グラクソ・スミスクラインはロンドンに本社を置く世界的な製薬会社
2017年の製薬会社売上世界第6位
2000年にグラクソ・ウェルカムとスミスクライン・ビーチャムの合併により誕生
その両社もそれまでに様々な製薬会社を買収、合併を繰り返してきた製薬会社
GSKが買収してきた企業でも最も歴史が古い企業は1715年創業のPlough Court pharmacy
直近では米がん治療薬ベンチャーのテサロを総額51億ドル(約5800億円)で買収と積極的にM&Aで成長してきた。
医療用医薬品だけでなく一般消費者向け薬でも有名なブランドを展開しており口腔ケアだとポリデントやシュミテクト、アクアフレッシュ等を販売している。
ワクチン事業も展開しており医薬品分野におけるコングロマリットを形成している。
グラクソ社
1873年:英国人Joseph Edward Nathanがニュージーランドで総合商社Joseph Nathan and Coを設立
1904年:ニュージーランドのBunnythorpeにある工場でミルク生産開始、英国に輸出する
1906年:粉乳を「GLAXO」という商品名でベビーフードとして発売し成功する
このミルク事業は後に同社最初の医薬品であるビタミンDの発見に繋がる
1908年:チャイルドケアの実践ガイドブック「Glaxo Baby Book」を発行
1914年:第一次世界大戦 粉乳が戦争特需で業績好調
1924年:英国初のビタミンD製剤Ostelin Liquidを発売
1935年:ロンドンに子会社を設立、英国でもグラクソベビーフーズは事業として大きく成長
医薬品事業はJoseph Nathan&Co. Ltd.の子会社としてGlaxo Laboratories Ltd.が設立された。
1939年:第二次世界大戦で麻酔薬、ペニシリン、ビタミン剤などを製造し英国軍に納入
1947年:Glaxo Laboratories Ltd.が親会社Joseph Nathan&Co Ltdを買収しロンドン証券取引所上場
1948年:ビタミンB12の分離に成功し 悪性貧血の治療において大きな前進を成し遂げる
1958年:創業1715年の老舗製薬会社Allen&Hanburysを買収
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Allen&Hanburysの歴史
1715年:プラウ・コート薬局がSilvanus Bevanによってロンドンに設立
1792年:ウィリアム・アレンが薬局に入社
1810年:アレンの甥であるハンベリーが入社
1841年:英国王立薬剤師会が創設されウィリアム・アレンがその初代メンバーとなる
1856年:社名がアレン&ハンベリーとなる
1860年代:ビタミンA欠乏症治療薬としてタラ肝油製剤を発売
1921年:英国でインスリンを最初に生産する製薬会社となる
1958年:グラクソ社に買収される。
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1963年:ステロイド外用薬ベトネベートを開発
1968年:ぜんそく治療薬β刺激薬ベネトリン(一般名:サルブタモール)を開発
1978年:Meyer Laboratories Inc.を買収して米国子会社を設立
1981年:H 2ブロッカー ザンタック発売
米国市場にザンタックを導入するためスイスの製薬会社ロシュと合弁会社設立
1984年:ノースカロライナ州に4000万ドルをかけて工場建設
1990年:偏頭痛治療薬イミグラン(一般名:スマトリプタン)を開発
1995年:ウェルカム社と合併してグラクソウェルカムが誕生
ウェルカム社
1880年:バローズウェルカムアンドカンパニーが設立される。
2人のアメリカ人薬剤師ヘンリーウェルカムとサイラスバローズが設立者
粉薬を圧縮し含有量が正確な錠剤にして販売することを主な事業内容としていた。
その圧縮した錠剤を「タブロイド」と命名
その名前は短縮した記事であるタブロイド紙の語源となる。
1883年:自社商品を販売開始、サッカリンや下剤、麦芽などをラインナップ
1886年:メルボルンに最初の海外支店を設立
1894年:ウェルカム生理学研究所が設立
1896年:ウェルカム化学研究所が設立
1895年:サイラスバローズが死去
1904年:ダートフォードにマテリア・メディカ農場を設立
この農場ではアコニチンやナイトシェードなど危険な植物を栽培
1924年:ウェルカム財団を設立 生物医学のための研究機関になる
1932年:ウェルカムが国王ジョージ5世からナイトの爵位を賜る
1936年:財団の株式はウェルカム・トラスト (ウェルカムの意志で作成された)によって管理
1955年:バローズウェルカム基金を設立
1956年:痛風治療薬ザイロリック(一般名:アロプリノール)を開発
1959年:ST合剤Septrin(日本商品名:バクタ)を開発
1986年:パブリック・リミテッド・カンパニーになり、ロンドン株式市場に上場
1987年:抗ウイルス薬バルトレックス(一般名:バラシクロビル)を開発
1990年:抗てんかん薬ラミクタール(一般名:ラモトリギン)を開発
1995年:グラクソ社と合併しグラクソウェルカムが誕生
スミスクライン社
