クロルプロマジン:抗精神病薬の歴史はこの薬から始まった

一般名 クロルプロマジン
日本発売年 1955年
開発会社 ローヌ・プーラン
販売会社 田辺三菱
分類 抗精神病薬
機序 ドパミンD2遮断

 

 

統合失調症の治療薬コントミン(一般名:クロルプロマジン)

 

この薬が誕生したのは約70年前のフランス。

クロルプロマジンが登場するまで統合失調症に効果がある薬は存在しなかった。

 

じゃあどうやって精神科医は患者を治療していたのかというと( ^ω^)・・・

 

 

 

電気ショックを与えたり

インスリンを注射してあえて低血糖状態にしたり

脳の一部を切除するロボトミー

 

 

 

ナ〇スの実験かな?

 

電気ショックは現代でも行われているがロボトミーは行われていない。

 

ロボトミーとは前頭葉を脳から切除する手術。

 

切除された患者は確かに大人しくなるが意欲がなくなったり人格が変わったりする。とても興味深い治療法だとは思うが自分が受けたいとは思わない。

このロボトミーという治療法はノーベル賞もとったほど革新的な治療法だったのだが現在では行われていない。

 

人格変わったり人道的に問題があるとのことで。

 

しかし薬が全くない状況で暴れる統合失調症患者に対応するには何かしらの手段が必要だった。なので統合失調症治療薬が登場するまでは仕方なく何かしらの方法で患者を大人しくさせていた。

 

 

そんなやるかやられるかの殺伐とした精神医療業界に革命が起きる。

 

1950年12月、ローヌ・プーランの研究者ポール・シャルパンティエが世界初の抗精神病薬であるクロルプロマジンを開発

 

それまでの電気ショック、インスリン、ロボトミーといった命がけの治療に比べてはるかにリスクが低くなおかつ効果的。

 

精神医療の最前線で働いている精神科医の目の間に現れた奇跡の薬

 

宇宙の始まりである超新星爆発に匹敵するのがクロルプロマジンでありこの薬から抗精神病薬の歴史が始まった。

 

2019年現在でもクロルプロマジンは重要な薬として使われておりWHO必須医薬品モデル・リストにも載っている。

 

 

 


名称の由来


コントミン:コンコンと眠る+TOMIN→ヨシトミのアミン

ウインタミン:winter(冬)+ amine:人工冬眠にちなんで命名された。

 

 

日本におけるクロルプロマジン製剤はコントミンとウインタミンという商品名で発売されている。

 

クロルプロマジンはその驚異的な効果により誕生して1年で欧州中に広まり3年もしないうちに世界中で使われるようになった。

 

 

 


効能・効果


  • 統合失調症
  • 躁病
  • 神経症における不安・緊張・抑うつ
  • 悪心・嘔吐
  • 吃逆
  • 破傷風に伴う痙攣
  • 麻酔前投薬
  • 人口冬眠
  • 鎮痛剤の効力増強

 

 

同じ時代に発明されたもう一つの偉大な抗精神病薬ハロペリドール。

ハロペリドールも同じ抗精神病薬でメジャートランキライザーだが効果面で違いがある。

興奮して暴れている患者を鎮静させる効果はクロルプロマジンの方が強いが幻覚や妄想を抑える力はハロペリドールの方が強い。

 

クロルプロマジンは基本的に統合失調症に使われる薬。

だが他にも様々な作用がある。

 

 

「人工冬眠」という聞きなれない言葉がある。

 

手術をする時にできるだけ体温を低くして細胞を保護する。クロルプロマジンは体温を低下させる力がある。そのうえ鎮痛剤の効果も増強するので手術前には一石二鳥。

 

 

化学受容器(CTZ)と呼ばれる吐き気を引き起こすところに作用してドパミンD2受容体を遮断することで吐き気も止める。

 

クロルプロマジンの意外な適用はしゃっくり

 

しゃっくりを止めるために保険が使える薬はクロルプロマジンのみ。

 

 

 


使い方


  • 1日50~450mgを分割経口投与する(精神領域

 

精神病の薬はよく

 

強い薬ですか弱い薬ですか?

