商品名 | ビムパット錠50mg | ビムパット錠100mg |
一般名 | ラコサミド | |
構造式 | ||
販売開始 | 2016年 | |
製造会社 | UCB | |
薬効分類 | 抗てんかん薬 | |
効能・効果 |
・部分発作 | |
・強直間代発作(他剤と併用) |
2016年に発売された新世代の抗てんかん薬ビムパット(一般名:ラコサミド)。
部分発作の第一選択薬であるカルバマゼピンと同じくNa+チャネル遮断作用が主な作用機序であり一見すると見新しくない。
臨床試験でもカルバマゼピン徐放錠との比較試験にて部分発作の予防において非劣勢が証明されている。優越性ではなく非劣勢、つまり少なくとも劣っていないことは証明されている。
しかしカルバマゼピンが日本で承認されたのは1966年と半世紀以上前。
そんな大昔の薬と性能的に同等ですと医師にアピールしても売れない。
つまりビムパットはカルバマゼピンには無いメリットがあるから敢えて50年後に発売された抗てんかん薬。
利休
原理的には興奮性神経を抑えるこれまでの抗てんかん薬と変わらんように見えるのう。
興奮性神経を抑え抑制性神経を亢進させる。それがてんかん治療の大きな概念です。ビムパットはこのうちの興奮性神経を抑える方の薬です。
織部
利休
しかしレベチラセタムの様な唯一無二の作用機序ならともかくありふれたNaチャネル遮断薬がなぜに今更?
レベチラセタムはSV2Aに作用するという点が唯一無二ですがこのビムパットにも唯一無二な点があるからです。
織部
てんかんの定義は
「24時間以上の間隔で2回以上の非誘発性発作」
大脳の神経細胞が過剰に興奮する慢性の脳疾患。正常な脳は規則的に正しいリズムで電気的な活動を行っているが何らかの理由で脳がsparkしてしまう。
定義にもあるように初発の発作(1回)だけでは基本的には治療を行わない。まず脳波検査やCT、MRIで検査を行い確実にてんかんなのか調べる。(家族にてんかん患者がいるなどリスクが高い場合は一回目の発作でも治療を始めることはある。)
CTやMRIを行うのは脳腫瘍など他の紛らわしい疾患の可能性を否定するため。
てんかんと確定したあとはどんなタイプのてんかんなのかを見定める。てんかん治療は投薬が柱であるが薬の選択を間違えてしまうと悪化する事もあるのでここで間違えると治療が遠回りになる。
てんかんのタイプを確定させたら投薬開始となるが基本は単剤治療。
単剤で発作が起きなくなるまでゆっくり増量。増量しても発作が収まらないときは第二選択薬や併用も考慮する。
利休
痙攣が起こっても直ぐに薬とはならないんじゃのう。
てんかん治療はまずその発作が確実にてんかんなのか?ということを確かめることから始まります。
織部
ビムパットが使用できる型 |
2016年発売当初に承認された適用は部分発作への併用使用。2022年1月時点では部分発作に対して単剤使用が可能。
強直間代発作に対しては他の抗てんかん薬と一緒に服用するということになっている。
利休
2016年に発売された抗てんかん薬と言えばフィコンパと同じじゃのう。
適応の取り方も同じでフィコンパも最初は部分発作に対する併用療法でした。
織部
利休
2022年1月現在じゃと保険適応は全く同じじゃのう。
ライバル関係ですがビムパットとフィコンパは作用機序が違うので併用して協力することもあり得ます。
織部
小児[4歳以上] | 成人 | ||
用法 | 1日2回 | ||
30kg未満 | 30kg-50kg未満 | ||
開始量/day | 2mg/kg | 100mg | |
維持量/day | 6mg/kg | 4mg/kg | 200mg |
最高量/day | 12mg/kg | 8mg/kg | 400mg |
漸増間隔 | 一週間以上 |
*体重50kg以上の小児は成人量
フィコンパと違い単剤でも併用時でも用法用量は同じで覚えやすい。
注意すべきは小児量。
区切り体重が30Kgで体重辺りの使用量が異なる。体重30kg未満が1日6mg/kgで体重30kg以上の4mg/kgよりも高用量を使う。
漸増間隔は1週間以上で成人小児とも共通。
利休
小児量がややこしいのう。それになぜ体重軽い方の量が多いんじゃ?
