- 米製薬メルクが新型コロナ治療薬モルヌピラビルの臨床試験結果を発表
- 入院リスクを半減させ死亡者数はゼロ
- 1日2回服用の経口薬
- モルヌピラビルはメルクとリッジバックの共同開発
- 緊急使用許可を申請予定
- メルクは年内に1000万個生産予定
第三相臨床試験:MOVE-OUTの内容
偽薬 | モルヌピラビル | |
入院率 | 14.1% | 7.3% |
死者数 | 8人 | 0人 |
副作用率 | 40% | 35% |
上記の良好な結果を受けてメルクはMOVE-OUT試験の患者募集を停止することを決定、早急に緊急使用許可の申請予定。
つまりこの中間解析の結果だけでFDAの承認を得られるとメルクは自信を持っている。
バイデン大統領の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ博士も今回の結果は「非常に良いニュース」と大喜びしているので承認されるのはほぼ確実。
モルヌピラビルの特徴
- 経口薬で1日2回服用する
- 元はインフルエンザ治療薬として開発
- 敢えて変異を多く起こしてウイルスの増殖を停止
- RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)によるRNA変異が作用点
これまでのコロナ治療はウイルス表面にあるスパイクタンパクを標的にするものだったがモルヌピラビルは作用機序が異なる。
ウイルスが増えるにはRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)という酵素が必須となる。
モルヌピラビルを服用すると体内で活性型であるβ-D-N4-ヒドロキシシチジン(NHC)三リン酸に変身する。
そしてRdRpが合成している最中に割り込んでウイルスのアミノ酸配列に変異を起こす。
変異と聞くと物騒に聞こえるがコロナ本体のように表面の2~3か所のような少数でなく数えきれないほどの変異を起こしてウイルスとしての活性を低下させる。
ウイルスに限らず生物合成の基本はG=C A=T or U という神様が決めたルールに従っている。
そこにNHCが割り込むと対となる部分にはアデニン or グアニンが生成される。この変異メカニズムはレムデシビルや鎖状末端ヌクレオシドアナログとは異なる。
コロナワクチンは表面スパイクを目印として作られているのでそこが変異してしまったら効果が落ちる。
それに対してモルヌピラビルはウイルス合成時点、しかもいくら変異したコロナウイルスであろうがRNAウイルスである限りRNA依存性RNAポリメラーゼを介して増殖する点は不変。
なのでモルヌピラビルはこれから変異していくであろう新型コロナに対しても有効であると考えられる。
利休
中間発表じゃがかなり良い治療薬ができたぽいのう。
これまではコロナに対して対処療法だけだったので罹らないためにワクチン一択でしたがかなり有望な薬が出てきました。
織部
利休
副作用も少ないし何より経口薬というのが嬉しいのう。わざわざ病院に行って注射や点滴受けるのは患者も病院も負担じゃからのう。
もし承認されたらインフルエンザにおけるタミフルの様な存在になるかもしれません。
織部
利休
そうなってくると新型コロナはインフルエンザのように身近で慢性的な病気になりそうじゃのう。良くも悪くも。
タミフルは流行した年だと世界で10億ドル以上の売り上げがありました。
織部
利休
インフルエンザで10億ドルなら新型コロナだと途方もない売上になりそうじゃのう。
メルクは年内分1000万回分を生産する予定です。金額は一回あたり約700ドルらしいので今年分だけで70億ドルです。
織部
利休
じゃあワシは証券会社に行ってメルク株買ってくる。
ちょっと待ったください。新薬の誕生は喜ばしいことですが投資として考える場合は違う視点を持つべきです。
織部
利休
次回はモルヌピラビルを開発したメルク株について考えるとしようかのう。