一般名 | ラタノプロスト |
日本発売年 | 1999年 |
開発会社 | ファイザー |
販売会社 | ファイザー |
分類 | 緑内障治療薬 |
機序 | プロスタグランジンF2α |
キサラタンは眼圧が高くなる眼房水の排出を促進することで眼圧を低下させるプロスタグランジン関連薬のデファクトスタンダード。
開発は婦人科で使われているジノプロストと言う陣痛促進剤が始まり。
静脈内投与するジノプロストを何を思ったか知らないが点眼したら眼圧が低下したことから緑内障治療薬としての開発が始まった。
プロスタグランジンという物質は生体内に必須の生理活性物質なのでそこに作用する薬は数多ある。
痛み止めロキソニンも大元の仕組みはプロスタグランジン生合成を邪魔する。
ラタノプロスト製剤には眼房水の産生を抑制するチモプトールとの合剤であるザラカムも存在する。
XalatanのXaは治験コードであるPhXA41から、latanは一般名である latanoprost より引用された。
- 緑内障
- 高眼圧症
緑内障の定義
「視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」
現在で最もエビデンスがある治療法は眼圧を下げること。
レーザーや手術もあり得るがまずは薬物療法。
眼圧が高いだけで視野欠損などの症状がない場合を高眼圧
逆に眼圧が正常でも視神経がもろく視野に欠損が生じている場合正常眼圧緑内障
どちらにしても眼圧を下げる必要がある
なぜ眼圧を下げる必要あるかと言うと眼圧が高いままだと視神経が圧迫を受ける。視神経は約100万本の神経線維の束。
ひとたび視神経が障害されると再び元に戻らない
現代の医学ではまだ神経を復活させることができない。
緑内障早期発見するためには眼圧検査だけではなく眼底検査をするべき。
1回1滴、1 日1回点眼
頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと。
キサラタンは1日1回点眼というルールを守らなければならない。
なぜなら1日に複数回点眼してしまうと逆に眼圧降下作用が弱まる恐れがある。
この点は重要なので患者さんによく伝えておくべし
緑内障点眼薬の分類 |
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メカニズム | 場所 | 薬の種類 | 代表的な製剤 |
産生抑制 | 毛様体 |
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流出促進 | 主経路 |
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副経路 |
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眼房水の流出には二つの経路がある。
線維柱帯を通ってシュレムに入り最終的に上強膜静脈から排出される経路
虹彩根部及び毛様体筋を経て上毛様体腔及び上脈絡膜腔に入り、強膜から眼外へ排出される経路
キサラタンは後者のぶどう膜強膜流出経路からの房水流出量の増加である。
一般名:ラタノプロスト |
初期は結膜充血や刺激感、そして頭痛などの全身性副作用と臨床への応用は難しいのではないか思われていた。
が研究者の長年の努力により副作用が少なく眼圧を強力に下げるラタノプロストが誕生。
現在では世界60か国以上で利用されている。
Prostaglandin F2α |
ラタノプロスト |
- カルボン酸をイソプロピルエステルへ変更して角膜透過性を向上
- 角膜に存在するエステラーゼにより切断され活性体となる
- プロピル基をフェニル基へ変更してFP受容体への選択性を向上
FP受容体を刺激するとぶどう膜からの眼房水流出が促進され眼圧が低下する。
PG製剤の効果はFP受容体との親和性の強さによって決まる。
フェニル基を導入してその親和性を向上させている。このFP受容体に対する親和性はイソプロピルウノプロストンの100倍以上。
副作用軽減のためのアプローチとしてイソプロピルの導入。
