【企業分析】 Coherus BioSciences:バイオシミラーに賭けるならこの会社

 

Coherus BioSciencesは米国のカリフォルニア州に本社を置くバイオテクノロジー企業。

 

バイオテクノロジー企業だが他のバイオテクノロジー企業とは毛色が違う。この会社はこれまで臨床で使われてきた生物学的製剤の有効成分を自分たちで作ってバイオシミラーとして販売している。

 

作るのが簡単な低分子医薬品と違い生物学的製剤は作るのが難しく中規模のバイオテクノロジー企業では販売までたどり着くことが困難。

 

しかしこのCoherus BioSciencesはニューラスタという生物学的製剤のバイオシミラーの開発に成功して2019年には3億ドルを売り上げた。

 

0→1は1→2よりも遥かに難しい。

 

それを0から1を創り出したCoherus BioSciencesの今後を考えてみる。

 

 

世界売上TOP10のうちバイオ医薬品は7個
商品名 2019年売上
1位 ヒュミラ 267.51
2位 エリキュース 134.73
3位 キイトルーダ 113.61
4位 イグザレルト 103.78
5位 ランタス 100.13
6位 エンブレル 97.08
7位 ステラーラ 87.93
8位 オプジーボ 80.33
9位 ジャヌビア 74.69
10位 ノボラピッド 73.85

通貨単位:億ドル

 

2019年の一番売れた薬は抗リウマチ薬ヒュミラです。その金額は3兆円弱と低分子医薬品で最も売れたあの高脂血症治療薬リピトールの2倍売れています。

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織部

 

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利休

ヒュミラを販売しているアッヴィは大儲けじゃのう。それにしてもなぜにここまで売れるんじゃ?

 

それまでの低分子治療薬よりも効果が高いというのは当たり前ですがそもそも一つ辺りの薬価が異様に高いです。ヒュミラを例に取るとリウマチ治療の標準使用量40mgだと一回6万円もします。自費なら月額12万超えます。

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織部

 

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利休

それまでのリウマチ治療薬の第一選択薬じゃったリウマトレックスは1錠210円じゃから週3錠使っても月12錠で2500円しか掛からんのう。

 

ヒュミラは良い薬ですが完治させる力は無く使わないとまた症状が悪化します。つまり継続して使わないといけないのでヒュミラはリピーターがたくさんです。

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織部

 

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利休

アッヴィによっては最高な状況じゃがこのままでは国の保険医療費が大きくなりすぎていつか破産するのう。

 

そうならないためにはヒュミラを始めとしたバカ高いバイオ医薬品の値段を下げることが必須です。

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織部

 

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利休

バイオ医薬品のジェネリック医薬品は見かけないんじゃがバイオ医薬品には特許切れが無いんかのう?

 

バイオ医薬品にも特許切れはあります。しかし特許が切れてもすぐに低分子医薬品のように10社以上が参入するほど簡単ではないのです。

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織部

 

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利休

バイオ医薬品のジェネリックを作るのは難しいんかのう?

 

まず前提としてバイオ医薬品にジェネリック医薬品は存在しません。近い意味合いでバイオシミラーというものがありますがシミラーとは似たようなものという意味です。

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織部

 

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利休

つまり似ているけど厳密には違うものと?

 

抗体医薬品だと抗体を産生する細胞株を構築しなければなりません。それは先発品メーカーの門外不出品なので他社は一から細胞株を作らなければなりません。しかしです。全ての分子が全く同じな細胞を作ることなんてできますか?

