アンジオテンシン受容体拮抗薬 |
- 日本で承認されているARBは7種類(併売があるので8商品)
- そのまま降圧作用を発揮する活性体4種
- 体内で構造変化して発揮するプロドラッグ3種
- ARBは構造内の-COOH基によってAT1受容体との結合性が高まる
- 7種類すべてが妊娠中に使えない
- ラジレス(アリスキレン)を投与中の糖尿病患者に使えない
適応
- 7種全てが「高血圧症」の適応を持つ
- ロサルタンのみ「2型糖尿病性糖尿病性腎症」あり
- 海外ではイルベサルタンも↑の適応を取っている
- カンデサルタンのみ「慢性心不全(軽症〜中等症)」と「腎実質性高血圧症」あり
- ディオバンは6歳以上に適応あり(35kg未満の場合20mgを、体重35kg以上の場合40mg)
- ブロプレスは1歳以上に適応あり(0.05~0.30mg/kg/day)
- 適応症は取ってないが降圧作用以外に心筋・腎機能の保護作用
体内動態
- 半減期の長さ テルミサルタン>オルメサルタン>イルベサルタン>アジルサルタン>カンデサルタン>バルサルタン>ロサルタン
- ARBは全般的に代謝酵素CYP2C9と親和性が高い
- テルミサルタンはグルクロン酸抱合を受ける
- テルミサルタンは胆汁排泄で腎機能障害の人にも使いやすい
- オルメサルタンは脂溶性が低く非代謝的に排泄
- 食事の影響有り:バルサルタン、テルミサルタン
- 食事の影響無し:アジルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン
- ↑オルメサルタンは高脂肪食接種後Cmaxが11%低下
ニューロタン(ロサルタン)
世界初のARB。降圧作用はARBの中で弱め、半減期も一番短い。しかし近位尿細管にある尿酸トランスポーター(URAT1)に作用して再吸収を阻害することにより尿酸値を低下させる。単純に血圧を下げたい患者さんに使うというより血圧が少し高めで尿酸値も高めな患者さんにおススメ。
ミカルディス(テルミサルタン)
ベンズイミダゾール環を持ちピオグリタゾン類似構造なのでインスリン抵抗性を改善するPPAR-γパーシャルアゴニスト。長所はARB唯一の胆汁排泄タイプなので腎機能が不安でも使える点。ちなみ同じ製薬会社のDPP4阻害薬トラゼンタも胆汁排泄タイプ。先発品ミカルディスの添加物メグルミンとバイアスピリンの基剤メタクリル酸コポリマーが接触すると酸・塩基反応が起こるので一方化するときは気を付けよう。
ブロプレス(カンデサルタン シレキセチル)
日本生まれのARB。武田薬品の黄金時代を支えた三本柱の一つ。プロドラッグ化して体内での利用効率を高めている。
降圧作用自体はマイルド。この薬のメリットは小児適応(ARBで最年少の1歳以上)があることと慢性心不全の適応。心筋保護作用や腎保護作用他剤のエビデンスが豊富。
ディオバン(バルサルタン)
ディオバン事件で一躍有名になった降圧剤。大学病院でディオバンの治験を担当していた医師らに献金、その見返りにディオバンが有効に見えるデータへ改ざんバレて製薬会社ノバルティスファーマの社員は逮捕。(2021年に最高裁までいってその社員は無罪判決)。
そんなディオバンだが降圧作用そのものには問題無いので服用中でも無問題。
強くも弱くも無い降圧作用なのでARBの中で存在感が薄い。敢えてメリットを見出すなら6歳以上の小児に適応ある所か。デメリットは半減期が短めなので1日2回使わないといけない場合がある。
アバプロ/イルベタン(イルベサルタン)
日本では2008年に承認とARBでは比較的遅く販売されたが海外では1997年に承認されていたのでエビデンスが豊富。ゆえに日本では存在感が薄いが海外では良く使われている。日本では武田のブロプレスが先に認可されていたので売上苦戦。
薬そのものを見ると尿酸値を低下させるもあったりで降圧力をアップしたロサルタンに見える。それプラスPPARαパーシャルアゴニストでもあるのでメタボな高血圧症に使いたい。
オルメテック(オルメサルタン メドキソミル)
降圧作用はアジルバの次に強い。その強さの秘密は構造中に含まれるカルボキシル基とヒドロキシ基の2つがAT1受容体結合するダブルチェーン・ドメイン効果(製薬会社の造語)。腎保護など臓器保護作用のエビデンスも豊富。
一番の長所はARBで最もアルドステロン・ブレイクスルーを起こしにくい点。これはACE2活性化が関与している。他の良い点はヨーグルト的な臭いがすること。個人的には良い臭いとは思えないが。錠剤の規格が5mg、10mg、20mg、40mgと多く小回りが利くのも良い点。
メトホルミンやカモスタットと一包化してしまうとオルメサルタンの色がピンク色になってカラフルになる。
アジルバ(アジルサルタン)
武田がブロプレスの後継者として開発したスーパーARB(武田の造語)。ブロプレスと比較試験を行って統計的に有意な降圧力の差を証明している。7種のARBでも降圧力に関してはトップクラスの性能。
構造式を見るとカンデサルタンにオキサジアゾール基を導入しただけ。だがそれで脂溶性が4倍に高まりプロドラッグにしなくてもよくなりそのまま活性体として製剤化成功。
デメリットは2021年現在で特許が切れていない唯一のARBなのでコスパが悪い。オルメサルタン錠20mgが16円に対してアジルバ錠20mgが140円。その2つにそこまでの臨床的な差があるとは思えない。