ラスビックとクラビットの違いはここが肝腎

商品名 クラビット錠500mg ラスビック錠75mg
クラビット錠500mg ラスビック錠75mg
一般名 レボフロキサシン ラスクフロキサシン
レボフロキサシンの構造式 ラスクフロキサシンの構造式
承認年 1993 2019
開発 第一三共 杏林
製造販売 第一三共 杏林
用法 1日1回
用量 500mg 75mg
禁忌 本剤過敏・妊婦・小児
併用禁忌薬
慎重投与






てんかん等の痙攣性疾患
重篤な心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)
重症筋無力症
大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者
高齢者
腎機能障害(高度) 肝機能障害(中等度以上)
キノロン系過敏症
重要な基本的注意 大動脈瘤、大動脈解離を引き起こすことがある
他の抗結核薬と併用で重篤な肝障害リスク↑
意識障害リスク↑
命名理由 「CRAVE(熱望する、切望する)IT」から命名 Lascufloxacin、visionary and conceptual quinoloneから命名
1錠薬価 361.40円 361.40円

 

日本で一番処方されているニューキノロン系抗菌薬クラビットは第一三共が創製した薬だがラスビックも日本の杏林が創製した。

世界初のニューキノロン系抗菌薬バクシタールを創造したのも杏林。1984年にバクシタールが承認されてから35年後に登場したのがラスビック。

基礎研究を含めると杏林は半世紀近くニューキノロン系抗菌薬の開発に携わっている。

 

抗生物質や抗菌薬は新薬であっても薬価が安いので欧米の製薬会社は熱心に新薬を開発していない。だが耐性菌が問題となっている近年で新規の抗菌薬は価値がある。

 

残念ながらラスビックの薬価はクラビット錠500mgと同額の361.4円なので薬価を決めた厚生労働省的にはそこまで価値を認めていないが

 

適応の違い
適応菌
共通菌種 本剤に感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属、肺炎球菌,モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス,クレブシエラ属,エンテロバクター属,インフルエンザ菌,レジオネラ・ニューモフィラ,プレボテラ属,肺炎マイコプラズマ
クラビットのみ 腸球菌属,炭疽菌,結核菌,大腸菌,赤痢菌,サルモネラ属,チフス菌,パラチフス菌、シトロバクター属,セラチア属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア属,ペスト菌,コレラ菌,、緑膿菌,アシネトバクター属、ブルセラ属、野兎病菌,カンピロバクター属,ペプトストレプトコッカス属,アクネ菌,Q熱リケッチア、トラコーマクラミジア,肺炎クラミジア
ラスビックのみ

ラスビックは呼吸器と耳鼻咽喉科の薬。

しかし肺炎マイコプラズマに両方適応があるが肺炎クラミジアにラスビックは適応が無い。レスピラトリーキノロンの中でもラスビックの適応菌種は一番少ない。

 

  適応症
共通適応症 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
クラビットのみ 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、肺結核及びその他の結核症、Q熱
ラスビックのみ

クラビットは適応が幅広過ぎて不必要な処方を招いた。

なのでラスビックは領域が呼吸器と耳鼻咽喉科に制限されている。厚生労働省は抗菌薬の乱用に伴う耐性菌問題を最近注視しているので適応症が無い時は返戻となるはず。

 

ラスビックは耳鼻咽喉科と呼吸器の薬

 

ザックリそう覚えておけば細かく適応症を暗記しなくてもOK。

歯科でラスビックが出ても適応が無い。

だが中耳炎にラスビックは使えるが外耳炎には使えない(保険適応が無い)。

 

肺組織への移行性が高いラスビック

ラスビックは肺胞上皮被覆膜に存在しているホスファチジルセリンと高い結合親和性がありクラビットよりも親和性が高いので肺組織への移行が期待できる。

なので呼吸器系の疾患に対してはクラビットがもつ適応を全てラスビックも持っている。

 

 

ニューキノロン系の作用機序

DNAジャイレースとラスビック

クラビットもラスビックも同じニューキノロン系なので作用点も同じ。

DNAジャイレーストポイソメラーゼⅣという細菌の細胞分裂に必須な酵素を阻害することで効果を発揮する。

 

DNAジャイレースは2 本鎖DNAを同時に切断・再結合することによりDNAの立体構造を変化させてDNAの複製・転写・組み換え・修復などに重要な役割を果たしている。

DNAとDNAジャイレースとキノロン薬の3者が結合して複合体を形成しDNA合成を停止する。

DNAジャイレースはαサブユニットとβサブユニットに分かれているがニューキノロン系が作用するのはαサブユニットである。ニューキノロン系のフッ素原子がこのDNAジャイレースαサブユニットへの結合に重要。

 

トポイソメラーゼ IVは染色体複製の最終段階の分配に働く。

 

耐性菌について考えると作用点が2つあるというのが重要。一つに耐性ができてももう一つの作用点に効果があれば最終的に抗菌作用がある。

 

デュアル・インヒビター性能の違い
各菌株由来の DNA ジャイレース及びトポイソメレースⅣに対する IC50
ラスビックとクラビットの比較

クラビットとラスビックに限らず大半のニューキノロン系はDNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣに対して阻害作用を有する。

 

しかしどちらか片方に偏った感受性を持つとその感受性が低い方に耐性菌ができる。ラスビックは両方に対して低濃度で阻害する能力を持つ。しかも変異株に対しても高い効果が証明されている。

 