 

と聞かれる。

 

抗精神病薬の強い弱いの基準

それがこのクロルプロマジン

 

クロルプロマジンに換算して何ミリ使ってるかによって量の多い少ないを判断する。

 

メジャーな薬を比較するのは簡単。

 

クロルプロマジン100mg =リスペリドン1mg= ハロペリドール2mg=スルピリド200mg

 

海外では1日1000mg使うこともあるらしいが日本ではその半分まで

 

統合失調症の薬はある程度までは用量に比例して症状も改善していくが一定以上使うとそれ以上増やしても無意味なことが多い。

 

 

 


クロルプロマジンの作用機序


ドパミン 関連する症状 具体例
中脳辺縁系 過剰 陽性症状 幻覚・妄想
中脳皮質 不足 陰性症状 感情・意欲の低下
黒質-線条体 不足 錐体外路障害 パーキンソン症状
下垂体系 不足 性機能障害 乳汁分泌、月経異常

 

 

統合失調症の代表的な症状である興奮・幻覚・幻聴

 

それらの症状は中脳辺縁系のドパミンが過剰になって起こるという説がある。

 

クロルプロマジンのメイン作用機序はそこのドパミン受容体を遮断してドパミン作用を減らす。

ドパミンの量が減ると幻覚や幻聴 興奮がおさまる。

 

 

それで終わりであれば万事解決

しかし薬にはあるものが必ず付いている

 

 

副作用

 

クロルプロマジンは中脳辺縁系以外のドパミン量も減らしてしまう。

 

中脳皮質のドパミン量が減ると意欲や感情が減り無気力になってしまう。

 

黒質線条体の辺りにあるドパミン量を減らすと体がうまく動かなくなる。

ドーパミンは体の動きでも重要な役割を果たしているのでそれが減ると体が動かなくなる。

 

薬剤性でないドパミン不足による運動失調は別名パーキンソン症と言う。

 

パーキンソン病治療に最も重要な薬であるレボドパは脳内で不足しているドパミンを補充して動きを良くする。

 

でも飲みすぎると幻覚や幻聴が現れる。→統合失調症様

 

抗精神病薬とアルツハイマー治療薬はシーソーのような関係。

 

 

 


構造式


一般名:

 

 

クロルプロマジンの中心構造はフェノチアジンという三つの環

 

フェノチアジンという物質自体は19世紀に既にドイツで合成されていた。

殺菌作用や構造を少し変えたメチレンブルーという色素としても使われていた。

 

しかしフェノチアジンの真価が発揮されたのはそれから50年以上も後のこと

 

現在でも風邪の時に処方される PL 顆粒。

そのPL 顆粒にプロメタジンという物質が入っている。

 

(一般名:プロメタジン)

 

このプロメタジンはヒスタミンをブロックして鼻水やくしゃみなどを抑える作用があるが副作用として鎮静など中枢抑制作用が問題となる。

 

クロルプロマジンはプロメタジンを改造して合成された物質。

フェノチアジン環上Nに付いている側鎖を一つ伸ばしてプロピルとすると薬理効果が大幅にUP。

 

現在使われている抗ヒスタミン薬(アレグラなど)は眠気が少なくおとなしい薬が使われているが昔に開発された薬は眠気や鎮静が強い。

 

 

 

ラボリ医師「だがそれがいい

 

 

 

手術をする時には鎮静が必要となる。

 

ラボリ医師とその愉快な仲間達はペチジンなどの鎮痛薬と一緒に抗ヒスタミン薬をカクテルして患者に投与していた。

そしてフランスの製薬会社ローヌ・プーランに抗ヒスタミン薬候補の物質を送ってくれと頼みローヌプーランも貴重な臨床データが得られるので進んで提供。

そのローヌ・プーランから送られた抗ヒスタミン薬の一つが

 