1830年:ジョン・K・スミスとギルバートがドラッグストアであるジョン・K・スミス&カンパニーをフィラデルフィアでをオープン
1875年;マーロン・クラインがパートナーとなり社名がスミスクライン&Coに
1891年:フランスのRichards&Companyを買収しSmith、Kline&French(SK&F)に社名変更
1932年:SKFの研究者ゴードン・アレスがアンフェタミンの特許を取得
1952年:ADHD治療薬であるデキセドリン(一般名:デキストロアンフェタミン)を発売
1953年:抗精神病薬のデファクトスタンダードであるクロルプロマジン(商品名Thorazine)を販売
1960年:風邪薬コンタック発売
1964年:薬理学者ジェームズ・ブラックが入社
1976年:胃酸分泌抑制薬タガメット(一般名:シメチジン)をジェームズ・ブラックが開発
1982年:医療機器メーカーBeckman Instruments、Inc.と合併しスミスクライン・ベックマンへ
1988年:ジェームズ・ブラックがノーベル賞を受賞(退社済
シメチジンとプロプラノロールの開発により功績が認められてノーベル賞を受賞
1989年:Beecham Group plcと合併し、 SmithKline Beecham plcを設立
ビーチャム社の歴史
1847年:農家の息子で羊飼いのトーマス・ビーチャムが生薬や食料品の店を設立
1859年:有名な下痢止めビーチャムズ・ピルズを発売
通信販売で売り上げを伸ばす
1881年:息子のジョセフ・ビーチャムが経営トップに
1890年:ニューヨークにビーチャムズ・ピルズを製造する工場を設立
1895年:トーマス・ビーチャムが引退
1924年:financier Philip Hillによって買収される
1928年:新会社「Beecham’s Pills」として再スタートする
1930年代:シャンプーメーカーPrichardとConstanceを買収
1938年:エナジードリンクLucozadeを買収
1943年:医薬品研究のためにBeecham Research Laboratories Ltd.が設立
1949年:アレルギーワクチンメーカーであるCL Bencard社を買収し、処方薬分野に参入
1955年:カーターズ社を買収し健康飲料ライビーナを販売
1958年:ペニシリン核の6-アミノペニシラン酸を発見し半合成ペニシリン開発の礎となる
1959年:合成ペニシリン系抗生物質Broxil(一般名:フェネチシリン)を開発
1961年:ペニシリン系抗生物質アンピシリン(日本商品名:サワシリン)を開発
1967年:ステロイドニュージャージー州ピスカタウェイに抗生物質工場を開設
1969年:Horlicks Ltd.を買収
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Horlicks社の歴史
1870年代:ロンドンの薬剤師ジェームスホーリックがシカゴで乾燥ミルク栄養補助食品を開発販売。
1883年:世界で最初の麦芽ミルクを作るために牛乳の浄化と乾燥のプロセスで特許取得
1887年:ウィスコンシン州に移転
1890年:イギリスでHorlick’s Malted Milkの販売を増やして事務所を開設。
1969年:ビーチャム・グループに買収される
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1972年:Glaxo Groupと合併して処方薬事業の規模を拡大する予定だったが英国政府が合併阻止
1977年:Sucrets throat lozengesを7,600万ドルで買収
1979年:米国の香水メーカーであるJovanを8,500万ドルで買収
1981年:抗生物質オーグメンチンを開発
1989年:SmithKline Beckmanと合併しスミスクライン・ビーチャムとなる。
スミスクライン・ビーチャム社
1990年:負債処理のために一般消費者向け事業の多くを売却し口腔ケアと栄養ドリンク事業に集中
1991年:がん治療時に伴う吐き気止めカイトリル(一般名:グラニセトロン)を開発
1992年:抗うつ薬パキシル(一般名:パロキセチン)を開発
1994年:タガメットが特許切れしたのでOTC化してTagamet HBとして販売し成功
1996年:抗がん剤ハイカムチン(一般名:トポテカン)を開発
1999年:気管支喘息薬アドエアを開発
2000年:グラクソウェルカムと合併
2000年:グラクソ・スミスクライン誕生
2001年:Block Drug Companyを12億4000万ドルで買収し歯科ブランドのポリデントを手に入れる
2009年:世界的なスキンケア製薬会社Stiefel Laboratoriesを買収
2009年:ファイザーとHIV治療専門会社ViiV Healthcareを設立
2012年:塩野義製薬がViiVに資本参加
2013年:HIVインテグラーゼ阻害剤テビケイを開発
2018年:ノバルティスの一般消費者向け事業を130億ドルで買収
売上:302億£
研究開発費:44億£
営業利益:40億£
純利益:15億£
配当支払額:39億£
株価:15£
一株配当額:0.8£
配当利回り:6.0%
