 発現率
1位 結膜充血 31.3%
2位 睫毛の異常 19.3%
3位 そう痒感 17.6%
4位 眼刺激感 13.5%
5位 虹彩色素沈着 8.1%

 

色素沈着やまつげの異常はプロスタグランジン関連薬に共通する副作用。

タフルプロストがプロスタグランジンE2の分泌を促進してそれが色素細胞であるメラノサイトに作用することでメラニンが増える。

 

 

 


代謝排泄


 

タフルプロストはプロドラッグであり体の中で構造が変化してから効果が発揮される。

 

具体的には角膜においてエステル構造を分解するエステラーゼによってカルボン酸体となり薬理効果が発揮される。

 

基本骨格15位のフッ素が受容体と直接結合する部分なのでそこが変化を受けると失活する。

 

他のプロスタグランジン関連薬は酸化を受けて効果が弱くなるがタフルプロストはフッ素-炭素という極めて結合力が強い形態なので代謝を受けにくく安定した物質となっている。

 

なのでキサラタン点眼液は冷蔵庫に保管だがタプロスは常温での保管が可能。

 

 

 


併用禁忌


商品名 一般名 どうなる 作用機序
エイベリス点眼液 オミデネパグ イソプロピル 中等度以上の羞明、虹彩炎等の眼炎症 不明

 

2018年に発売された緑内障の治療薬エイベリス点眼液。

この薬と一緒にタプロスを使うと目の炎症が起きやすいということで一緒に使ってはいけないとなっている。

 

タプロスと同じプロスタグランジン関連薬だが作動する受容体のサブタイプがEP2とタプロスとは微妙に異なる。

 

緑内障治療薬は単剤では効果が不十分な場合があるので併用したい場面もある。他の点眼薬と使ってはいけないのは大きなマイナスポイント

 

やはりプロスタグランジン関連薬のお供にはβ遮断が安パイである。

チモプトールとタプロスが合体したタプコム点眼液も販売されている。

 

 

 


タプロスの薬価


先発品 薬価(1mL) 後発品(最安) ディスカウント
タプロス点眼液 932.30円
タプロスミニ点眼液 94.30円

(2019年10月時点)

 

タプロスには使い捨てタイプのミニ点眼液も存在する。ミニ点眼液は保存料である塩化ベンザルコニウムが入っていないので目に優しい。

 

残念ながらタプロス点眼液にはまだジェネリック医薬品は存在しない。

 

 

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