ラスビックは変異が増えるとMICが上昇するがクラビットに比べて増加率が低い。

クラビットは感受性の低い菌だとIC50が4桁にもなり効果が期待できない。

変異株への効果の高さがラスビックとクラビットの大きな違い。

 

臨床成績
二重盲検比較試験の有効率 クラビット ラスビック
市中肺炎 92.3%(108/117) 92.8%(116/125)
副鼻腔炎 84.6%(110/130) 84.8%(117/138)

ラスビックはクラビットに対して非劣勢。

少なくとも劣っていない事が証明されている。

 

併用注意薬
クラビット ラスビック
共通 フェニル酢酸系、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤
副腎皮質ホルモン剤(経口剤及び注射剤)
Al又はMg含有の制酸薬等、鉄剤 Al、Mg、Ca亜鉛、を含有する製剤制酸剤、ミネラル入りビタミン剤等
ワルファリン リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン
QT延長を起こす薬剤 クラスⅠA、Ⅲ抗不整脈薬
テオフィリン
アミノフィリン

ニューキノロン系は金属と併用すると結合してキレートを形成して吸収率が低下してしまう。

なので2つとも金属製剤とは併用注意

だが細部が異なる。

 

アルミニウムとマグネシウムは2つとも記載があるがラスビックはカルシウムと亜鉛とも併用注意の記載もある。

カルシウム含有製剤と言えば牛乳だが薬としてもカルタンやポリフルといった毎日服用するタイプの薬がある。

 

ラスビックはワーファリンが併用注意でないのでワーファリンコントロールドだとクラビットよりラスビックがお勧め

 

副作用の違い
クラビット ラスビック
1,924例 531例
総副作用発現率 27.1% 11.7%
1位 悪心(3.3%) 下痢 (1.3%)
2位 めまい(3.1%) 好酸球数増加 (1.3%)
3位 白血球数減少(2.7%) ALT上昇(0.9%)

抗菌薬や抗生物質は細菌だけが持ってるタンパク質などに作用するので人間には大きな副作用が出ないという考え方で開発された。

しかし抗生物質であろうが抗菌薬だろうが副作用が無い薬は存在しない。

 

ラスビックで一番よく出る副作用は下痢だが1.3%と善玉菌への影響を考えると少ないと思われる。

消化器系の持病があったりメニエール病患者さんだと悪心や眩暈がクラビットより少ないラスビックが良い。

 

重大な副作用の違い
  重大な副作用
共通 ショック,アナフィラキシー,間質性肺炎,QT延長、心室頻拍,低血糖,偽膜性大腸炎,アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害,肝機能障害,横紋筋融解症,痙攣,錯乱、せん妄,重症筋無力症の悪化,大動脈瘤、大動脈解離、白血球減少症、肝機能障
クラビットのみ 中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、汎血球減少症、無顆粒球症、溶血性貧血、劇症肝炎、黄疸、抑うつ、過敏性血管炎、末梢神経障害
ラスビックのみ

ラスビックが効果ある疾患には全てクラビットも使える。

ということは逆に

ラスビックの副作用は全てクラビットでも出る。

 

phaseⅡでラスビック150mg服用の患者に白血球減少症が現れたので用量は1日1回75mgに用量が設定された。

精神系の副作用では「錯乱」「せん妄」が2つに共通しているがクラビットは更に「抑うつ」の記載もある。

 

代謝・排泄の違い
クラビット ラスビック
経路
代謝酵素 N/A CYP3A4
尿中未変化体 79.6% 8.38%

クラビットとラスビックの一番の違い

それが代謝経路の違い。

 

クラビットは腎排泄タイプなので腎機能に合わせて用量を調節しなければならない。

それに対して今回発売されたラスビックは肝・胆汁排泄タイプ。

 

なのでこれまで透析患者にクラビットは用量を少なくする必要があったがラスビックは常用量で透析患者に使える。用量を調節する必要が無いので75mg錠しか存在しない。

 

しかしラスビックも良い事だらけという訳ではない。

薬は基本的に肝腎

肝臓か腎臓で処理されるので腎臓でなければ肝臓で処理される。

ラスビックは肝代謝がメイン径路なので飲み合わせに注意が必要となる。

リファンピシン
フェニトイン
カルバマゼピン

といった上記の薬はCYP3A4を誘導してしまうのでラスビックと併用するとラスビックの効果が減弱してしまう。

 

体内動態
クラビット ラスビック
レボフロキサシンの体内動態 ラスクフロキサシンの体内動態
Tmax(hr) 0.99±0.54 0.592±0.162
最高血中濃度(μg/mL) 8.04±1.98 2.48±1.09
半減期(hr) 7.89±1.04 13.9±1.35
AUC(μg・hr/mL) 50.86±6.46 10.2±2.02

ラスビックの半減期はクラビットの約2倍で安定した体内動態、そして少ない投与量でも肺組織等における有効な薬剤濃度は維持している。

AUC0-24/MIC が15を上回る被験者で90%以上の微生物学的効果及び臨床効果が得られており、本剤 75mg 1 日 1 回投与によって 95%以上の被験者がこの PK/PD ターゲット値を上回ることが確認している。

 

 

 

まとめ
  • 対象疾患に対する効果はクラビットと同等
  • ラスビックは呼吸器と耳鼻科で使う。
  • クラビットは腎排泄タイプだがラスビックは肝・胆汁排泄タイプ
  • なのでラスビックは腎機能低下状態でも気にする必要無し

演習問題

 

 

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