4560RP

 

後のクロルプロマジンである。

 

 

 


重大な副作用


  • 悪性症候群
  • 心室頻拍
  • 再生不良性貧血・溶血性貧血・無顆粒球症・白血球減少
  • 麻痺性イレウス
  • 遅発性ジスキネジア
  • 抗利尿ホルモン不適合分泌障害(SIADH
  • 眼障害
  • SLE用症状
  • 肝機能障害・黄疸
  • 横紋筋融解症
  • 肺塞栓症・深部静脈血栓症

 

 

昔の薬なので副作用発現率が明らかになる臨床試験は実施していない。

 

まれな副作用に眼の障害がある。角膜や水晶体辺りに沈殿物が生じることによる。

 

メラニンに強く結合し、皮膚、結膜、角膜、水晶体、および網膜の色素沈着過剰を引き起こす可能性がある。

長期に服用するとそのリスクが上昇。クロルプロマジンを服用している人は定期的に眼科を受診した方が良い。

 

 

効能・効果で「人口冬眠」があるが逆に体温が急上昇することもある。

クロルプロマジンは発汗能力を低下させるので汗をかいて体温を下げるという事ができなくなる。

 

ということは真夏など熱中症になりやすい。

 

 

循環器系では重大な副作用欄には入っていないが低血圧もかなりの確率で起こる。

これはクロルプロマジンが血管のα1受容体をブロックすることで血管が緩み血圧が下がる。

 

 

 


併用禁忌


アドレナリンと併用した場合の血圧変化

 

アドレナリンという物質がある。

 

怒りのホルモンとしても有名

なのでイメージの通り血圧を上昇させる作用がある。

 

アドレナリンが作用する受容体は(α1、α2、β1、β2)

このうちα1とβ2は血圧という面で見ると相反する作用機序を有している。がアドレナリン単独だと昇圧作用が勝る。

 

そこにα1遮断作用があるクロルプロマジンが存在するとアドレナリンの昇圧部分が邪魔されて反対に血圧が低下してしまう。

 

ボスミン(一般名:アドレナリン)は注射製剤で心臓が止まりそうな時にぶち込んで復活させる。血圧や脈拍数の上昇が期待される。

 

そんな心臓が止まりそうな患者さんが以前からクロルプロマジンを服用していたら消え入りそうな血圧が逆方向に行き一気に低血圧となる。

 

なのでクロルプロマジンはボスミン注と併用してはならない。というかクロルプロマジンを服用している患者さんにボスミン注を使うべきではない。

 

この低血圧症状は「アドレナリン反転」といって薬理の教科書にも載っているし医師国家試験や薬剤師国家試験でも出題される程の重要な現象。

 

アドレナリンとノルアドレナリンの違いも意識して理解しよう。

 

 

 


代謝排泄


関連代謝酵素:CYP2D6

 

小腸壁及び肝臓で代謝され約168の代謝産物が存在する。

 

クロルプロマジンはCYP2D6に親和性を有する。

 

なので体内で2D6に代謝されないと抗がん効果が発揮されない乳がん治療薬ノルバデックスは併用すると効果が減弱する可能性がある。

 

 

 


クロルプロマジンの薬価


先発品 薬価 後発品(最安) ディスカウント
コントミン糖衣錠12.5mg 9.40円 9.40円 100%
コントミン糖衣錠25mg 9.40円 9.40円 100%
コントミン糖衣錠50mg 9.40円 9.40円 100%
コントミン糖衣錠100mg 9.40円 9.40円 100%

(2019年10月時点)

 

クロルプロマジンは半世紀以上前に承認された薬なので値段はとても安い。

しかもすべての規格が同じ薬価9.4 円。

 

クロルプロマジンはうまい棒よりも安い奇跡の薬

 

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