【銘柄分析】 武田薬品工業:with シャイアー

 

日本最大の製薬会社である武田薬品工業。

 

アイルランドのシャイアー買収後は売上高が3兆円を超え国内製薬会社ダントツ首位に。

それまでも抗ガン剤と消化器系に重点を置いていたがシャイアーを買収したことで中枢神経系と希少疾患分野でも大きなプレゼンスを得ることとなった。世界規模でみても売上TOP10にランクイン。

 

しかしそのために費やした買収額は6兆円以上で日本企業最大のギャンブルとなった。

 

大きな賭けに出た武田の行く末はどうなるのか・・・

 

 


概要(2018年)


企業名:武田薬品工業

上場取引所:東証一部

ティッカー:4502

創業年:1941年

本社所在地:東京都中央区日本橋本町二丁目1番1号

CEO:クリストフ・ウェバー

クリストフ・ウェバーは英国グラクソ・スミスクライン出身。武田初の外国人CEO。

 

 

 


武田薬品工業の歴史


1781年:近江屋長兵衞が大阪の道修町で薬種商として創業

 

1871年:西洋薬(抗マラリア薬のキニーネ等)を輸入買付

 

1895年:大阪に自社工場を設立して塩酸キニーネ等を生産

 

1907年:人工甘味料サッカリンを製造

 

1914年:武田研究部を設立

 

1925年:武田長兵衛商店を五代目武田長兵衞が設立

 

1943年:社名を武田薬品工業株式会社に変更

1946年:光工場(山口県)を設立しワクチンを製造

1949年:株式を上場

1950年:総合ビタミン剤パンビタン(一般名:レチノール・カルシフェロール配合剤)を発売

 

1954年:ビタミンB1誘導体アリナミン(一般名:フルスルチアミン)を発売

 

1955年:総合感冒薬「ベンザ」を発売

 

1961年:精神安定剤コントール(一般名:クロルジアゼポキシド)を発売

スイスのロシュから導入

 

1963年:武田科学振興財団を設立

 

1968年:消炎酵素製剤ダーゼン(一般名:セラペプターゼ)を発売

しかし2011年にプラセボとの比較して有効性を示せないとして自主回収

 

1972年:アリナミンF錠を発売

 

1975年:睡眠薬ユーロジン(一般名:エスタゾラム)を発売

効きが長いので翌朝まで眠気が残っている可能性がある

 

1984年:精神安定剤コンスタン(一般名:アルプラゾラム)を発売

共同開発したファイザーからは併売品としてソラナックスが販売されている。中身は同じ

 

1985年:LH-RH 誘導体「リュープリン(一般名:リュープロレリン)」を発売

2018年度も1000億円以上売れている超ロングヒット商品。

 

1989年:高血圧症治療薬アデカット(一般名:デラプリル)を発売

 

1990年:高血圧症治療薬カルスロット(一般名:マジニピン)を発売

 

1992年:胃酸分泌抑制剤タケプロン(一般名:ランソプラゾール)を発売

 

1994年:食後血糖改善薬ベイスン(一般名:ボグリボース)を発売

ご飯を食べる前に服用しよう

 

1995年:セフェム系抗生物質ファーストシン(一般名:セフォゾプラン)を発売

イミダゾピリダジニウム基を導入してセフェム系の弱点であるグラム陽性菌にも効果を発揮する

 

1998年:武田欧州研究開発センターを設立

 

1999年6月:高血圧症治療薬ブロプレス(一般名:カンデサルタン)を発売

 

1999年12月:糖尿病治療薬アクトス(一般名:ピオグリタゾン)を発売

男性の膀胱がんリスクを巡って欧米で裁判沙汰になった。

 

2005年:不眠症改善薬ロゼレム(一般名:ラメルテオン)が米国で発売

それまでの睡眠薬とは違い脳内で自然な睡眠リズムを整える

 

2006年:ビタミン事業を独化学最大手BASFへ譲渡

 

2008年:米ミレニアム・ファーマシューティカルズを88億ドルで買収

ミレニアムが開発していた潰瘍性大腸炎治療薬エンティビオは年間2000億円以上売れている。

 

2009年:胃酸分泌抑制剤デクスラント(一般名:デクスランソプラゾール)を米国で発売

ゆっくり溶けるタケプロン

 

2010年:糖尿病治療薬ネシーナ(一般名:アログリプチン)

血糖値が高い時だけ作動するDPP4阻害薬

 

2011年:スイスのナイコメッドを96億ユーロで買収

タケプロンと効果が被っているパントプラゾールをGET。日本にはタケプロンがあるので海外で発売されている

 

2012年:高血圧症治療薬アジルバ(一般名:アジルサルタン)を発売

ブロプレスよりも強力に血圧を下げる。

 