IFを読みましたがその辺りは書いてなかったです。薬は種類によって小児の方が成人より代謝能力が高いことがあるのでその辺りが理由でしょうか?
織部
利休
抗ヒスタミン薬なら少なかったとしても大きな影響はないが抗てんかん薬の場合は必要量が無いと発作が起きてしまうから量の確認は必須じゃのう。
ただビムパットは他剤との相互作用が少ないので自身の使う量だけ把握しておけば大丈夫というメリットはあります。
織部
利休
フィコンパとかラモトリギンは併用時の用量がややこしいから嫌じゃのう。
対象 | 部分発作(二次性全般化発作を含む)又は未分類の全般性強直間代発作 |
年齢 | 16歳以上 |
対象群 | カルバマゼピン徐放錠(CBZ-CR)400~1200mg/日 |
方法 | 二重盲検比較試験 |
主要評価項目 | 6 ヵ月間発作消失率 |
FAS:研究の途中で追跡不能となった者などが発生しても全被検者を解析
PPS:計画どおりに治療を完了した被検者だけを対象に解析
利休
CBZ-CRて何ぞ?って思ったらカルバマゼピンの徐放錠なんじゃのう。我が大日本帝国では徐放錠が無いから最初分からんかったわい。
全般発作の第一選択薬がバルプロ酸に徐放錠があるなら部分発作のカルバマゼピンにも徐放錠があっても良い気がしますね。
織部
利休
ただカルバマゼピン自体が約6円でそれを徐放錠にしても雀の涙じゃから儲からんしどこの製薬会社もやらんじゃろうな。
抗てんかん薬は主成分の含有量が同じなら良いというモノではないです。血中濃度の上昇具合や血中濃度の安定性も必要です。いまカルバマゼピン錠を使っている人にわざわざ徐放錠に切り替えるというのはリスクにもなるので今更感あります。
織部
利休
まぁなんにしてもビムパットは第一選択薬であるカルバマゼピンに対して優れた効果があるてことじゃのう。
違います。非劣勢です。ビムパットはカルバマゼピンに対して劣っていないことが証明されただけで優越性は証明されていません。
織部
利休
じゃあ何故に安いカルバマゼピンがあるのに新薬としてビムパットを承認したんじゃ?
作用点は同じですが作用機序が違ったり、薬疹がカルバマゼピンに比較して少なかったり飲み合わせが問題が無かったりという点にビムパットは存在意義があります。
織部
利休
同じぐらいの効果で副作用が少なかったら確かにお得じゃのう。
昔の薬は効果が強く副作用も強かったんですがその副作用の部分を改善した薬が最近のトレンドです。
織部
「Vitality(バイタリティー:活力、元気)の VI、Patients(患者)の PAT、それぞれの頭文字をとり、それをつなぐ M の文字で“VIMPAT”と命名。」
利休
ずっとビームなパットじゃと思っておったわい。
どんなパットだよ。
織部
利休
それにしても抗てんかん薬とバイタリティてイメージが中々くっ付かんのう。どちらかというと(活動電位)抑えつけるイメージじゃ。
バイタリティが出てくる薬というとメチルフェニデートとかですかね。
織部
利休
デエビゴも日中の活力を高めるために名付けたらしいし製薬会社のネーミングセンスはよ~わからん。
ビムパットの主な作用機序はナトリウムチャネルの遮断。
なので作用点的にはカルバマゼピンやラモトリギンと同じ。
違うところは作用時間。
ナトリウムチャネルを遮断する時間の長さによってその効果が違うらしくビムパットは既存のナトリウムチャネル遮断薬よりもゆっくり遮断する。
従来のカルバマゼピンなどは急速に遮断するので急速にその不活性化された状態から回復してしまう。
それに対してビムパットはゆっくり遮断&ゆっくり回復でナトリウムチャネルが閉じられている時間が長い。ということはそれだけナトリウムイオンの流入を抑制できて発作が起こりにくくなる。
利休
抗不整脈薬の様な概念じゃのう。ナトリウムチャネルを遮断するクラスⅠの中でも乖離速度が遅いジゾピラミドは抗不整脈作用が強く、乖離速度が速いメキシレチンは弱い的な。
同じ作用点であっても作用時間の差で違いで新薬として認められたのがビムパットです。
織部
利休
じゃあ他のナトリウムチャネル遮断薬とも一緒に服用できるんかのう?