過去5年間の株価
本社所在地:ロンドン
株式上場している取引所:ロンドン証券取引所、ニューヨーク証券取引所
ティッカーシンボル:GSK
年間売上
営業利益
純利益
2015年と2016年の純利益の変動はノバルティスとの事業再編と負債の再評価によるもの
事業再編としてノバルティスに抗がん剤を売却し逆にノバルティスのOTC部門を買収した。
事業の内訳
一般消費者向け事業を買収によって強化した成果がでている。
ワクチン事業は世界最大規模でサノフィや米メルクと競合している
地域別売上
中国を始めアジアの伸びに勢いがある。
1位:アドエア【31.3億£】
フルタイドとセレベントが合体した喘息治療薬 1日2回吸入 海外ではセレタイドとそのままの商品名
2位:トリーメク【24.6億£】
抗HIV薬 1日1回1錠で服用しやすい 塩野義と共同開発
3種類の成分が配合(ドルテグラビルナトリウム・アバカビル硫酸塩・ラミブジン)
3位:テビケイ【14億£】
抗HIV薬 成分はドルテグラビルナトリウムの単剤 塩野義と共同開発
4位:レルベア【10億£】
作用時間が長いので1日1回の吸入で済む喘息吸入薬
5位:ベネトリン【7.6億£】
ぜんそく治療薬 気管支のβ2を刺激 50年以上使用されている
アドエアの特許切れ懸念がGSK株価低迷の主な要因
後発医薬品が発売されたら恐らくアドエアの売上は20億£を下回る
抗HIV薬も開発競争が激しく今勢いがある薬がそのまま特許満了まで売れ続けるとは限らない。
医療用医薬品
アボルブ(一般名:デュタステリド)男性ホルモンを抑えて前立腺やハゲに効果
アマージ(一般名:ナラトリプタン)長時間作用型偏頭痛治療薬、4時間空けよう
イミグラン(一般名:スマトリプタン) 片頭痛治療薬 トリプタン系の先駆け
ウェルブトリン/ザイバン(一般名:ブプロピオン) 抗鬱や禁煙補助作用がある、日本で未承認
オラセフ(一般名:セフロキシム アキセチル)第二世代セフェム系抗生物質
オーグメンチン( 一般名:クラブラン酸カリウム+アモキシシリン)βラクタマーゼ阻害配合抗生物質
ザイザル(一般名:レボセチリジン):アタラックス→ジルテック→ザイザルでアタラックスからしたら孫のような構造
ザイロリック(一般名:アロプリノール) 痛風治療薬 水に溶かして口内炎に当てると・・・
サワシリン(一般名:アモキシシリン) ペニシリン系抗生物質
ザンタック(一般名:ラニチジン)H2ブロッカー 昔は10億ドル売り上げることも
セレベント(一般名:サルメテロール) アドエアの成分の2つの成分のうちの一つ β刺激
ゾビラックス(一般名:アシクロビル) 経口以外にも注射や塗り薬がある抗ヘルペス薬
ゼフィックス(一般名:ラミブジン) B型肝炎ウイルスの増殖抑制 ラミブジンは抗HIV治療でも
タガメット(一般名:シメチジン) H2ブロッカーの最高傑作 だが適応外で色々な疾患に使われる
デルモベート(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル) 最強のステロイド外用薬
ヌーカラ(一般名:メポリズマブ) 重度の喘息に 抗IL- 5 モノクローナル抗体
パキシル(一般名:パロキセチン) 日本で一番売れているSSRI
バルトレックス(一般名:バラシクロビル) 抗ヘルペスウイルス薬 内服で吸収率が高い
ラミクタール(一般名:ラモトリギン) 薬疹が出やすい抗てんかん薬 過量処方で医療事故あり
レキップ(一般名:ロピニロール) 抗パーキンソン病 突発的に眠くなることがある
ワクチン
Infanrix:DPT(3種類)+IPV+Hib+B型肝炎の6種類がセットになっているお得なワクチン
サーバリックス:子宮頸がんワクチン
シングリックス:帯状疱疹ワクチン
OTC
アクアフレッシュ:歯磨き粉
シュミテクト:自分はコンプリートワンEXで毎日歯磨きをしている
パナドール:解熱鎮痛剤、アセトアミノフェン製剤
ポリグリップ:入れ歯のお手入れに
GSKは高配当でも有名な会社でありADRだと為替の変動を受けるが£建てだと毎年一株当たり0.8ポンドを支払っている。株主に配当を毎年約6000億円支払っているが年度によっては大幅に利益を上回っているので減配の可能性はある。
今後数年はアドエア特許切れの影響を受けるし臨床試験中の薬を見てもすぐにアドエア級の売上を期待できる薬は無い。
抗HIV薬とワクチン事業の伸びでなんとかアドエアのマイナスを補えるかといったところ
スイスの製薬会社ノバルティスと事業交換を行い一般消費者向け事業を130億ドルで買収したがこの買収がうまく行くのかは未知数。借金も増えたし
医療用医薬品やワクチン事業に比べると利益率が低い。その分、OTC事業はブランド力があれば特許切れ問題に悩まされることなく事業展開できるメリットはあるのだが。
TSROの買収で手に入れたPARP阻害薬もクラス唯一の抗がん剤ではなくライバルがいるので市場独占というわけにもいかない。
先行き不安だが個人的にGSKは信用しているし潰れないと思っている。
まだphaseⅠだがすい臓がんで有望な薬も開発中で他にも面白そうな薬を開発している。
またこれから10年スパンでみると良い新薬を開発していくれると思う。
配当をもらいながら気長に投資しよう。