2015年:胃酸分泌抑制剤タケキャブ(一般名:ボノプラザン)を発売

タケプロンは体内で変換されないと効果を発揮できないがタケキャブはそのままの構造で胃酸を止める。なのでPPIとは違い初日から充分な効果を発揮する。

 

2016年:イスラエルのジェネリック医薬品メーカーTEVAと共に武田テバを設立

TEVAはアラガンのジェネリック部門を405億ドルで買収したが経営が上手くいかずに株価が暴落している。

 

2017年:米アリアド・ファーマシューティカルズを54億ドルで買収

白血病と肺癌で有力な薬を手に入れる

 

2019年:アイルランドのシャイアーを460億ポンドで買収完了

 

 


財務分析


売上高
年度決算月:3月末  単位:億円

*2014年度から国際会計基準(IFRS)

 

胃薬タケプロン、降圧剤ブロプレス、糖尿病治療薬アクトスという生活習慣病治療薬で武田は黄金時代を迎えた。

それらの特許が切れることは武田も解っていたのでタケプロン後継薬のタケキャブ、ブロプレス後継薬のアジルバを開発したり海外の製薬会社を買収したりしたが売上は微増に留っていた。

 

だが2018年に大きな博奕を打ちシャイアーを買収。2社合計すると売上高は一気に3兆円を超える。

 

 

純利益
年度決算月:3月末  単位:億円

 

2014年の赤字は糖尿病治療薬アクトスの裁判での引当金

 

純利益率
年度決算月:3月末 単位:億円

 

世界トップの製薬会社は純利益率が20%近い。25%まではいかなくとも20%を目指したい。

 

 

自己資本利益率
年度決算月:3月末 単位:億円

 

売上は買収すると即効果がでるが利益率の改善は時間が必要。

 

 

2018年度売上TOP10

 

1位エンタイビオと2位ベルケイドと9位ニンラーロは買収したミレニアムが開発した薬。

10年経ってみるとミレニアムの買収は成功だったとわかる。もしミレニアムを買収していなければシャイアーの買収資金は賄えなかった。

 

4、5、6位は全て胃酸を抑える薬で日本で販売しているのはタケキャブしかない。

 

生活習慣病のネシーナ、アジルバは良い薬だがライバル薬も多く飛び抜けてお勧めというわけではない。血圧の薬はブロプレスのARB含めてジェネンテック医薬品があるので敢えて高価なアジルバを使う必要性が薄い。が、そこはMR力でなんとかするのが武田。

 

 

 


2018年の武田薬品とシャイアー比較


集計期間:2018年1月-12月  1ドル110円想定 単位:億円
武田薬品工業 シャイアー
売上高 17,810 17,039
営業利益 2,040 3,570
純利益 1,104 2,611

 

決算月が武田は3月、シャイアーは12月と異なるので3か月毎の数字を纏めてみた。

 

売上はほぼ互角だが利益率はシャイアーのが高い。武田からしてみれば規模は二倍になり利益は3倍になる算段。

ただシャイアーの2000億円以上売れている主力薬ビバンセは特許切れが迫っている。このままシャイアーが高収益とは限らない、武田だって10年前は高収益。

 

 

 


独り言


 

シャイアーを吸収して世界のトップリーグで戦える規模にまで成長した武田。

 

しかしその代償は大きかった。買収するために新株を発行して発行済み株式数はそれまでの1.9倍まで増加して大幅な希薄化を招いた。そして株価自体の動きも振るわずに2019年6月現在の時価総額は5兆8000億円で買収に使った金額6兆2000億円を下回ってしまっている。

 

大きすぎる獲物は消化するのに苦労する。

 

まずは買収で大きくなってしまった有利子負債を返してレバレッジを下げなければいけない。

 

一時的に減配してもいいかもしれない。株式数が約二倍になったのに一株当たりの配当は減らさないんだから配当支払いが二倍となる。シャイアーはほぼ無配で研究開発とM&Aに資金を使って会社価値を高めて株主にリターンを返した。見かけの配当にこだわる必要はない。

 

そんな懐具合なのでしばらくは大きな買収はできないはず、なので今のポートフォリオで新薬を開発していくしかない。

 

 

 

シャイアーがミレニアムの様にヒット薬を連発してくれたら10年後には世界TOP5に入れそうだがヒット薬が産まれなければTOP10から脱落もありえる、製薬会社の10年後を予想するというのは不可能ではあるが。

 

10年前のシャイアーは売上3000億円台で武田より遥かに格下、それがM&Aというギャンブルで成功してあっという間に武田と対等になるまでに成長した。

 

シャイアーでM&Aを指揮していた人が武田でもM&Aを指揮してくれたら武田は成長する、、、かもしれない。

 

 

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