アジマイシンの有効成分であるアジスロマイシンはファイザー社が開発した抗菌薬。その内服バージョンのジスロマックは三日間服用したら一週間効果があるという触れ込みで大ヒットした。
世界初のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンに改造を加えて長い半減期を獲得したのがアジスロマイシン。アジマイシン点眼薬は長時間作用と言う利点をさらに強化するために製剤的にも一工夫加えている。
両親媒性の合成高分子化合物でありドロネバ成分のポリカルボフィルやエデト酸ナトリウム等を配合した眼科用Drug Delivery SystemであるDuraSite® technologyを導入して長い滞留時間を得ている。
アジスロマイシンという成分はマクロライド系抗生物質の例に漏れず苦味があるが目に長く留まるのでムコスタ点眼のような苦味は軽減されている。
「本剤の有効成分である“アジスロマイシン水和物”の下線部分を組み合わせアジマイシンとした。」
- 結膜炎(成人及び 7 歳以上の小児)
- 眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎(成人)
アジスロマイシンは細菌のタンパク合成阻害以外にも抗炎症作用があるので炎症状態に効果がある(耳鼻科での低用量長期クラリスロマイシン処方など
マイボーム腺の炎症で起こる目の不快感にも効果が期待できる。
小児のものもらい(麦粒腫)に対しては今のところ保険適応が無い。
適応 | 使用期間 |
結膜炎 | 1 日2回×2日間、その後1日1回5日間点眼 |
眼瞼炎、麦粒腫、涙嚢炎 | 1 日2回×2日間、その後1日1回12日間点眼 |
点眼する前にキャップを閉めて数回振り成分を均一にする。
中身の液体はドロドロネバネバしているので点眼容器を下にしてもゆっくり降りてくる。点眼液自体が白濁しているので点眼してから5分は目の前が曇っている。
抗生物質は分子量が大きく溶けにくいので点眼薬にするが難しいので製剤学的な苦労の末の粘々なんだろう。
開封する前は冷蔵庫に保存だが開封後は常温でも問題無い
アジスロマイシン水和物 |
14環のマクロライド系抗生物質エリスロマイシンの基本骨格に窒素原子を導入することで病巣への優れた薬剤移行性と長い半減期を獲得した薬が15環抗生物質のアジスロマイシン。
マクロライド系のマクロは「大」環状から来ている。12員環以上の大環状ラクトンがマクロライド
アルカリ性条件下では主に分子型、酸性条件下では電価を帯びた型(イオン型)で存在
アジマイシンの作用機序 |
リボソームというタンパク合成装置や二つに分かれている
大サブユニットと小サブユニット、細菌であれば50S と30S。
アジスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗生物質は細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットと結合し、細菌のタンパク合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
具体的には50Sサブユニットの23SrRNAのドメインVにある2058位と2059位のアデニンに結合してタンパク合成を阻害する。
人間であっても細菌であってもDNAを鋳型としてメッセンジャー RNAに写し取りそのメッセンジャー RNAからペプチド合成する(セントラルドグマ)
ただペプチドを合成するリボソームが人間と細菌では違う。
なので細菌のリボソームにだけ作用する抗生物質は人間に対して比較的副作用が少ない。 腸にいる善玉菌は細菌なので腸内バランスが崩れて下痢が起こるのは抗生物質共通の副作用。
もし細菌と人間のリボソーム装置が共通であったらマクロライド系抗生物質やアミノグリコシド系抗生物質とか危険過ぎて使えない。タンパク合成ができなくなったら生命活動に致命的である。
ミノマイシンやドキシサイクリンといったテトラサイクリン系も細菌のリボソームに作用するが作用する場所が異なる。テトラサイクリン系の場合は30 S である
101回薬剤師国家試験
アジスロマイシンは、細菌のリボソーム50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成を阻害する。
国内第Ⅲ相試験(無作為化二重遮蔽並行群間比較試験) | |
対象患者 | 7 歳以上の細菌性結膜炎患者[治験薬投与眼の眼脂(粘液膿性又は化膿性のもの) |
投与方法 | 1回1 滴、1日2回2 日間、その後、1日1 回5 日間点眼 |
期間 | 7日間 |
全症例数 | 450例 |
振り分け | アジマイシン:偽薬=232例:218例 |
有効率 | |
アジマイシン | 偽薬 |
32.3% | 22.5% |
統計学的に有意な差が認められ、基剤に対する本剤の優越性が検証された(P=0.0194、χ2検定)
しかし切れ味という点ではクラビット点眼に一歩劣る印象を受ける。
- 角膜潰瘍等の角膜障害(頻度不明)
長期に使用すると角膜障害の恐れがあるのでアジマイシンの点眼期間は2週間までとなっている。
治りが悪かったらクラビットなど違う系統の抗菌薬にチェンジした方がいい。
アシマイシン点眼は未変化体として排出される割合が最も多く代謝酵素などは特定されていない。
内服薬のジスロマック(一般名:アジスロマイシン)はそのCYP非依存性のおかげで飲み合わせでの制限が緩く併用禁忌は無い。
ジスロマックと同じマクロライド系抗生物質のクラリスはCYP3A4が代謝に関わるので併用禁忌薬がある
アジマイシン点眼液1%(1本2.5ml)の価格は755.5円(2019年9月時点
1本に2.5mLしか入っていないが50滴は出てくるはずなので2週間(1日2滴×2+1日1滴×12日=16滴)使う場合でも1本あれば足らなくなることは無い。
基本的にアジスロマイシンよりも切れ味が良いニューキノロン系点眼薬のクラビットは1mLが98.5円なので同量2.5mLでも246円。アジマイシンよりもかなり安い。
しかし内服の抗生物質・抗菌薬は多種多様に存在しておりいくらでも選択肢があるが点眼薬の場合はニューキノロン系以外のラインナップが細い。
セフェム系だとベストロン使えるがマクロライド系は無かった。
近年ニューキノロン系抗菌薬は乱用によって耐性菌が増えているので全く違う作用機序のマクロライド系抗生物質の点眼薬というものは存在意義がある。