カルボン酸体のままでは眼表面で生理活性化し球結膜充血や眼痛などの眼刺激症状が強いのでイソプロピルをエステルで結合させている。
ちなみに13,14位 の二重結合を解消してデヒドロゲナーゼからの代謝を抑えることで持続性を高めている。
15位の水酸基―水素基は PGF2α誘導体の生理活性にとって必須。
試験デザイン | 二重盲検 |
対象 | 原発開放隅角緑内障及び高眼圧症 |
改善率 | 87.5% |
キサラタンの眼圧降下力には定評がある。
だが添付文書にはザックリとした結果しか記載されていない。
インタビューフォームをよんでも投与期間がマチマチだったりキッチリとした試験結果が載っていない。そもそも「改善」と判定する基準が分からない。
日本で販売開始されてから既に20年も経っているので臨床試験の方法や基準、厳しさも変わっているのでしかたない。
ラタノプロストの有効性については疑問の余地無し
国内臨床試験 | ||
総症例 | 402 | |
副作用発現数 | 107 | |
副作用発現率 | 26.6% | |
副作用 | 発現率 | |
1位 | 結膜充血 | 17.70% |
2位 | 眼刺激症状 | 3.73% |
3位 | そう痒感 | 3.48% |
4位 | 虹彩色素沈着 | 2.74% |
5位 | 眼痛 | 1.49% |
チモプトールやミケランなどのベータ遮断薬とは違い全身性の副作用は少ない。その反面、局所的副作用が起きやすい。
キサラタンによる色素沈着のメカニズムはラタノプロストがPGE2の分泌を促進しこのPGE2がメラノサイトに作用することでメラニンが増加して起こる。さらにラタノプロストはPGE2の再取り込み阻害があり持続的なメラノサイトへの分泌促進作用がある。
PG関連薬の特徴的な副作用としては他に眼球陥没がある。この副作用はPG製剤が周囲のコラーゲン類を分解することで起こる。
色素沈着にしても眼球陥没にしてもキサラタンは外見的な変化が生じやすい。
部位:角膜 |
角膜でエステラーゼにより切断されてから真価を発揮するのがキサラタン。
15位の水酸基は生理活性に必要な部分なのでそこが酸化されたケトン体であるPhXAF40はほぼ生理活性が無い。なのでこの部分が変化しないように工夫したPG関連薬も存在する。
キサラタンの主成分ラタノプロストはプロスタグランジンE2の分泌を促進する。
PGE2がメラノサイトに作用してメラニンが増加→色素沈着
PGE2が毛根細胞に作用して毛が生える→まつ毛が伸びる
このまつ毛が増える作用や色素沈着はキサラタン以外でも起こりプロスタグランジン製剤共通の副作用となっている。
このPG系の副作用を逆に利用してまつ毛を伸ばす「グラッシュビスタ」という目薬もあり美容目的で販売されている。
しかし残念ながら頭部にキサラタン点眼液を振りかけても毛は生えてこない。
2°~8°
冷所とは15°以下と定義されているがキサラタンの保存温度はさらに厳しく2°から8°と指定されている。
冷所指定の目薬というのは温度が高すぎると成分が分解して効果が落ちることを懸念して指定されている。
暑いところに置いておくと効果が全くなくなったり副作用が出たりするわけではないので過剰に心配しなくてもいい。
キサラタンを点眼した後冷蔵庫に戻すの忘れて室内で一日放置しておいたから即廃棄
そんなことはしなくていい。
インスリンでもそうだが短期間であれば旅行でも常温で持ち歩ける。
むしろ高温よりも低温の方が問題となる。
温度が低ければいいだろうというものでもなく凍らせてはいけない
なので冷凍庫に入れるのは厳禁。成分が変質して効果が無くなる可能性がある。
先発品 | 薬価(1mL) | 後発品(最安) | ディスカウント |
キサラタン点眼液0.005% | 571.70円 | 243.20円 | 42.5% |
(2019年10月時点)
キサラタン点眼液は1本に2.5mL入っているのでその値段は1400円。
リアップX5は60mLで7000円もする高価な希望の光だがキサラタンは60mL換算だと33400円と超高額商品。
しかしキサラタンをキチンと使用しないと視神経がダメージを受け光を失うことになる。