- パクスロビドは3CLプロテアーゼ阻害薬nirmatrelvirとリトナビルの合剤
- 対象患者:成人および12歳以上の軽症から中等症の患者(FDA)
- 有効率:89%
- 1回服用量:nirmatrelvir2錠とリトナビル1錠
- 用法:1日2回5日間
- 3CLプロテアーゼ:コロナウイルスが体内で合成される過程で必要な酵素
- リトナビル:肝代謝酵素3A4を阻害してnirmatrelvirを長持ちさせる
- CYP3A4関連で併用禁忌薬が多数存在する
ファイザーからついにコロナウイルス治療薬が発売されそうです。
織部
利休
ファイザーしか勝たん。
ファイザーだけではありません、メルクからも経口の治療薬が発売されます。
織部
利休
どっちが効果ありそうなんじゃ?
これまでの臨床試験によるとファイザーのパクスロビドは有効性が89%、メルクのラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)の有効性は48%でした。
織部
利休
ファイザーしか勝たん。
お待ちください。上記2つの薬は同じ臨床試験で比較したわけではないです。なので早計にどっちの有効性が高いとかは言えないです。
織部
利休
ファイザーの方はどんな臨床試験をしたんじゃ?
パクスロビドのEPIC-HR研究はかなり対象患者を選別しています。まず症状が重い患者は試験から除外しています。
織部
利休
重いってどの程度なんじゃ?
酸素飽和度92%未満の症例を除外対象としています。中等症II以上は適応外です。
織部
利休
酸素マスクしているような重症患者には効果があるかは解らないのう。
もう一つEPIC-HR研究で大きな点はワクチン未接種患者を対象としているところです。
織部
利休
日本では過半数の国民が既にワクチンを接種済じゃのう。
ワクチン接種済患者がブレークスルー感染した場合に効果があるのかはわかりません。
織部
利休
ふうむ、89%の有効性と聞くと素晴らしく感じるが完ぺきな薬というわけでもなさそうじゃのう。
まだ試験以外の状況で効果が無いとも証明されていないのでその辺りは実臨床で使いながら効果を確かめることになります。
織部
利休
ところでこのパクスロビドはどうやってコロナウイルスをやっつけるんじゃ?
コロナウイルスが体内に侵入してから増殖するときに必要な3CLプロテアーゼをいうものを邪魔して増えないようにします。
織部
利休
プロテアーゼてなんぞ?
コロナウイルスに限らずウイルスは増殖過程でタンパクをハサミ的な何かで小さく分ける過程があります。そのハサミ的な役割を担っているプロテアーゼの一つが3CLプロテアーゼです。
織部
利休
なるほどのう、パクスロビドはウイルス合成のハサミを邪魔するんじゃな。
細かいことを言うとパクスロビドに含まれているnirmatrelvirがです。
織部
利休
よくパクスロビドを見るともう一つ有効成分があるのう。リトナビルとかいう。
リトナビルはこれまでもHIVの薬として臨床で豊富な実績があります。
織部
利休
なんでHIVの薬がコロナの薬になっておるんじゃ?
リトナビルの役割はブースターです。nirmatrelvirの効果を高めるために配合されています。
織部
利休
どうやって効果を高めるんじゃ?
nirmatrelvirは服用すると肝臓で処理されます。その時に処理を担当しているのが肝代謝酵素CYP3A4です。
織部
利休
こりゃまたメジャーな代謝酵素じゃのう。小学生でも知っておるのう。
nirmatrelvirを処理するCYP3A4をリトナビルで邪魔するとnirmatrelvirが処理されないで体内に長く存在するという仕組みです。
織部
利休
良く考えられておるのう。
カトレラという抗HIVがありますがその薬にもリトナビルは同じ目的で配合されています。
織部
利休
しかしCYP3A4で処理される薬は星の数ほどあるのう。飲み合わせとかメンドクサそうじゃ。
nirmatrelvirの正式な添付文書がまだ見れないのではっきりとは分かりませんが併用禁忌があるはずです。
織部
利休
リトナビル単剤の製品であるノービアの添付文書みると併用禁忌の多さにびっくりするのう。
ノービア錠(一般名:リトナビル)の併用禁忌薬 |
キニジン硫酸塩水和物、ベプリジル塩酸塩水和物、フレカイニド酢酸塩、プロパフェノン塩酸塩、アミオダロン塩酸塩、ピモジド、ピロキシカム、アンピロキシカム、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、エレトリプタン臭化水素酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ)、アゼルニジピン、アゼルニジピン・オルメサルタンメドキソミル、リファブチン、ブロナンセリン、リバーロキサバン、ロミタピドメシル酸塩、ベネトクラクス〈再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期〉、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、エスタゾラム、フルラゼパム塩酸塩、トリアゾラム、ミダゾラム、ルラシドン塩酸塩、リオシグアト、ボリコナゾール |
上記のなかでもよく臨床で登場するのは片頭痛薬のクリアミン、レルパックス、降圧剤カルブロック、睡眠薬のハルシオンとかメンドン、ユーロジンといったベンゾジアゼピン系薬です。
織部
利休
禁忌じゃないにしても抗生剤クラリスロマイシンも注意した方がいいのう。
パクスロビドは使う時に気を付けて使わないといけない道具です。
織部
利休
料理するときに使う包丁も便利な道具じゃが使い方を間違えると怪我をするしのう。慎重にこの新しい道具を使いたいものじゃ。