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織部

 

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利休

シンプルな低分子医薬品ならできるが細胞を全く同一で作るとか不可能じゃ。

 

低分子医薬品の有効成分は作ろうと思えば大学の学部生でも作れますが生物学的製剤は製薬会社であってもその分野に相当なノウハウが無いと作れません。

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織部

 

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利休

じゃからバイオシミラーに参入する会社が少ないんじゃな。

 

ジェネリック医薬品は同一成分であれば有効性試験は省略できますがバイオシミラーは有効性の確認を治験で確認しないといけません。参入障壁が高めです。

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織部

 

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利休

しかし3兆円弱も売れている薬のバイオシミラーを作ればかなりの儲けも期待できそうじゃのう。

 

これまで先発のバイオ医薬品を製造販売してきた巨大製薬会社は子会社に他社のバイオシミラーを作らせようとしています。ノバルティスとか、しかしそれらの会社は大きすぎて投資先としては面白くありません。

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織部

 

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利休

いくらジェネリック医薬品よりは儲かると言っても先発品をガンガン売ってる会社にとっては重要なcatalystにはならんのう。

 

今回取り上げるCoherus Biosciencesはバイオシミラーのみを製造販売している会社です。株価がバイオシミラーの売上のみに依存しているので株を買うとバイオシミラー業界の浮き沈みを実体験できます。

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織部

 

 

開発パイプライン

 

 

 

2020年7月時点で商品化されているバイオシミラーはUDENYCAの一つだけです。

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織部

 

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利休

なんの薬?

 

開発コード 先発品 有効成分 Phase
UDENYCA ニューラスタ ペグフィルグラスチム 承認済
from Innovent アバスチン ベバシズマブ 未承認
CHS-1420 ヒュミラ アダリムマブ
CHS-0214 エンブレル エタネルセプト
from Bioeq ルセンティス ラニビズマブ
CHS-2020 アイリーア アフリベルセプト

 

抗がん剤治療後に少なくなった白血球を増やす薬です。販売後に1年もせず市場シェアの2割を確保しました。

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織部

 

UDENYCAの市場シェア

 

UDENYCAはいきなり年間3億ドルも売上てかなり好調なスタートを切りました。

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織部

 

 

 

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利休

ライバル企業マイランもfulphilaという同一有効成分のバイオシミラーを販売したがさほど影響はないようじゃのう。

 

ただこれからノバルティスの子会社もペグフィルグラスチム製剤を販売するようなので油断はできません。バイオシミラーに特許切れの心配はありませんがその代わりに価格競争のプレッシャーがあります。

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織部

 

財務諸表

 

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利休

去年はUDENYCAのみしか販売していないからバイオシミラー単品の儲け具合が財務諸表から読み取れるわけじゃが利幅がかなり大きいのう。

 

先発品のニューラスタは6,231ドルですがUDENYCAは4,175ドルで販売されています。これから他社からライバル品が出てくると値下げやリベート費用も掛かると思われるので今のような純利益を出すのは難しいと思います。

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織部

 

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利休

しかし半額の3,115ドルまで値下げしたとしてもシェアそのままと仮定して

 

3,115/4,175×3.56億ドル=2.65億ドル

 

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利休

経費そのままでも2.65-2.48=+0.17でトントンじゃのう。赤字にはならん。

 

ニューラスタはバイオ医薬品の中では中ヒット商品でその売上は次のバイオシミラーのための助走です。Coherusの真の狙いはロシュの大ヒット抗がん剤アバスチンです。

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織部

 

アバスチンの全世界売上(単位:100万ドル)

 

ニューラスタはバイオ医薬品の中では中ヒット商品でその売上は次のバイオシミラーのための助走です。Coherusの真の狙いはロシュの大ヒット抗がん剤アバスチンです。

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織部

 

このアバスチンは年間6,000億円以上を売り上げている人気商品なのでそこでシェア10%を確保したらかなりの収益が見込めます。

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織部

 

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利休

ニューラスタのバイオシミラー一本で純利益が9,000万ドルまでいったんならアバスチンのバイオシミラーが成功したら2億ドルまでいっても不思議ではないのう。

 

一株益で換算すると3ドル辺りまでいけそうな気がしてきました。

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織部

 

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利休

ただジェネリック医薬品メーカーと違って競争相手が一流製薬会社ばかりじゃから体力的に勝てるか分からんのう。マイランもファイザーの一部と合併したりで強敵ばかりじゃ。

 

PERが10倍と割安で放置されているのはそういった競争への不安も織り込んでいます。

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織部

 

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利休

投資するべきかのう、迷うのう。

 

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