アリセプト | レミニール | メマリー | |
一般名 | ドネペジル塩酸塩 | ガランタミン | メマンチン |
構造式 | |||
発売年 | 1999年 | 2011年 | 2011年 |
開発会社 | エーザイ | SANOCHEMIA | メルツ |
販売会社 | エーザイ | ヤンセン | 第一三共 |
薬理作用 | AChE阻害 | AChE阻害+APL作用 | NMDA受容体拮抗 |
剤形 | 普通錠・OD錠・細粒・DS・内用ゼリー | 普通錠・OD錠・内用液 | 普通錠・OD錠 |
効能効果 |
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軽度 | ○ | ○ | × |
中程度 | ○ | ○ | ○ |
高度 | ○ | × | ○ |
用法用量 | 1日1回 | 1日2回 | 1日1回 |
1日最高量 | 10mg | 24mg | 20mg |
増量間隔 | 2週間 | 4週間 | 1週間 |
T1/2 | 89.3時間 | 9.4時間 | 63.1時間 |
代謝排泄 | 肝臓(CYP3A4とCYP2D6) | 肝臓(CYP3A4とCYP2D6) | 腎排泄 |
最頻副作用 | 食欲減退 | 悪心 | めまい |
後発品 | ○ | ○ | ○ |
2022年1月時点で認知症治療薬として認可されている内服薬は↑の3種類しかない。貼り薬はリバスタッチ/イクセロンパッチが存在する。
現在発売している認知症治療薬は全て病気の進行速度を遅めるだけで脳細胞を回復させることはできない。まだ根本的に認知症という病態が分かっていないから。
コリン仮説やアミロイド仮説やタウ仮説など色々な説が提唱されているがまだ分からない事が山の様にある。病態が分からないのにその治療薬ができるわけもなくこれまで認知症治療薬の開発は苦難の連続、成功確率は一桁%。
しかし日本のエーザイは奇跡を起こしアリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩)の開発に成功。
奇跡をもう一度ということでエーザイはアリセプトに続く認知症治療の開発を米バイオジェンと行っており昨年FDAからアデュヘルムという新薬承認を得た。
アデュヘルムは原因の一つとされているβアミロイドを減らすがそれが認知機能など臨床的な効果があるのか微妙。承認したFDAの中の人も承認に抗議して辞任したり賛否両論。
エーザイ株もバイオジェン株も承認されて以降ダダ下がり。
つまり現時点ではアリセプトやメマリーより格段に効果があるアルツハイマー治療薬は存在しない。なので認知症治療薬はしばらくアリセプト、レミニール、メマリーが活躍する。
なぜに認知症になるのかは分かっていないが仮説はあり3つの薬はその仮説に基づいている。
アリセプトとレミニールは神経伝達のアセチルコリンが減ってる説に沿った薬。
アセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼにより分解されてコリンと酢酸になる。そのアセチルコリンエステラーゼを阻害してやれば間接的にアセチルコリンは増えるという考えから開発された。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトとレミニールも微妙に作用機序が異なっておりアリセプトはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用だけだがレミニールはそれ+ニコチン性ACh受容体にアロステリックに作用してACh放出を促したりAChのシグナルを増強する。
じゃあレミニールは作用機序が2通りあるからアリセプトより効果があるのか?と言われたら臨床的に差はない。むしろ重症患者に適応があるのはアリセプト。
メマリー(一般名:メマンチン)は他2つとは全く作用機序が異なる。グルタミン酸という旨味のアミノ酸が沢山あると神経が興奮してダメージを受けるのでは?という仮説に基づいて開発された。
NMDA受容体にグルタミン酸がくっ付く箇所がありそこにくっ付くとCa2+が流入して興奮が起こる。メマリーは受容体に先回りしてグルタミン酸がくっ付くのを阻害する。
なので作用機序が違うアリセプトとメマリーは併用することがある。
利休
アリセプトを開発したエーザイは黄金時代の鐘を鳴らしたのう。
開発に携わった研究者に多額のボーナスが出たりしたそうです。
織部
利休
それまでアメリカでほぼ無名だったエーザイがあのアリセプトのエーザイということで商談がしやすくなったりもしたそうじゃのう。
開発者の杉本八郎先生がお母さんの認知症をきっかけにしてアリセプトを開発したとテレビの特集でもやっていました。そういう日本人が好きそうなエピソードもありアリセプトは日本でも一番有名な認知症治療薬です。
織部
- 日本で初めて認可されたアルツハイマー型認知症治療薬、日本の製薬会社エーザイが開発して最盛期には年間3000億円の売上
- 唯一レビー小体型認知症にも使える
- 軽度の認知症から重度まで全ての段階で使用可能
- 細粒とドライシロップ製剤がある。しかし苦いので飲みにくい、後発品の方が苦くなく飲みやすい
- 内服ゼリーもある。こちらの味ははちみつレモンなので味はマシ
- 半減期が90時間と3つの中で最も長い
- 飲み始めは吐き気など消化器系の副作用がでやすい
- 3mg錠は治療量ではなく開始量なので継続で処方するなら副作用発現予防のためとコメント
- 重度の維持量は1日10mg
- NMDA拮抗薬メマリーとは併用が可能
- 元々は植物の球根などから取れるアルカロイド
- 半減期が短いので一日2回服用しなければならない
- アリセプトと同じアセチルコリンエステラーゼ阻害薬だがAPL作用も持ちアセチルコリン受容体の反応性を高める
- 重度の認知症には使えない
- 認知症治療薬で唯一の液剤がある
- 消化器系副作用はアリセプトと同等の頻度
- 増量するための期間が4週と一番長い
- NMDA拮抗薬メマリーとは併用が可能
- ドイツの製薬会社Merz Pharmaceuticals GmbHで開発された
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と違い消化器系副作用は少ないが眩暈が特徴的に起こる
- NMDA受容体に拮抗して過剰なCa+の細胞内流入を阻害するという唯一の作用機序
- 過剰な細胞内電位を抑えるのでイライラに効果的
- 重度の認知症に使えるが軽度には使えない
- 他の認知症治療薬(アリセプト等)との併用が可能で上乗せ効果がある
- OD錠は甘みがあり苦くない
- アマンタジンにメチル基を足したものなのでドパミン遊離作用がある
- 腎排泄型なので腎機能障害患者には慎重投与
- 塩基性物質なのでアルカリ化剤と併用すると排泄率が落ちて血中濃度が上昇する
- 中程度でも重症でも維持量は1日20mg