アレビアチン、テグレトール、ラミクタールと併用は可能です。
織部
利休
作用点が同じだけで作用機序は違う薬と言えるのう。
対象薬 | 臨床症状 | |
併用禁忌 | 無 | |
併用注意 | 無 |
ビムパットは相互作用が少ない薬です。臨床的に問題となる併用薬はありません。
織部
利休
併用禁忌薬が無いだけでなく併用注意薬も無いというのは凄いのう。
てんかん発作は単剤で抑えられない場合に他剤と併用します。抗てんかん薬は代謝酵素を誘導したり阻害したりするのでそういった薬と一緒の服用できるというのは大きなセールスポイントです。特にカルバマゼピンに対しては併用試験を行っており影響が無いことが証明されています。
織部
利休
ビムパットは何と一緒に飲んでもOKと・・・
ただ試験管レベルではラコサミドの代謝にCYP3A4や2C9、2C19が関わっていたという報告があります。それらの代謝酵素に影響を与える薬を何種類も服用すると影響が無いとも言い切れないので慎重に使いましょう。
織部
副作用名 | 症状 |
房室ブロック、徐脈、失神 | PR間隔の延長 |
中毒性表皮壊死融解症(TEN) | 発熱、紅斑、水疱・びらん、そう痒 咽頭痛、眼充血、口内炎等 |
皮膚粘膜眼症候群(SJS) | |
薬剤性過敏症症候群 | 発疹、発熱、肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、等 |
無顆粒球症 | 顆粒球が500以下に |
利休
中毒性表皮壊死融解症とか恐ろしげな副作用が載っておるのう。
重度の薬疹は抗てんかん薬に頻発する副作用でビムパットだけの問題ではありません。むしろカルバマゼピンやラモトリギンと比較すると発生頻度は少ないので過度に怖がることはないです。
織部
利休
それにしてもなぜに抗てんかん薬は薬疹が起こりやすいんじゃろうな?
まだその理由は解明させていませんが皮膚にあるナトリウムチャネルに対して影響を与えているのが理由では?という説もあります。
織部
利休
言われてみたらカルバマゼピンもラモトリギンもナトリウムチャネルを遮断するのう。
そしてビムパットも遮断するのでそういった重めの薬疹が出やすいのでないかと思います。が抗てんかん薬の薬疹発生機序には諸説あります。
織部
対象 | 可否 | |
妊婦 | △ | 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ |
授乳婦 | △ | 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮 |
小児 | △ | 4 歳未満の幼児に対する臨床試験は実施していない |
利休
やはり妊娠中と授乳中は良いとも悪いとも書かれておらんのう。
ただバルプロ酸など催奇形性がある抗てんかん薬の代わりに使う事はあり得ます。
織部
利休
妊娠中に使える抗てんかん薬は限られておるからその選択肢の一つというだけでも存在意義はあるのう。
- 服用方法:1日2回(服用時点の指定無し)
- 成人維持量:1日200mg
- 1日最大量:400mg
- 漸増間隔:1週間以上
- 部分発作には単剤OK、強直間代発作には併用必須
- 作用機序:ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化
- 4歳から服用可能
- 併用禁忌薬:無し
- 併用注意薬:無し
- カルバマゼピンとは併用して相互に影響が無い